防火規定

下地仕上不燃の緩和の告示989号を分かりやすく解説

にゃんぴー

※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

不燃材料告示(989号) 準不燃材料告示(988号)

悩むペンギン(ペン築士)

天井と壁の下地、仕上げを不燃材料とする規定を緩和できる告示が出来たって聞いたけど、どんな告示?

はい、令和7年11月1日の法改正に併せて出来た新設の告示ですね。

例えば、直上階又は直下階のみに通じる階段や吹抜けの竪穴区画は天井、壁の下地、仕上げを不燃材料とする事で竪穴区画が免除されます。

本告示(第989号)では天井、壁の仕上げの性能を上げる事で下地の性能は求めないという緩和です。(一部下地の仕様を求めるものある)

これを不燃材料告示(第989号)といいます。(準不燃材料告示(第988号)もあります。)

下地の性能を求めないという事で今まで適用できなかった木造建築物に適用できるメリットがあります。

今回の記事では不燃材料告示(第989号)、準不燃材料告示(第988号)が適用できる規定と具体的な仕様、施工にあたっての注意点などを解説していきます。

もぐら先生

まずは告示989号をチェック

告示を見てみよう

令和7年10月31日国土交通省告示第989号

壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ることその他これに準ずる措置の基準を定める件

建築基準法施行令第112条第9項及び第11項第一号並びに第123条第1項第二号及び第3項第四号に規定する壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ることその他これに準ずる措置の基準は、次の各号のいずれかに掲げるものとする。

一 仕上げを厚さが25mm以上のコンクリートですること。
二 仕上げを厚さが30mm以上のれんがですること。
三 仕上げを厚さが5mm以上の陶磁器質タイルでし、かつ、その下地を厚さが12mm以上の窯業系サイディングで造ること。
四 仕上げを繊維強化セメント板(日本産業規格(以下「JIS」という。)A5430(繊維強化セメント板)に規定する1.0けい酸カルシウム板又は0.8けい酸カルシウム板に適合する材料に限る。)を二枚以上張ったものでし、その厚さの合計を22mm以上とすること。
五 仕上げを厚さが35mm以上の繊維強化セメント板(JIS A5430(繊維強化セメント板)に規定する0.5けい酸カルシウム板に適合するものに限る。)ですること。
六 仕上げを厚さが25mm以上の繊維強化セメント板(JIS A5430(繊維強化セメント板)に規定する0.2けい酸カルシウム板に適合するものに限る。)ですること。
七 仕上げをガラス繊維混入セメント板を二枚以上張ったものでし、その厚さの合計を18mm以上とすること。
八 仕上げを厚さが25mm以上のモルタルですること。
九 仕上げを厚さが27mm以上のしっくいでし、かつ、その下地を平成12年建設省告示第1439号に規定する木材等又は難燃材料で造ること。
十 仕上げを厚さが30mm以上の片面塗り又は各面の厚さが25mm以上の両面塗りの壁土でし、かつ、下地を小舞下地で造ること。
十一 仕上げを厚さが21mm以上の強化せっこうボード(JIS A6901(せっこうボード製品)に規定する強化せっこうボードに適合するものに限る。)ですること。
十二 仕上げをせっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.6mm以下のものに限る。)を二枚以上張ったものでし、その厚さの合計を21mm以上とすること。

準不燃バージョンは告示988号

準不燃バージョン(告示988号)も同日に施行されました。

下地、仕上げを準不燃とする規定はそれほど多くありませんが、分かりやすくするため以下からは、不燃材料告示、準不燃材料告示を表で対比しながら解説していきます。

どういう告示なの?

壁及び天井の室内に面する仕上を不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ることにより免除できる規定があります。

例えば、竪穴区画の直上階、直下階にのみ通ずる階段、吹抜けなどがある場合、その階段、吹抜けに面する壁、天井の下地、仕上げを不燃材料にする事で、その部分は竪穴区画が免除されます。

これが従来の規定でしたが、令和7年10月31日に施行された不燃材料告示(第989号)を適用すると、仕上げの材料の防火性能を強化する事で下地に関する要件が不要となります。(一部下地の仕様を求める場合もある)

この改正による最大のメリットは、今までは下地が木で造られている木造建築物には適用できませんでしたが、本告示を適用すれば木造建築物でもそれらの規定を適用する事が可能となります。

それでは、この告示が具体的にどのような規定に適用できるのか、次に紹介していきます。

下地、仕上げを不燃材料とする規定とは?

『壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること』が必要な規定は下記の通りです。

下地、仕上げを不燃とする規定下地、仕上げを準不燃とする規定
・令第112条第9項(高層区画を100㎡から500㎡に
する緩和)

・令第112条第11項第一号(竪穴区画の直上階、直下階にのみ通ずる階段等の緩和)
・令第123条第1項第二号(屋内避難階段の階段室の構造)
・令第123条第3項第四号(特別避難階段の階段室の構造)
・告示1436号3-ヘ-(5)(居室の排煙の免除)
・令第112条第8項(高層区画を100㎡から200㎡にする緩和)
・令第112条第14項第一号(竪穴区画の免除規定(劇場等))

壁、天井の下地、仕上げを容易に不燃材料とする事ができる鉄骨造、鉄筋コンクリート造に本告示適用のメリットは少ない為、高層区画や避難階段に適用されるケースは少ないかと思います。

木造建築物での竪穴区画、排煙告示への適用がメインになるかと思います。

もぐら先生

下地、仕上げを不燃材料で造ることその他これに準ずる措置の基準とは?

前の表で示した各法文に『下地、仕上げを不燃材料で造ることその他これに準ずる措置の基準』という記述が追加されました。

これに準ずる基準というのが本告示989号、988号を示します。

不燃材料告示(989号)、準不燃材料告示(988号)の具体的な内容は以下の通りです。

 不燃材料告示(989号)準不燃材料告示(988号)
 仕上の材料
(下地の材料)
厚み
(下地の厚み)
仕上の材料
(下地の材料)
厚み
(下地の厚み)
1コンクリート25mm以上コンクリート25mm以上
2れんが30mm以上れんが30mm以上
3陶磁器質タイル
(窯業系サイディング)
5mm以上
(12mm以上)
陶磁器質タイル
(窯業系サイディング)
5mm以上
(12mm以上)
4JIS A5430 繊維強化セメント板に規定する1.0けい酸カルシウム板又は0.8けい酸カルシウム板2枚張りで22mm以上JIS A5430 繊維強化セメント板に規定する1.0けい酸カルシウム板又は0.8けい酸カルシウム板2枚張りで22mm以上
5JIS A5430 繊維強化セメント板に規定する0.5けい酸カルシウム板35mm以上JIS A5430 繊維強化セメント板に規定する0.5けい酸カルシウム板35mm以上
6JIS A5430 繊維強化セメント板に規定する0.2けい酸カルシウム板25mm以上JIS A5430 繊維強化セメント板に規定する0.2けい酸カルシウム板25mm以上
7ガラス繊維混入セメント板2枚張りで18mm以上ガラス繊維混入セメント板2枚張りで18mm以上
8モルタル25mm以上モルタル25mm以上
9しっくい
(平成12年建設省告示第1439号に規定する木材等又は難燃材料)
27mm以上しっくい
(平成12年建設省告示第1439号に規定する木材等又は難燃材料)
27mm以上
10壁土
(小舞下地)
片面塗り30mm以上
両面塗り25mm以上
壁土
(小舞下地)
片面塗り30mm以上
両面塗り25mm以上
11JIS A6901 強化せっこうボード21mm以上JIS A6901 強化せっこうボード21mm以上
12せっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.6mm以下のものに限る。)2枚張りで21mm以上せっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.6mm以下のものに限る。)2枚張りで21mm以上
13普通木毛セメント版2枚張りで30mm以上
14中質木毛セメント版2枚張りで30mm以上
15硬質木毛セメント版(かさ比重が0.9以上のものに限る)25mm以上
※カッコ内は下地をその構造で造るもの

不燃材料告示(989号)と準不燃材料告示(988号)は1~12号は全く同じ内容です。

準不燃告示には13~15号の仕様が追加で3項目あります。

もぐら先生

適用にあたっての注意点

適用にあたっての施工上の注意点がいくつかありますので以下より解説していきます。

もぐら先生

告示989号、988号の仕上の上に壁紙等を施工する場合

 当該仕上の上に壁紙等の材料を施工する場合、当該仕様に準じた材料の壁紙等を施工する必要があります。

  • 不燃材料告示 告示989号の上に壁紙等を施工する場合は不燃材料の壁紙等とする事。
  • 準不燃材料告示 告示988号の上に壁紙等を施工する場合は準不燃材料以上の壁紙等とする事。

仕上は隙間なく施工する

不燃材料告示(989号)、準不燃材料告示(988号)では、従来下地、仕上げを不燃材料又は準不燃材料ですることで確保していた性能について、仕上げのみで同じ性能を確保しようとするものです。

よって施工にあたっては仕上げの性能を損なわないよう、火炎の貫通を防ぐため、仕上げは隙間なく施工する必要があります。

仕上にコンセントボックスなどの切り欠きを設ける場合

コンセントボックス、照明器具、配管等により仕上げに切り欠きを設ける場合は、鋼製のコンセントボックス等を用い、当該器具の裏面の厚さ30mm以上の不燃性断熱材(密度24kg/㎥以上のロックウール又はグラスウール)で被覆する。

壁内に可燃性断熱材を充填する場合

壁内に可燃性断熱材を充填する場合には、留付け金物等が可燃性断熱材への熱橋となる事を防ぐため、仕上げの留付け金物等が下地を貫通して可燃性断熱材に達しないように留付ける。

まとめ

  • 不燃材料告示(989号)、準不燃告示(988号)が令和7年10月31日に施行された。
  • 仕上げの材料の防火性能を強化する事で下地に関する要件が不要となる。(一部下地の仕様を求める場合もある)
  • これにより木造建築物にも適用可能となる。
  • 下地、仕上げを不燃とする規定
    • 令第112条第9項(高層区画を100㎡から500㎡にする緩和)
    • 令第112条第11項第一号(竪穴区画の直上階、直下階にのみ通ずる階段等の緩和)
    • 令第123条第1項第二号(屋内避難階段の階段室の構造)
    • 令第123条第3項第四号(特別避難階段の階段室の構造)
    • 告示1436号3-ヘ-(5)(居室の排煙の免除)
  • 下地、仕上げを準不燃とする規定
    • 令第112条第8項(高層区画を100㎡から200㎡にする緩和)
    • 令第112条第14項第一号(竪穴区画の免除規定(劇場等))
  • 下地、仕上げを不燃材料で造ることその他これに準ずる措置の基準
    • 強化石膏ボード 21mm以上
    • 石膏ボード 2枚張りで合計21mm以上 など
  • 仕上げの上に壁紙等を施工する場合は不燃の場合は不燃壁紙、準不燃の場合は準不燃以上の壁紙とする。
  • 仕上げは隙間なく施工する。
  • コンセントボックス等の切り欠きには、鋼製のコンセントボックス等を用い、当該器具の裏面の厚さ30mm以上の不燃性断熱材(密度24kg/㎥以上のロックウール又はグラスウール)で被覆する。
  • 留付け金物等が可燃性断熱材への熱橋となる事を防ぐため、仕上げの留付け金物等が下地を貫通して可燃性断熱材に達しないように留付ける。

本記事の作成にあたり参考にした条文、書籍等

  • 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でし、かつ、その下地を準不燃材料で造ることその他これに準ずる措置の基準を定める件(令和7年国土交通省告示第988号)
  • 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ることその他これに準ずる措置の基準を定める件(令和7年国土交通省告示第989号)
  • 建築基準法施行令の一部を改正する政令等の施行について(技術的助言)(令和7年10月31日 国住指第322号)

-防火規定