法改正情報 確認申請の解説

後付けの昇降機に関する確認申請が不要となる対象が拡大されました。それに伴い別願申請、併願申請の範囲も変わります

にゃんぴー

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後付けの昇降機の確認申請が不要となる対象が拡大

令和7年4月1日の建築基準法の改正により、後付けの昇降機の確認申請が不要となる対象が拡大されました。

緩和になったのかと思いきや、実は一方で不便となるものもあります。

昇降機の別願申請、併願申請の範囲が変わります。

今回の記事では改正内容の概要、どのような緩和なのか、それに伴いどういった影響が出るのか順を追って解説しています。

リフォーム、リニューアルの設計をしている方、新築の設計をしている方、どちらにも必要な情報となっているので一緒に勉強していきましょう。

もぐら先生

4号特例の縮小

令和7年4月1日にみなさんご存知の通り、4号建築物の規模が縮小されました。

今まで4号建築物だった建築物が新2号か新3号建築物となります。

旧4号から新2号に切り替わる建築物は確認の特例等の小規模な建築物に対する緩和を受けられなくなってしまうので影響が大です。

法6条変更概要

後付けの昇降機の確認申請

今までは4号建築物のリフォーム、リニューアル等で後付けの昇降機を設置する場合、昇降機の確認申請は不要でした。

今般の法改正により4号建築物の規模が縮小され、例えば木造2階建ての一戸建ての住宅(旧4号建築物から新2号建築物に移行の建築物)に後付けの昇降機を設置する場合に確認申請手続きが必要となってしまいます。

そこで申請者に手続きに係る負担を軽減するため、「使用頻度が低く劣化が生じにくいことその他の理由により人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないもの」が新設され、それについては引き続き確認申請手続きが不要となる改正が併せて行われました。

改正内容の概要

令146条の規定に(使用頻度が低く劣化が生じにくいことその他の理由により人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないものとして国土交通大臣が定めるものを除く。)という文言が追加されました。

法文を見てみよう

建築基準法施行令

(確認等を要する建築設備)

第146条 法第87条の4(法第88条第1項及び第2項において準用する場合を含む。)の規定により政令で指定する建築設備は、次に掲げるものとする。

  エレベーター(使用頻度が低く劣化が生じにくいことその他の理由により人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないものとして国土交通大臣が定めるものを除く。)及びエスカレーター

  小荷物専用昇降機(昇降路の出し入れ口の下端が当該出し入れ口が設けられる室の床面より高いことその他の理由により人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないものとして国土交通大臣が定めるものを除く。)

  法第12条第3項の規定により特定行政庁が指定する建築設備(屎尿浄化槽及び合併処理浄化槽を除く。)

2 第7章の8の規定は、前項各号に掲げる建築設備について準用する。

建築基準法 令和7年4月1日 改正版 より抜粋

この中で「国土交通大臣が定めるもの」とは令和6年9月9日告示第1148号で、こちらに対象となる用途、規模等が明示されました。

告示を見てみよう

令和6年9月9日 国土交通省告示第1148号

確認等を要しない人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないエレベーターを定める件

 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第146条第1項第一号の規定に基づき、確認等を要しない人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないエレベーターを次のように定める。

 建築基準法施行令第146条第1項第一号に規定する人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないエレベーターは、次に掲げるものとする。

一 籠が住戸内のみを昇降するもの

二 建築基準法(昭和25年政令第201号)第6条第1項第二号に掲げる建築物階数が3以上であるもの、延べ面積が500㎡を超えるもの及び高さが16mを超えるものを除く。)に設けるもの

建築基準法法令集 2025年版(令和7年版)より抜粋
  • 籠が住戸内のみを昇降するもの
  • 法第6条第1項2号に掲げる建築物で
    • 階数が2以下 かつ
    • 延べ面積が500㎡以下 かつ
    • 最高高さが16m以下

上記の❶、❷のいずれかに該当するものが(使用頻度が低く劣化が生じにくいことその他の理由により人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないもの)になります。

『❶籠が住戸内のみを昇降するもの』は規模を特定していないので大きいものも可能

『❷法第6条第1項2号に掲げる建築物で・・・』は木造に限定していないのでS造、RC造も可能

従前の4号建築物のみであった場合に比べて、規模が拡大しています。

よって、本改正により緩和の範囲が拡大したことになります。

リフォーム、リニューアル等の場合は緩和により昇降機の増設が行いやすくなりました。

しかし、これは後付けの昇降機に限るもので、建築物の新築に伴う昇降機の設置は引き続き確認申請が必要となる点にはご注意ください。

確認申請手続きが不便に!?

緩和される一方で確認申請手続きで不便になるものがあります。

今回の改正による確認申請手続きの緩和は、後付けの昇降機に限定されており、新築時に建築物に設置する昇降機は緩和の対象ではありません。

そのため、用途や規模によって昇降機の別願申請が出来なくなってしまうという事態が発生します。

どういうことなのか?

結構複雑なので、次から順を追って説明しますね。

もぐら先生

昇降機は併願申請が原則

昇降機は建築物に設置するものなので、建築物の新築に併せて新設されるのが一般的です。

よって、建築物の確認申請に含めて、昇降機の確認申請を行う『併願申請』とするのが原則です。

実は建築基準法上では建築物の新築時に、建築物の確認申請と昇降機の確認申請を別々に行う『別願申請』の規定はありません。

もぐら先生

実際は同時に申請する事が難しい

建築物の確認申請時には昇降機の構造、仕様や製造者等が未定のことが多いため、『併願申請』を行う事は困難な場合があります。

そのため運用上、昇降機は法第87条の4の申請『別願申請』が行われています。

法第87条の4の申請とは?

法第87条の4の申請とは、既存の建築物に後付けで昇降機を設置しようとする時に昇降機単独でも法6条等が準用され確認申請を行うという規定です。

その中で、法6条の建築物の区分により下記の通り確認申請の要、不要が分けられていました。

法第87条の4

・法6条1項1号から3号 確認申請を行う

・法6条1項4号 確認申請は不要

ここでは分かりやすいように令和7年4月以前の旧法で説明しています。

もぐら先生

このように法第87条の4は既存建築物に対する確認申請の規定ですが、これを運用上、利用して、新築時でも昇降機の『別願申請』が多く認められています。

四号建築物は『別願申請』ができない

注意が必要なのは、旧4号建築物は法第87条の4の申請は不要であるという事は、それを準用した『別願申請』もできないということです。

そのため、旧1号建築物~旧3号建築物は『別願申請』ができるが旧4号建築物は建築物と『併願申請』しなければなりません。

 法87条の4併願申請、別願申請の別
法第6条 1~3号建築物確認申請が必要別願申請が可能
法第6条 4号建築物確認申請が不要別願申請が不可
(併願申請としなければならない)

新法ではどうなる?

ここからは新法でお話しします。

もぐら先生

新法では法第6条3号建築物に加え、『使用頻度が低く劣化が生じにくいことその他の理由により人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないものとして国土交通大臣が定めるもの』(告示第1148号に該当する建築物)も法87条の4の申請が不要となりました。

それに伴い、別願申請が不可の範囲も広がります。

 法87条の4併願申請、別願申請の別
法第6条 1~2号建築物確認申請が必要別願申請が可能

法第6条 3号建築物

告示第1148号に該当する建築物

確認申請が不要別願申請が不可
(併願申請としなければならない)

告示第1148号に該当する建築物

  • 籠が住戸内のみを昇降するもの
  • 法第6条第1項2号に掲げる建築物で
    • 階数が2以下 かつ
    • 延べ面積が500㎡以下 かつ
    • 最高高さが16m以下

今後は併願申請が増加

法第6条第1項3号建築物、告示第1148号に該当する建築物は今後、建築物と併願申請しなくてはなりません。

法第6条第1項3号建築物は平屋なので実際には昇降機を設けられる事は無いと思います。

もぐら先生

今後は建築物の確認申請時に昇降機の構造、仕様や製造者等を決め、昇降機に関する申請書類も揃えなければ、確認済証を取得できません。

対象となる昇降機の種類

本改正の対象となる昇降機は以下の通りです。

  • エレベーター
  • 段差解消機
  • 階段昇降機

対象外となる昇降機か以下の通りです。

  • エスカレーター
  • 小荷物専用昇降機

ちなみに階段昇降機とは階段にレールに沿って椅子型の昇降装置を設けるもので、レール等の部分は手すりと同様、10cmまで階段幅の算定から除かれます。

階段昇降機の出幅免除
建築知識2008年8月号 より引用

まとめ

  • 令和7年4月1日に4号建築物の規模が縮小
  • 従来確認申請が不要でった後付けの昇降機の規模もそれに伴い縮小
  • その対応策として一定の用途、規模の建築物は引き続き確認申請が不要となる改正が併せて行われた
  • 令146条に(使用頻度が低く劣化が生じにくいことその他の理由により人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないものとして国土交通大臣が定めるものを除く。)が追加
  • 「国土交通大臣が定めるもの」は令和6年9月9日告示第1148号に明示
  • 告示第1148号 下記のいずれか
    • 籠が住戸内のみを昇降するもの
    • 法第6条第1項2号に掲げる建築物で
      • 階数が2以下 かつ
      • 延べ面積が500㎡以下 かつ
      • 最高高さが16m以下
  • 法6条第1項三号建築物、告示第1148号の建築物は昇降機単独の確認申請ができない為、今後は併願申請となる
  • 対象は以下の通り
    • エレベーター
    • 段差解消機
    • 階段昇降機
  • 対象外は以下の通り
    • エスカレーター
    • 小荷物専用昇降機

本記事の作成にあたり参考にした条文、書籍等

  • 法87条の4 建築設備への準用
  • 令146条 確認等を要する建築設備
  • 令和6年9月9日 告示1148号 確認等を要しない人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないエレベーターを定める件
  • 令和6年9月9日 パブリックコメント 脱炭素社会の実現に資するため建築物エネルギー消費性能向上関法律等の一部を改正する施行に伴い制定・関係告示案意見募集の結果
  • 昇降機技術基準の解説 2016年版(追補2024年版)
  • 建築知識 2008年8月号

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