高層区画とは?
高層区画は、建築物の11階以上の部分についてはハシゴ車が届かないために区画面積を小さくした面積区画を設けるものです。
高層区画には100㎡、200㎡、500㎡の3種類があり区画面積は内装の不燃性能や防火設備の種類などで変わります。
今回の記事では高層区画の基本から区画の仕様、緩和・免除される条件、法改正遍歴などを解説します。
令112条の法文をチェック
建築基準法施行令
(防火区画)
第112条 1~6 略
7 建築物の11 階以上の部分で、各階の床面積の合計が100㎡を超えるものは、第1項の規定にかかわらず、床面積の合計100㎡以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。
8 前項の建築物の部分で、当該部分の壁(床面からの高さが1.2 m以下の部分を除く。次項及び第14 項第一号において同じ。)及び天井の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。以下この条において同じ。)の仕上げを準不燃材料でし、かつ、その下地を準不燃材料で造ったものは、特定防火設備以外の法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画する場合を除き、前項の規定にかかわらず、床面積の合計200㎡以内ごとに区画すれば足りる。
9 第7項の建築物の部分で、当該部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ったものは、特定防火設備以外の法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画する場合を除き、同項の規定にかかわらず、床面積の合計500㎡以内ごとに区画すれば足りる。
10 前3項の規定は、階段室の部分若しくは昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)、廊下その他避難の用に供する部分又は床面積の合計が200㎡以内の共同住宅の住戸で、耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第7項の規定により区画すべき建築物にあっては、法第2条第九号の二ロに規定する防火設備)で区画されたものについては、適用しない。
11~18 略
19 第1項、第4項、第5項、第10 項又は前項の規定による区画に用いる特定防火設備、第7項、第10 項、第11 項又は第12 項本文の規定による区画に用いる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備、同項ただし書の規定による区画に用いる10 分間防火設備及び第13 項の規定による区画に用いる戸は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める構造のものとしなければならない。
一 第1項本文、第4項若しくは第5項の規定による区画に用いる特定防火設備又は第7項の規定による区画に用いる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備 次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの
イ 常時閉鎖若しくは作動をした状態にあるか、又は随時閉鎖若しくは作動をできるものであること。
ロ 閉鎖又は作動をするに際して、当該特定防火設備又は防火設備の周囲の人の安全を確保することができるものであること。
ハ 居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の通行の用に供する部分に設けるものにあっては、閉鎖又は作動をした状態において避難上支障がないものであること。
ニ 常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあっては、火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合のいずれかの場合に、自動的に閉鎖又は作動をするものであること。
二 第1項第二号、第10 項若しくは前項の規定による区画に用いる特定防火設備、第10 項、第11 項若しくは第12 項本文の規定による区画に用いる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備、同項ただし書の規定による区画に用いる10 分間防火設備又は第13項の規定による区画に用いる戸 次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの
イ 前号イからハまでに掲げる要件を満たしているものであること。
ロ 避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有し、かつ、常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあっては、火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖又は作動をするものであること。
建築基準法施行令より引用
高層区画に関する法文を抜粋し、マーキングしました。
最新版の法令集をお求めの方はこちらの記事も参考にして下さい。
高層区画の基本的な考え方
対象となる建築物の部分
- 11階以上の階
- 100㎡を超える階
上記の部分に高層区画がかかります。
また、高層区画には100㎡、200㎡、500㎡の3種類があります。
区画内の内装の不燃性能や防火設備の種類などにより区画面積が変わります。
100㎡で区画する場合(7項)
- 内装の制限は特になし
- 耐火構造の壁、床、常時閉鎖式又は随時閉鎖式の防火設備(遮煙性能は不要)で区画
200㎡で区画する場合(8項)
- 壁、天井の仕上、下地を準不燃材料
- 耐火構造の壁、床、常時閉鎖式又は随時閉鎖式の特定防火設備(遮煙性能は不要)で区画
500㎡で区画する場合(9項)
- 壁、天井の仕上、下地を不燃材料
- 耐火構造の壁、床、常時閉鎖式又は随時閉鎖式の特定防火設備(遮煙性能は不要)で区画
内装制限の範囲
500㎡、200㎡で求められる壁の仕上、下地の内装制限については、床面から1.2m以下の範囲は対象外です。
スプリンクラー設備等の設置による倍読み
面積区画と同様にスプリンクラー、水噴霧設備、泡消火設備などで自動式のものを設置した部分は、設置部分の1/2の面積を除外することができます。
スパンドレルが必要
高層区画にはスパンドレルが必要です。
高層区画の緩和、免除
階段室、昇降機の昇降路、廊下(10項)
階段室、昇降機の昇降路、廊下などで避難のための部分で以下の区画がされた部分は高層区画が不要です。
- 耐火構造の床、壁で区画
- 開口部は常時閉鎖式又は随時閉鎖式の遮煙性能付きの特定防火設備で区画
共同住宅の住戸(10項)
床面積が200㎡以下の共同住宅の住戸で以下の区画がされた部分は高層区画が不要です。
- 耐火構造の床、壁で区画
- 開口部は常時閉鎖式又は随時閉鎖式の遮煙性能付きの特定防火設備で区画
10項の規定だけ遮煙性能が必要になりますのでご注意ください。
避難安全検証法による免除
避難安全検証法には区画避難安全検証法、階避難安全検証法、全館避難安全検証法の3種類がありますが、全館避難安全検証法を行った場合のみ高層区画が免除されます。
避難安全検証法に関する詳しい記事はこちらをご覧ください。
高層区画はいつから?法改正遍歴
高層区画の規定が(令112条7~10項)の規定が施行されたのは昭和39年1月15日です。
その後、昭和46年、平成5年、平成12年、令和元年、令和2年に改正があり、現行の法文になっています。
重要な部分だけピックアップして紹介します。
昭和46年1月1日施行
階段、昇降機の昇降路、廊下の緩和が新設されました。
平成12年6月1日施行
200㎡以下の共同住宅の住戸の緩和が新設されました。
法改正遍歴、既存不適格を調べるには令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシートが非常に役立ちます。
まとめ
- 高層区画は11階以上の階に求められる面積区画
- 100㎡、200㎡、500㎡区画の3種類がある
- 100㎡区画は内装制限はなし、耐火構造の壁、床、防火設備で区画
- 200㎡区画は天井、壁の仕上、下地は準不燃材料、耐火構造の壁、床、特定防火設備で区画
- 500㎡区画は天井、壁の仕上、下地は不燃材料、耐火構造の壁、床、特定防火設備で区画
- 1.2m以下の壁の部分は内装の制限なし
- スプリンクラー設備等を設置した部分は1/2を区画面積から除外できる
- スパンドレルは必要
- 階段、昇降機の昇降路、廊下は耐火構造の壁、床、常時閉鎖式又は随時閉鎖式の遮煙性能を有した特定防火設備で区画されている場合は高層区画不要
- 200㎡以下の共同住宅の住戸は耐火構造の壁、床、常時閉鎖式又は随時閉鎖式の遮煙性能を有した特定防火設備で区画されている場合は高層区画不要
- 全館避難安全検証法を適用した場合は高層区画は免除できる
- 高層区画の規定が(令112条7~10項)の規定が施行されたのは昭和39年1月15日
本記事の作成にあたり参考にした条文、書籍等
- 建築基準法施行令第112条(防火区画)
- 建築知識2022年11月号
- 令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシート