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階段の幅、踏面、蹴上、緩和規定、法改正遍歴などを解説します。
まずは法23条をチェック
法文を見てみよう
【建築基準法施行令第23条】
(階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法)
第23 条 階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法は、次の表によらなければならない。ただし、屋外階段の幅は、第120 条又は第121 条の規定による直通階段にあっては90㎝以上、その他のものにあっては60㎝以上、住宅の階段(共同住宅の共用の階段を除く。)の蹴上げは23㎝以下、踏面は15㎝以上とすることができる。
階段の種別 階段及びその踊場の幅(単位㎝) 蹴上げの寸法(単位㎝) 踏面の寸法(単位㎝) (1) 小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)における児童用のもの 140以上 16以下 26以上 (2) 中学校(義務教育学校の後期課程を含む。)、高等学校若しくは中等教育学校における生徒用のもの又は物品販売業(物品加工修理業を含む。第130条の5の3を除き、以下同じ。)を営む店舗で床面積の合計が1,500㎡を超えるもの、劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂若しくは集会場における客用のもの 140以上 18以下 26以上 (3) 直上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える地上階又は居室の床面積の合計が100㎡を超える地階若しくは地下工作物内におけるもの 120以上 20以下 24以上 (4) ⑴から⑶までに掲げる階段以外のもの 75以上 22以下 21以上 2 回り階段の部分における踏面の寸法は、踏面の狭い方の端から30㎝の位置において測るものとする。
3 階段及びその踊場に手すり及び階段の昇降を安全に行うための設備でその高さが50㎝以下のもの(以下この項において「手すり等」という。)が設けられた場合における第1項の階段及びその踊場の幅は、手すり等の幅が10㎝を限度として、ないものとみなして算定する。
4 第1項の規定は、同項の規定に適合する階段と同等以上に昇降を安全に行うことができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いる階段については、適用しない。
建築基準法法令集 2025年版(令和7年版)より抜粋
分かりやすくマーキングしました。
階段寸法はどう決められている?
建築物の階段は建物内を安全に上下移動するために利用者の属性、用途、規模によって幅員、蹴上、踏面、踊場の寸法が定められています。
分かりやすく表にまとめると以下の通りです。
単位cm | |||||
階段の種類 | 階段、踊場の幅 | 蹴上 | 踏面 | 踊場 | |
1 | 小学校の児童用のもの | 140(90)以上 | 16以下 | 26以上 | 高さ3m以内ごと |
2 | 中学校、高校の生徒用のもの | 140(90)以上 | 18以下 | 26以上 | |
物販店舗(1500㎡超) | |||||
劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場の客用のもの | |||||
3 | 直上階の居室の床面積が200㎡を超える地上階 | 120(90)以上 | 20以下 | 24以上 | 高さ4m以内ごと |
居室の床面積が100㎡を超える地下階 | |||||
4 | 上記以外のもの | 75以上 | 22以下 | 21以上 | |
5 | 住宅の階段 ★1 | 75以上 | 23以下 | 15以上 | |
|
直上階の床面積ではなく直上階の居室の床面積なのでご注意ください。
★1 住宅の階段とは以下のものを指します。
- 一戸建ての住宅の階段
- 長屋の階段
- 共同住宅のメゾネット住戸内の階段
共同住宅の共用階段、寄宿舎の階段は住宅の階段にはあたりませんのでご注意ください。
★2 屋外階段の条件は以下の通りです。
- 手すりの上部が1.1m以上開放されている事
- 隣地境界線から50cm以上、同一敷地内の他の部分から1m以上離れている事
- 上記2点を満たした部分が周長の1/2以上ある事
建築物の防火避難規定の解説2016 P115 より引用
こちらの取扱いは建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)に載っています。
階段寸法の緩和について
令和元年6月24日の法改正により一定の条件を満たした階段の蹴上、踏面の緩和規定があります。
(「平成26年6月27日国土交通省告示第709号」が令和元年6月24日に改正されました)
告示を見てみよう
平成26年6月27日国土交通省告示第709号
建築基準法施行令第23条第1項の規定に適合する階段と同等以上に昇降を安全に行うことができる階段の構造方法を定める件建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第23条第4項の規定に基づき、同条第1項の規定に適合する階段と同等以上に昇降を安全に行うことができる階段の構造方法を次のように定める。
第1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第23条第4項に規定する同条第一項の規定に適合する階段と同等以上に昇降を安全に行うことができる階段の構造方法は、次に掲げる基準に適合するものとする。
一 階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法が、次の表の各項に掲げる階段の種別の区分に応じ、それぞれ当該各項に定める寸法(次の表の各項のうち二以上の項に掲げる階段の種別に該当するときは、当該二以上の項に定める寸法のうちいずれかの寸法)であること。ただし、屋外階段の幅は、令第120条又は令第121条の規定による直通階段にあっては90センチメートル以上、その他のものにあっては60センチメートル以上とすることができる。
階段の種別 階段及びその踊場の幅
(単位 センチメートル)蹴上げの寸法
(単位 センチメートル)踏面の寸法
(単位 センチメートル)(一) 令第23条第1項の表の(一)に掲げるもの 140以上 18以下 26以上 (二) 令第23条第1項の表の(二)に掲げるもの 140以上 20以下 24以上 (三) 令第23条第1項の表の(四)に掲げるもの 75以上 23以下 19以上 (四) 階数が2以下で延べ面積が200平方メートル未満の建築物におけるもの 75以上 23以下 15以上 二 階段の両側に、手すりを設けたものであること。
三 階段の踏面の表面を、粗面とし、又は滑りにくい材料で仕上げたものであること。
四 第一号の表(四)の項に掲げる階段の種別に該当する階段で同項に定める寸法に適合するもの(同表(一)から(三)までの各項のいずれかに掲げる階段の種別に該当する階段でそれぞれ当該各項に定める寸法に適合するものを除く。)にあっては、当該階段又はその近くに、見やすい方法で、十分に注意して昇降を行う必要がある旨を表示したものであること。建築基準法告示より抜粋
第2 令第23条の第2項の規定は第1第一号の踏面の寸法について、同条第3項の規定は同号の階段及びその踊場の幅について準用する。
告示第709号について解説します。
令23条第4項の規定により「令23条第1項の規定に適合する階段と同等以上に昇降を安全に行うことができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いる階段」とあります。
「同等以上に昇降を安全に行うことができるもの」とは何か?
以下の条件に当てはまるものを言います。
- 階段の両側に手すりを設けたもの
- 階段の踏面の表面を滑りにくい材料で仕上げたもの
- (4)については当該階段に、十分に注意して昇降を行う必要がある旨を表示する
なんだか比較的簡単に出来そうですね
「同等以上に昇降を安全に行うことができるもの」については一部階段で蹴上、踏面の寸法を緩和する事ができます。
緩和できる寸法については表にまとめると以下の通りです。
単位cm | |||
階段の種類 | 蹴上 | 踏面 | |
1 | 小学校の児童用のもの | 16→18以下 | - |
2 | 中学校、高校の生徒用のもの | 18→20以下 | 26→24以上 |
物販店舗(1500㎡超) | |||
劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場の客用のもの | |||
3 | 直上階の居室の床面積が200㎡を超える地上階 | - | - |
居室の床面積が100㎡を超える地下階 | |||
4 | 上記以外のもの | 22→23以下 | 21→19以上 |
5 | 住宅の階段 | - | - |
6 | 階数が2以下かつ200㎡以下(十分に注意して昇降を行う必要がある旨を表示) | 23以下 | 15以上 |
踊場についての解説(踏み幅の規定など)
法文を見てみよう
【建築基準法施行令第24条】
(踊場の位置及び踏幅)
第24 条 前条第1項の表の⑴又は⑵に該当する階段でその高さが3mをこえるものにあっては高さ3m以内ごとに、その他の階段でその高さが4mをこえるものにあっては高さ4m以内ごとに踊場を設けなければならない。
建築基準法施行令より引用
2 前項の規定によって設ける直階段の踊場の踏幅は、1.2 m以上としなければならない。
令23条の表中の(1)(2)に該当する建築物の階段には高さ3mごとに、それ以外には高さ4mごとに踊場の設置が必要です。
踊場の幅は階段幅と同様の幅員が必要となります。
踊場の踏幅が1.2m以上必要という規定は直階段のみに規定されており、回り階段、折り返し階段などにはその規定がありません。
1.2m以上という規定はありませんが設けなくてよいという訳ではなく3m又は4m以内ごとに適切な大きさの踊場が必要です。
例えば、階段幅が750mmの階段であれば踏幅も750mm程度として設けるのがよいでしょう。
階段についてのケーススタディ
屋外避難階段の幅は750mm以上でいいんですか?
避難階段だから階段の幅が厳しくなるという訳ではありません。
屋外避難階段であっても令23条の表に該当する寸法によります。
屋内階段が3つある場合、避難に使う2つは階段幅1200mm以上、残り1つの階段幅は750mm以上でよい?
避難に使う使わないは関係なく、階段を設ける以上すべての階段を令23条の寸法とする必要があります。
よって、階段幅が1200mm以上必要な建物であれば3つともその寸法が必要です。
階段寸法が適用されないのは昇降機機械室用、物見塔用階段など特殊の用途に専用する階段で令27条に示されている階段のみです。
階段の手すりについて
階段の手すりについてはこちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
階段寸法の規定はいつから?法改正遍歴、既存不適格について
階段寸法の規定(令23条)が施行されたのは昭和25年11月23日です。
建築基準法が施行されたのと同時ですね
その後、昭和34年・昭和46年・平成5年・平成11年・平成12年・平成26年・平成27年・令和元年(階段寸法に関する告示が改正)に改正があり、現行の法文になっています。
重要な部分だけピックアップして紹介します。
昭和46年施行
令23条第1項の表の(2)の欄に「物品販売業(物品加工修理業を含む。第130条の5の3を除き、以下同じ。)を営む店舗で床面積の合計が1,500㎡を超えるもの」が追加されました。
平成12年施行
令23条第3項が追加されました。
平成26年施行
令23条第4項が追加されました。
既存不適格について
令23条第3項、第4項の新設については緩和に関する規定なので特に支障がありません。
階段の規定が新設された昭和25年以前の建築物、昭和46年以前の物品販売業を営む店舗の階段寸法は、規定値を満たしていない可能性がありますが、既存不適格となります。
増築等を行う場合は既存遡及する可能性がありますのでご注意ください。
法改正遍歴、既存不適格を調べるには令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシートが非常に役立ちます。
まとめ
- 階段寸法は建物の利用者の属性、用途や居室の床面積によって定められている
- 屋外階段や住宅の階段は緩和がある
- 両側に手すりを設け、踏面を滑りにくい材質で作ると一部蹴上、踏面寸法を緩和できる。
- 踊場の踏幅の規定は直階段のみに定められている。
- 昭和25年以前の階段寸法は既存不適格の可能性がある