
建築主事は聞いた事があるけど
建築副主事って何?
小規模な建築物の確認済証を下付する事ができる建築副主事というものが誕生します。
二級建築士の方が資格を取得する事ができるので可能性が広がりますね。
本日の授業は建築副主事について解説します。

建築副主事とは?
地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(第13次地方分権一括法案)が令和5年3月3日に閣議決定されました。
この法律案には7法律の改正が盛り込まれており、その一つに建築基準法が含まれています。
今後、改正法が公布され、公布から1年以内に施行される事となります。
※令和5年6月16日に公布されました。(6/29追記)
(令和6年6月16日までには改正法が施行されます。)
その改正法により「建築副主事」が誕生します。
来年(令和6年度)に第一回目の資格試験が実施されます。
二級建築主事という名称
令和5年前半に、二級建築主事(仮)という名称で各建築雑誌などで紹介されていましたが建築副主事という名称に決定しました。
そもそも建築主事って何?

建築主事って役所や確認検査機関の確認済証をおろす人でしょ?
ほぼ正解ですが少し違います。
建築主事を知るには、まず建築基準適合判定資格者について解説しましょう。

法文を見てみよう
【建築基準法第5条】
(建築基準適合判定資格者検定)
第5条 建築基準適合判定資格者検定は、建築士の設計に係る建築物が第6条第1項の建築基準関係規定に適合するかどうかを判定するために必要な知識及び経験について行う。
2 建築基準適合判定資格者検定は、国土交通大臣が行う。
3 建築基準適合判定資格者検定は、一級建築士試験に合格した者で、建築行政又は第77 条の18第1項の確認検査の業務その他これに類する業務で政令で定めるものに関して、2年以上の実務の経験を有するものでなければ受けることができない。
4~8 略
建築基準法より引用
法5条の定める建築基準適合判定資格者検定の合格した建築基準適合判定資格者のうち確認、検査を行う者で
- 特定行政庁の職員→建築主事
- 確認検査機関の職員→確認検査員
と呼びます。
確認検査機関に建築主事は居ないんです。
確認検査員という名称はピンとこない方が多いみたいですね。

建築主事、確認検査員は建築基準関係規定に適合している事を
- 確認した場合に確認済証
- 検査した場合に検査済証
を交付することができます。
今回、新設される建築副主事、副確認検査員は2級建築士が設計、監理できる規模の建築物の確認、検査を行うことができるものです。
2025年問題の影響
なぜ小規模な建築物の確認、検査を行う制度、人材が必要なのか?
その理由の一つとして少子高齢化による人手不足があげられます。
1950年までに生まれたいわゆる団塊の世代が2025年には75歳以上(後期高齢者)となります。
特に建築主事、確認検査員などはベテランの方が多いので、その世代の引退、退職が相次ぎ現在、慢性的な人手不足、人材不足となっています。
法4条に記載されている様に人口25万人以上の市には必ず建築主事を置かなければなりません。
人口25万人未満の市町村は特定行政庁となっている場合もあれば、4号物件のみを管轄する限定特定行政庁となっている場合もあります。
また、現在確認申請の9割以上は民間の確認検査機関に申請されており、限定特定行政庁で実務経験として加算される部署に人員を配置するには限界があります。
そこで本改正により実務経験や受験要件のハードルを下げ、建築行政業務の担い手を増やし地方分権改革の促進を目的に改正が行われます。
建築確認上の2025年問題
2025年に予定されている建築基準法改正で四号建築物の範囲が縮小されます。
また、省エネ法の改正によりすべての建築物に省エネ基準適合が義務化されます。
それにより確認検査機関の業務量が今までより大幅に増加します。
物価高高騰の影響などもあり2025年までに現行手数料の2倍の手数料もあり得ると危惧されています。
今までと同じ件数を同じ人員でこなす事も困難となり、人員の増加が急がれます。
二級建築士の可能性が広がる?
今までは一級建築士で確認検査業務の実務経験2年以上であることが建築基準適合判定資格者検定の受験要件でした。
本改正により二級建築士が受験可能で実務経験に関しても制度が変わります。

来年度に第一回目の資格検定が行われます。
二級建築士のあなた!
あなたが建築副主事になるかもしれません。
早いうちに準備すれば先行者利益を得るチャンスをつかめるかもしれません。

建築副主事はこんな方におすすめです
- 二級建築士で一級の勉強中の方
- 市役所や確認検査機関に就職したい方
- 木造建築物に詳しい方
- 図面のチェックや細かい計算などが得意な方
確認検査機関への転職に興味がある方はこちらの記事をご覧ください。
二級建築基準適合判定資格者検定の日程が決定
国土交通省より2024年(令和6年)6月28日に二級建築基準適合判定資格者検定の第一回目の試験を実施予定との発表がありました。(7/23追記)
建築基準適合判定資格者検定ってどんな試験?
試験の名称が一級、二級建築基準適合判定資格者検定に変わります。
- 一級建築基準適合判定資格者検定 → 一級建築士が受験可能
- 二級建築基準適合判定資格者検定 → 一級建築士、二級建築士が受験可能
従来の試験の概要
試験は毎年8月末頃に実施されています。
受験手数料は3万円です(都道府県、市区町村の職員は無料です)
検定内容は考査A、考査Bがあります。
考査Aは法規の五肢択一の問題が17問(建築士の法規の学科試験の様な感じです)
考査Bは記述試験です。配置図、平面図、立面図、断面図、設計条件などを提示され、その計画が出題される規定(採光、高さ制限、防火区画など)に適合しているか、いないかを記述する試験です。
回答欄には適合しているか、していないか〇×で記載し、根拠条文を列記し、その理由を順序だてて記述します。設備、構造に関する出題もあります。

私が受験した時の感想は、記述問題の時間がとにかく足りないので、過去問の回答を何度も繰り返し書いて、書くスピードを上げる特訓をしました。
過去問で勉強
国土交通省のHPで過去問が公開されています。
しかし、考査Aの回答が載っていないのと考査Bの出題内容、回答が載っていないため、こちらの資料だけで勉強することは困難です。
外部リンク(国土交通省HP)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000028.html
テキストで勉強
一般財団法人建築行政情報センター(ICBA)が毎年発行するテキストがあり、そちらで勉強する必要があります。
過去5年の過去問が掲載されています。
そのテキストは一般財団法人建築行政情報センターでしか買えないため、会員でない方は一般会員に登録(無料)して購入する必要があります。
テキストだけだと4000円程度で、講習会付きだと14000円程度となっています。
外部リンク(ICBA HP)https://www2.icba.or.jp/products/list.php?product_id=9