防火規定

延焼ライン内の外壁の開口部【換気口、風道編】150φはFD(防火ダンパー)が必要で100φはFDが不要な理由を解説します。

にゃんぴー

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延焼ライン内の開口部(換気口、風道編)
悩む女性

延焼ラインにかかる換気口は150φはFD付き

100φはFD不要ですよね。

そうです。

みなさん当たり前のように150φの換気口にはFD(防火ダンパー)を設置しますよね。

ただ、その根拠を説明できる人は少ないと思います。

今回の記事ではその理由を法文を見ながら解説していきます。

この内容は少しマニアックかもしれませんが、知っておくと面白い豆知識です。

ぜひお読みいただき法文の理解を深めてください。

もぐら先生

延焼のおそれのある部分にある外壁の開口部は防火設備

耐火建築物や準耐火建築物、また防火地域や準防火地域内の建築物では、延焼のおそれのある部分にある外壁の開口部には防火設備を設置する必要があります。

法文を見てみよう

(用語の定義)
第2条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

九の二 耐火建築物  次に掲げる基準に適合する建築物をいう。

 その主要構造部が⑴又は⑵のいずれかに該当すること。

 耐火構造であること。
 次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあっては、⒤に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。
 当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
(ⅱ) 当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。

 その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第27 条第1項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。

九の三 準耐火建築物  耐火建築物以外の建築物で、イ又はロのいずれかに該当し、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロに規定する防火設備を有するものをいう。

 主要構造部を準耐火構造としたもの
 イに掲げる建築物以外の建築物であって、イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの


(防火地域及び準防火地域内の建築物)
第61 条 防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ2m以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。

延焼のおそれのある部分にある窓や扉を防火設備としますが、換気口も一緒です。

では、換気口に設ける防火設備とは何でしょう?

もぐら先生

FD(防火ダンパー)は防火設備?

換気口における防火設備はFD(防火ダンパー)です。(FDはファイヤーダンパーの略)

FD(防火ダンパー)は換気ダクト内の温度ヒューズが72℃(火気使用は120℃)に達すると自動的に閉鎖し、空気の流れを遮断して火災の拡大を防ぎます。

FD(防火ダンパー)が防火設備であるという規定は令112条第21項です。

法文を見てみよう

(防火区画)
第112 条

21  換気暖房又は冷房の設備の風道が準耐火構造の防火区画を貫通する場合(国土交通大臣が防火上支障がないと認めて指定する場合を除く。)においては、当該風道の準耐火構造の防火区画を貫通する部分又はこれに近接する部分に、特定防火設備(法第2条第九号の二ロに規定する防火設備によって区画すべき準耐火構造の防火区画を貫通する場合にあっては、同号ロに規定する防火設備)であって、次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを国土交通大臣が定める方法により設けなければならない。

 火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖するものであること。
 閉鎖した場合に防火上支障のない遮煙性能を有するものであること。

令112条第21項は防火区画の貫通処理の規定ですが、この規定により、防火ダンパーは防火区画を貫通する風道に設置されるべき防火設備として位置づけられています。

防火設備どころか、特定防火設備と定義されています。

これによりFD(防火ダンパー)=特定防火設備という事になります。

そのため延焼のおそれのある部分の換気口にFD(防火ダンパー)を設置すれば防火設備が設置された事になります。

じゃあ、なぜ、

100φの換気口にはFD(防火ダンパー)が不要なのでしょうか?

もぐら先生

100φの換気口にFD(防火ダンパー)が不要な理由

150φにはFD(防火ダンパー)が必要

100φにはFD(防火ダンパー)は不要

では、110φには必要?120φには?130φには?140φにはどうでしょう?

実際、110φや120φの換気口の商品も存在します。

その答えは平成12年告示1369号にあります。

告示を見てみよう

平成12年5月25日建設省告示第1369号

特定防火設備の構造方法を定める件

第一 通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間加熱面以外の面に火炎を出さない防火設備の構造方法は、次に定めるものとすることとする。

 令和元年国土交通省告示第百九十三号第一第十二項に規定する七十五分間防火設備

 令和六年国土交通省告示第二百二十七号第十四に規定する準遮熱型特定防火設備

 通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二十一条第二項、建築基準法第六十一条第一項、建築基準法施行令(以下「令」という。)第百八条の三第一号又は令第百九条の八の規定による国土交通大臣の認定を受けたもの

 平成27年国土交通省告示第250号第2第三号リ(2)(ⅰ)(一)に規定する構造としたもの

 骨組を鉄材又は鋼材で造り、両面にそれぞれ厚さが〇・五ミリメートル以上の鉄板又は鋼板を張ったもの

 鉄材又は鋼材で造られたもので、鉄板又は鋼板の厚さが一・五ミリメートル以上のもの

 鉄骨コンクリート又は鉄筋コンクリートで造られたもので、厚さが三・五センチメートル以上のもの

 土蔵造で厚さが十五センチメートル以上のもの

 令第百九条第二項の規定により同条第一項の防火設備とみなされる外壁、袖壁、塀その他これらに類するもので、防火構造としたもの

 開口面積が百平方センチメートル以内の換気孔に設ける鉄板、モルタル板その他これらに類する材料で造られた防火覆い又は地面からの高さが一メートル以下の換気孔に設ける網目二ミリメートル以下の金網

第二 第一第五号又は第六号のいずれかに該当する防火設備は、周囲の部分(当該防火設備から屋内側に十五センチメートル以内の間に設けられた建具がある場合には、当該建具を含む。)が不燃材料で造られた開口部に取り付けなければならない。

第三 防火戸(第一第九号又は第十号のいずれかに該当するものを除く。)が枠又は他の防火設備と接する部分は、相じゃくりとし、又は定規縁若しくは戸当りを設ける等閉鎖した際に隙間が生じない構造とし、かつ、防火設備の取付金物は、当該防火設備が閉鎖した際に露出しないように取り付けなければならない。

平成12年告示1369号は特定防火設備の構造を定める告示です。

  • 開口面積は100c㎡以内で鉄板等による防火覆いを設ける事
  • 地面から1m以下の換気口は網目2mm以下の金網とする事
延焼ラインの防火覆い
建築設備設計・施工上の運用指針 2024年版 より引用

上記の図解の様に100c㎡以下の換気口でガラリやスチールベントキャップなどの防火覆いが設けられている場合は特定防火設備と扱われます。

また、基礎の換気口については網目2mm以下の金網であれば特定防火設備として扱われます。

よって、いずれも延焼のおそれのある部分の開口部の条件をクリアする事になります。

100c㎡は10cm×10cmですが10cm角より大きいのはどこからでしょうか。

それぞれの換気口のサイズの面積を見てみましょう。

もぐら先生

100φ5.0×5.0×3.1478.50c㎡防火覆い
110φ5.5×5.5×3.1494.985c㎡防火覆い
120φ6.0×6.0×3.14113.04c㎡FDが必要
130φ6.5×6.5×3.14132.665c㎡FDが必要
140φ7.0×7.0×3.14153.86c㎡FDが必要
150φ7.5×7.5×3.14176.625c㎡FDが必要

計算してみると110φまでは100c㎡以下なので防火覆いでOK、120φ以上はFD(防火ダンパー)が必要という事になります。

サイズによって防火覆いかFD(防火ダンパー)かという違いはありますが、どちらも特定防火設備として扱われます。

まとめ

  • 耐火建築物や準耐火建築物、防火地域や準防火地域内の建築物は、延焼のおそれのある部分にある外壁の開口部には防火設備を設置する必要がある。
  • 換気口も同様に外壁の開口部として扱われる。
  • 換気口に設けられる防火設備はFD(防火ダンパー)である。
  • FD(防火ダンパー)が防火設備であるという規定は令112条第21項。
  • 令112条第21項でFD(防火ダンパー)は特定防火設備と定義されている。
  • 100φの換気口にFD(防火ダンパー)が不要な理由は平成12年告示1369号にある。
    • 開口面積は100c㎡以内で鉄板等による防火覆いを設ける事
    • 地面から1m以下の換気口は網目2mm以下の金網とする事
  • 110φまでは100c㎡以下なので防火覆いでOK、120φ以上はFD(防火ダンパー)が必要。
  • サイズによって防火覆いかFD(防火ダンパー)かの違いはあるが、どちらも特定防火設備として扱われる。

本記事の作成にあたり参考にした条文、書籍等

  • 建築基準法 第2条(用語の定義)
  • 建築基準法 第61条(防火地域及び準防火地域内の建築物)
  • 建築基準法施行令 第112条(防火区画)
  • 平成12年5月25日建設省告示第1369号(特定防火設備の構造方法を定める件)
  • 建築設備設計・施工上の運用指針 2024年版

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