木三共はとても質問の多い規定です。
避難上有効なバルコニー、開放廊下、開放階段、防火庇、3m通路、スパンドレル・・・
いろいろありすぎて何が必要なのか?不要なのか?分かりづらいんです。
そこで本記事ではいかに木三共を分かりやすくお伝えするために、フローチャートの様に選択式でまとめました。
木三共とは?
『木三共』は木造3階建ての共同住宅の頭文字を取って木三共と呼ばれています。
共同住宅のほかにも寄宿舎、下宿が含まれます。
3階に特殊建築物の用途がある場合、通常は耐火建築物とする必要があります。
共同住宅、寄宿舎、下宿については
- 在館者が特定の者で建築物の避難経路等を十分理解しており円滑に避難できること
- 住戸ごとに小規模な区画がなされており火災の拡大が比較的遅いこと
などから、平成5年(1993年)の法改正により3階建ての規模に限り準耐火構造(1時間)とすることが可能になりました。
現在では法改正により耐火建築物にしたり、45分準耐火建築物(200㎡以下の場合)にすることも可能となり選択肢も広がりました。
木造耐火建築物
耐火構造の告示1399号は従来、鉄骨造・鉄筋コンクリート造の仕様しかありませんでした。
建築物における木材利用促進の社会的要請が高まり、平成26年に告示1399号に木造の耐火構造の仕様が例示されました。
それにより木造でも耐火建築物をつくる事が可能になりました。
しかし、例えば、壁の構造で言うと強化石膏ボードを2枚以上を貼り、厚さの合計は42mm以上とする必要がある(ちなみに1時間準耐火構造は24mm以上)など室内の空間が狭くなってしまったり、コストがかかってしまうなどの理由からあまり普及していないのが現状です。
45分準耐火建築物
延べ面積が200㎡以下の場合、一定の性能の警報設備を設けることで45分準耐火建築物(イ-2)にする事ができます。(令110条の4)
警報設備の構造、設置方法は令110条の5を参照ください。
イ-1、イ-2って何?
準耐火建築物には4種類あり、イ準耐(イ-1、イ-2)ロ準耐(ロ-1、ロ-2)と分類されています。
法2条第1項第九の三のイの準耐火建築物とロの準耐火建築物なのでイ準耐、ロ準耐と呼ばれています。
また、イ-1、イ-2、ロ-1、ロ-2は通称です。
準耐火建築物の種別 | 準耐火建築物の種類 |
イ-1 | 1時間準耐火建築物 |
イ-2 | 45分準耐火建築物 |
ロ-1 | 外壁耐火の準耐火建築物 |
ロ-2 | 不燃軸組の準耐火建築物 |
まずは告示255号と関連法文をチェック
法文を見てみよう
【建築基準法第27条、建築基準法施行令第127条、128条】
(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)
第27 条 次の各号のいずれかに該当する特殊建築物は、その主要構造部を当該特殊建築物に存する者の全てが当該特殊建築物から地上までの避難を終了するまでの間通常の火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために主要構造部に必要とされる性能に関して 政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとし、かつ、その外壁の開口部であって建築物の他の部分から当該開口部へ延焼するおそれがあるものとして 政令で定めるものに、防火戸その他の 政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能に関して 政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を設けなければならない。一 別表第1ろ欄に掲げる階を同表い欄⑴項から⑷項までに掲げる用途に供するもの(階数が3で延べ面積が200㎡未満のもの(同表ろ欄に掲げる階を同表い欄⑵項に掲げる用途で 政令で定めるものに供するものにあっては、 政令で定める技術的基準に従って警報設備を設けたものに限る。)を除く。)
二~四 略
2~3 略
(法第27 条第1項に規定する特殊建築物の主要構造部の性能に関する技術的基準)
第110 条 主要構造部の性能に関する法第27 条第1項の政令で定める技術的基準は、次の各号のいずれかに掲げるものとする。
一 次に掲げる基準
イ 次の表に掲げる建築物の部分にあっては、当該部分に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後それぞれ同表に掲げる時間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
間仕切壁(耐力壁に限る。) 特定避難時間(特殊建築物の構造、建築設備及び用途に応じて当該特殊建築物に存する者の全てが当該特殊建築物から地上までの避難を終了するまでに要する時間をいう。以下同じ。)(特定避難時間が45分間未満である場合にあっては、45分間。以下この号において同じ。) 外壁(耐力壁に限る。) 特定避難時間 柱 特定避難時間 床 特定避難時間 はり 特定避難時間 屋根(軒裏を除く。) 30分間 階段 30分間 ロ 壁、床及び屋根の軒裏(外壁によって小屋裏又は天井裏と防火上有効に遮られているものを除く。以下このロにおいて同じ。)にあっては、これらに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後特定避難時間(非耐力壁である外壁及び屋根の軒裏(いずれも延焼のおそれのある部分以外の部分に限る。)にあっては、30 分間)当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。
ハ 外壁及び屋根にあっては、これらに屋内において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後特定避難時間(非耐力壁である外壁(延焼のおそれのある部分以外の部分に限る。)及び屋根にあっては、30 分間)屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものであること。
二 第107 条各号又は第108 条の3第1項第一号イ及びロに掲げる基準
建築基準法、建築基準法施行令より引用
告示を見てみよう
【平成27年2月23日 国土交通省告示第255号】
建築基準法第27条第1項に規定する特殊建築物の主要構造部の構造方法等を定める件
第一 建築基準法施行令(以下「令」という。)第百十条第一号に掲げる基準に適合する建築基準法(以下「法」という。)第二十七条第一項に規定する特殊建築物の主要構造部の構造方法は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるもの(次の各号のうち二以上の号に掲げる建築物に該当するときは、当該二以上の号に定める構造方法のうちいずれかの構造方法)とする。
一 次に掲げる基準に適合する建築物 準耐火構造(主要構造部である壁、柱、床、はり及び屋根の軒裏にあっては、避難時倒壊防止構造)とすること。
イ~ハ 略
ニ 周囲(開口部(居室に設けられたものに限る。)がある外壁に面する部分に限り、道に接する部分を除く。第三号ロにおいて同じ。)に幅員が三メートル以上の通路(敷地の接する道まで達するものに限る。第三号ロにおいて同じ。)が設けられていること。
ホ 略
二 法第27条第1項第二号に該当する建築物(同項各号(同項第二号にあっては、法別表第一(一)項に係る部分に限る。)に該当するものを除く。)準耐火構造又は令第109条の3各号に掲げる基準に適合する構造とすること。
三 地階を除く階数が3で、3階を下宿、共同住宅又は寄宿舎の用途に供するもの(3階の一部を法別表第一(い)欄に掲げる用途(下宿、共同住宅及び寄宿舎を除く。)に供するもの及び法第27条第1項第二号(同表(二)項から(四)項までに係る部分を除く。)から第四号までに該当するものを除く。)のうち防火地域以外の区域内にあるものであって、次のイからハまでに掲げる基準(防火地域及び準防火地域以外の区域内にあるものにあっては、イ及びロに掲げる基準)に適合するもの 1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とすること。
イ 下宿の各宿泊室、共同住宅の各住戸又は寄宿舎の各寝室(以下「各宿泊室等」という。)に避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。ただし、各宿泊室等から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路が直接外気に開放されたものであり、かつ、各宿泊室等の当該通路に面する開口部に法第2条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられている場合においては、この限りでない。
ロ 建築物の周囲に幅員が三メートル以上の通路が設けられていること。ただし、次に掲げる基準に適合しているものについては、この限りでない。
(1) 各宿泊室等に避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。
(2) 各宿泊室等から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路が、直接外気に開放されたものであり、かつ、各宿泊室等の当該通路に面する開口部に法第2条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられていること。
(3) 外壁の開口部から当該開口部のある階の上階の開口部へ延焼するおそれがある場合においては、当該外壁の開口部の上部にひさし等が防火上有効に設けられていること。
ハ 三階の各宿泊室等(各宿泊室等の階数が二以上であるものにあっては二階以下の階の部分を含む。)の外壁の開口部及び当該各宿泊室等以外の部分に面する開口部(外壁の開口部又は直接外気に開放された廊下、階段その他の通路に面する開口部にあっては、当該開口部から九十センチメートル未満の部分に当該各宿泊室等以外の部分の開口部がないもの又は当該各宿泊室等以外の部分の開口部と五十センチメートル以上突出したひさし等で防火上有効に遮られているものを除く。)に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられていること。
建築基準法、建築基準法施行令より引用
選択式で簡単!木三共の構造
STEP 01で木三共の基本条件に合っているか確認してください。
STEP 02~04ではどちらかを選択してください。
これで簡単に木三共の規定に適合しているか確認できます。
まずは基本条件
防火地域でないか?
防火地域に木三共(1時間準耐火建築物)は建築できません。
200㎡以下でないか?
200㎡以下の木造3階建ての共同住宅は令110条の5の警報設備を設けることにより45分準耐火建築物とする事も可能です。
1時間準耐火建築物で本当によいか確認してください。
主要構造部が1時間準耐火構造になっているか?
主要構造部が下表の通り1時間準耐火構造になっているか確認してください。
非損傷性 | 遮熱性 | 屋外への遮炎性 | |
間仕切壁(耐力壁) | 1時間 | 1時間 | - |
外壁(耐力壁) | 1時間 | 1時間 | 1時間 |
柱 | 1時間 | - | - |
床 | 1時間 | 1時間 | - |
はり | 1時間 | - | - |
屋根 | 30分 | - | 30分 |
軒裏(延焼部分) | - | 1時間 | 30分 |
軒裏(延焼部分以外) | - | 30分 | 30分 |
階段 | 30分 | - | - |
3階が共同住宅等の用途か?
複合用途とする事は可能ですが3階に他の特殊建築物の用途が入ってしまうと耐火建築物とする必要がありますので適用できません。
告示255号 第一 三 イ に適合しているか
本文
本文
- 下宿の各宿泊室
- 共同住宅の各住戸
- 寄宿舎の各寝室
に避難上有効なバルコニーが設けられている。
ただし書き
ただし書き
- 下宿の各宿泊室
- 共同住宅の各住戸
- 寄宿舎の各寝室
から地上に通ずる廊下、階段が外気に開放されていて、当該経路に面する開口部には防火設備を設置
告示255号 第一 三 ロ に適合しているか
本文
本文
- 居室の開口部を隣地境界線側に設けない。
- 居室の開口部を隣地境界線側に設ける場合は3m以上の通路を設ける。
ただし書き
ただし書き
- 下宿の各宿泊室
- 共同住宅の各住戸
- 寄宿舎の各寝室
に下記のすべてを設置
- 避難上有効なバルコニーを設置
- 地上に通ずる廊下、階段が外気に開放されていて、当該経路に面する開口部には防火設備を設置
- 上下間の開口部を2m以上離すor防火庇を設置
告示255号 第一 三 ハ に適合しているか
準防火地域
準防火地域
- 3階の下宿の各宿泊室
- 3階の共同住宅の各住戸
- 3階の寄宿舎の各寝室
- (メゾネット住戸の場合は繋がっている住戸も含む)
隣り合う他の住戸等にはスパンドレルを設ける。
準防火指定なし
準防火指定なし
制限なし
各フローに出てきた用語を解説していきますね。
木三共における避難上有効なバルコニーとは?
建築基準法上では明確に示されておらず木造建築物の防・耐火設計マニュアル: 大規模木造を中心としてに詳しく書かれています。
要約すると避難上有効なバルコニーの構造は以下の通りです。
- 出入口は幅75cm以上、高さ1.2m以上、床面からの高さは15cm以下とする。
- バルコニーの奥行きは75cm以上とする。
- 避難器具を設置し道路等まで安全に避難できること。
- バルコニーの面積は各居室の床面積の3/100以上かつ2㎡以上とする。
- バルコニーの床は耐火構造、準耐火構造などであること。
避難上有効なバルコニーに関して併せてこちらの記事もご覧ください。
廊下、階段の開放性とは?
- 廊下は外壁面に直接外気が流通する高さ1m以上の開口がある事
- 階段は各階の中間部に直接外気に開放された2㎡以上の開口部がある事(開口部の上端が天井の高さにある事)(最上部の階段の天井高さの位置に500c㎡以上の直接外気に開放された排煙上有効な換気口がある場合は2㎡の開口部は不要)
建築知識2022年11月号より引用
隣地境界線側に開口部を設けた場合の3m通路とは?
隣地境界線側に居室の開口部を設けた場合、道路まで3mの通路が必要となります。
非居室の場合は開口部を設けても3mの通路は不要です。
上下間の開口部を2m以上離すor防火庇を設置とは?
告示255号 第一 三 ロ ただし書きの規定に適合させる場合、上下間の開口部を2m以上離す必要があります。
2m以上の離れが確保できない場合には延焼を防止する防火庇を設置する必要があります。
他の住戸等とのスパンドレルとは?
告示255号 第一 三 ハ の規定に適合させる場合、3階の隣り合う各住戸にはスパンドレルを設ける必要があります。
スパンドレルとは?
- 90cm以上の折り返し壁
- 50cm以上のそで壁
- 開口部が90cmの中にかかる場合は防火設備とする。
建築申請MEMOより引用
木三共についての法改正遍歴
法27条に木三共の規定(告示255号)が施行されたのは平成5年6月25日です。
当時は告示255号ではなく令115条の2の2に技術的基準が記載されていました。
平成5年に施行、その後平成11年、平成12年、平成13年、平成27年、令和元年、令和2年、令和3年、令和6年に改正があり現行の法文になっています。
重要な部分だけピックアップして紹介していきます。
平成11年5月1日施行
現行の告示255号 第一 三号ハ にあたる部分が新設されました。
平成27年6月1日施行
令115条の2の2 から 告示255号 へ変わりました。
木三共の各規定に合っていれば代替進入口の設置が不要でしたが、当該規定が削除されました。
法改正遍歴、既存不適格を調べるには令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシートが非常に役立ちます。
まとめ
- 木三共は木造3階建て共同住宅の略
- 木三共はイ-1(1時間準耐火建築物)
- 1時間準耐火建築物は防火地域には建築できない。
- 200㎡以下の場合は警報設備を設けることにより45分準耐火建築物にする事ができる。
- 告示255号 第一 三 イ、ロ は本文とただし書きのどちらかを選択 ハは準防火地域の場合スパンドレルが必要
- 避難上有効なバルコニーの構造は
- 出入口は幅75cm以上、高さ1.2m以上、床面からの高さは15cm以下とする。
- バルコニーの奥行きは75cm以上とする。
- 避難器具を設置し道路等まで安全に避難できること。
- バルコニーの面積は各居室の床面積の3/100以上かつ2㎡以上とする。
- バルコニーの床は耐火構造、準耐火構造などであること。
- 開放廊下、開放階段の構造は
- 廊下は外壁面に直接外気が流通する高さ1m以上の開口がある事
- 階段は各階の中間部に直接外気に開放された2㎡以上の開口部がある事(開口部の上端が天井の高さにある事)(最上部の階段の天井高さの位置に500c㎡以上の直接外気に開放された排煙上有効な換気口がある場合は2㎡の開口部は不要)
- 隣地境界線側に居室の開口部を設けた場合、道路まで3mの通路が必要(非居室の場合は不要)
- 上階の開口部までの距離が2m以下の場合は防火庇の設置が必要
- 準防火地域の場合は3階の隣り合う住戸にスパンドレルが必要
- 木三共の規定(告示255号)が施行されたのは平成5年6月25日
本記事の作成にあたり参考にした条文、書籍等
- 建築基準法 第27条(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)
- 平成27年2月23日 国土交通省告示第255号(建築基準法第27条第1項に規定する特殊建築物の主要構造部の構造方法等を定める件)
- 木造建築物の防・耐火設計マニュアル: 大規模木造を中心として
- 建築知識2022年11月号
- 建築申請memo2024
- 令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシート