2025年4月に四号建築物の範囲の縮小、すべての建築物への省エネ適判対象化などと併せて壁量計算・柱の小径の改正が行われます。
今回、壁量計算・柱の小径の改正がどのようなものなのか、改正の概要、設計支援ツールの使い方、手順などを画面を見ながら分かりやすく解説していきます。
大まかな概要を掴んで来たる法改正に備えましょう。
※本事項は2023年12月に国土交通省より発表されている見込事項であり、確定されたものではありません。
追加情報、変更情報がある場合は本記事で随時更新していきます。
なぜ壁量計算の改正が行われる?
令46条(木造建築物の壁量計算)の規定は昭和56年施行以来、40年以上もの間、必要壁量の算定において『重い屋根』と『軽い屋根』の分類による係数を床面積に乗じて得る算定法でした。
近年、ZEH住宅の普及、促進により、断熱材の増加、トリプルガラスサッシ、太陽光パネルなど建築物全体の重量化が進んでいます。
そこで2025年4月の法改正で壁量計算をより実況に応じたものになる様、改正が行われます。
柱の小径に関しても同時に改正が行われます。
ZEH住宅とは?
ZEHは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語です。
建物の高断熱化、LED照明や高効率の給湯システム、省電力の冷暖房や換気システムなどでエネルギー消費を抑え、太陽光発電によりエネルギーを造り出します。
断熱、省エネ、創エネの3つでエネルギー消費を0にする住宅をZEH住宅と言います。
光熱費を抑えられ、更に補助金がもらえるなどお得な面があります。
ZEH住宅等の重量化に伴い法改正が行われますが、ZEH住宅に限らずすべての建築物に適用される法改正です。
壁量計算がいつどう変わる?
令和7年(2025年)4月1日に施行予定です。
従来の『重い屋根』と『軽い屋根』の係数は廃止されます。
『必要壁量』『柱の小径』の算定方法は3つの方法があります。
また、それに伴い存在壁量の算定法についても見直しが行われます。
次から1つずつ解説していきますね
ちなみに風圧力に対する必要壁量は現行法規のままです。
必要壁量の3つの算定法
基本形
壁量計算の計算式
必要壁量=床面積×Lw
Lw =(Ai × Co × Σwi)/(0.0196 × Afi)
Lw:床面積あたりの必要壁量(cm/㎡)
Ai:層せん断力分布係数
Ai=1+{(1/√αi)-αi}×2T/(1+3T)
固有周期 T=0.03h(秒)
αi:建築物の Ai を算出しようとする高さの部分が支える部分の固定荷重と積載荷重との和を当該建築物の地上部分の固定荷重と積載荷重との和で除した数値
h:建築物の高さ(m)
Co:標準せん断力係数 0.2 とする。
※令第 88 条第 2 項の規定により指定した区域の場合は 0.3
Σwi:当該階が地震時に負担する固定荷重と積載荷重の和(kN)
Afi:当該階の床面積(㎡)
柱の小径の計算式
de / L = 0.027 + 22.5 × Wd / L2
de : 必要な柱の小径(mm)
L : 横架材相互の垂直距離(mm)
Wd : 当該階が負担する単位面積あたりの固定荷重と積載荷重の和(N/m2)
※積雪荷重は含まない。
とまぁ、必要壁量、柱の小径の係数を出す式がこんなにも複雑になってしまいました。
こちらを使うのは大変なので❷表計算ツール、❸早見表による方法が一般的に使われることになると思います。
表計算ツールによる方法
表計算ツールと早見表は『公益財団法人日本住宅・木材技術センターのHP(外部リンク)』で設計支援ツール(案)として公開されています。
【手順】
①エクセルファイルを開く
②緑色のセルを入力→オレンジ色の係数に床面積をかけて必要壁量を算定
入力してみましたが階高、床面積以外はプルダウン形式になっているので入力はとても簡単でした!
③上記を入力しチェック欄にチェックを入れると柱の小径が出ます
柱の小径の算定方法は2-1、2-2、2-3の3通りあります。
それぞれチェック欄にチェックを入れる事でオレンジ色の部分が表示されます。
2-1は単純に柱の小径を算定する方法
2-2は樹種を入力することで少しサイズを低減できる方法
2-3は樹種、柱の断面寸法を指定して負担できる面積を算定する方法
単純な方法が良いか、設計の自由度を上げるか、用途によって使い分けができます。
早見表による方法
早見表もまず『公益財団法人日本住宅・木材技術センターのHP(外部リンク)』を開きます。
【手順】
①太陽光発電設備の「あり」「なし」を選択
②階高を選択
③1階と2階の床面積を選択
④該当のPDFを開く
屋根の仕様、外壁の仕様に応じて必要壁量、柱の小径が分かります。
存在壁量算定の見直し
準耐力壁が算入可能に
必要壁量算定の改正に併せて存在壁量の中に準耐力壁を評価することが可能になります。
準耐力壁等の中には準耐力壁、垂れ壁、腰壁がありそれぞれ条件や倍率の取り方が異なります。
下の図をご覧ください。
「木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準(案)の概要(令和5年12月時点)」に関する補足資料より引用
また、準耐力壁等の評価については必要壁量の1/2以上を準耐力壁等が占める場合と1/2を超える場合とで存在壁量の算定、四分割法、柱頭柱脚の接合部に算入の有無が変わります。
準耐力壁等は倍率が低いので必要壁量の1/2を超える事はあまりありません。
赤枠で囲われている必要壁量の1/2以下の適用が一般的になるかと思います。
高耐力壁が可能に
現行法規では壁倍率5倍が上限となっているが、壁倍率の上限を7倍に改正が行われます。
なお、鉛直荷重に対して十分な耐力を横架材が有するほか、水平力により上部構造に生じる引張力に対して十分な耐力を基礎が有するよう、横架材・基礎について設計上配慮する必要があります。
3.2mを超える軸組の場合、筋違い倍率を低減
筋かいを入れた軸組の高さが一定の高さを超える場合、所定の壁倍率が発揮できないことを踏まえ、高さ3.2mを超える軸組については一定の低減が行われます。
下記の式により低減を行います。
計算式
αh=3.5×Ld/Ho
αh:壁倍率に乗ずる低減率
Ld:筋かいを入れた軸組における柱間の距離(mm)
Ho:筋かいを入れた軸組の高さ(mm)
法改正遍歴と既存不適格
壁量計算の規定(令46条)が施行されたのは昭和25年11月23日です。
その後、昭和26年、昭和34年、昭和46年、昭和56年、昭和62年、平成12年、平成13年に改正があり、現行の法文になっています。
柱の小径の規定(令43条)が施行されたのは昭和25年11月23日です。
その後、昭和31年、昭和34年、昭和46年、昭和62年、平成12年、平成13年、平成16年に改正があり、現行の法文になっています。
重要な部分だけピックアップして紹介します。
昭和34年12月23日施行
存在壁量算定の壁倍率、必要壁量算定の係数が見直しされました。
柱の小径の係数が見直されました。(現行法の係数になりました)
昭和56年6月1日施行
存在壁量算定の壁倍率、必要壁量算定の係数が見直しされました。(現行法の係数になりました)
令和7年4月1日施行予定
本記事の通り改正が予定されています。
法改正遍歴、既存不適格を調べるには令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシートが非常に役立ちます。
まとめ
- ZEH住宅等の普及、促進により小規模建築物の重量化が進んでいる。
- そのため、令和7年4月1日に木造建築物の壁量計算、柱の小径の法改正が行われる。
- 従来の『重い屋根』と『軽い屋根』の係数は廃止される。
- 壁量計算、柱の小径の算定方法は3種類ある。
- 基本形
- 表計算ツールによる方法
- 早見表による方法
- 基本形は複雑であるため、表計算ツール、早見表が主流となる。
- 存在壁量の見直し
- 準耐力壁等が算入可能に
- 壁倍率の上限が5倍から7倍に
- 高さ3.2mを超える軸組は低減