今回の記事は『採光補正係数』です。
採光補正係数の計算にはいろいろなルールがあり複雑です。
基本の計算方法、天窓、縁側、ガラス庇、公園、広場、川などの緩和、1.0になる条件など
条文に則り順番に図解付きでわかりやすく解説していきます。
また、特殊な条件での注意点(斜めの隣地境界線、2種類ある場合は厳しい方を採用、2以上の用途地域にまたがる場合)などもまとめましたので是非最後までご覧ください。

まずは採光補正係数に関わる規定(令第20条)をチェック
法文を見てみよう
建築基準法施行令
(有効面積の算定方法)
第20 条 法第28 条第1項に規定する居室の窓その他の開口部(以下この条において「開口部」という。)で採光に有効な部分の面積は、当該居室の開口部ごとの面積に、それぞれ採光補正係数を乗じて得た面積を合計して算定するものとする。ただし、国土交通大臣が別に算定方法を定めた建築物の開口部については、その算定方法によることができる。
2 前項の採光補正係数は、次の各号に掲げる地域又は区域の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるところにより計算した数値(天窓にあっては当該数値に3.0 を乗じて得た数値、その外側に幅90㎝以上の縁側(ぬれ縁を除く。)その他これに類するものがある開口部にあっては当該数値に0.7 を乗じて得た数値)とする。ただし、採光補正係数が3.0 を超えるときは、3.0 を限度とする。
一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域又は田園住居地域
隣地境界線(法第86 条第10 項に規定する公告対象区域(以下「公告対象区域」という。)内の建築物にあっては、当該公告対象区域内の他の法第86 条の2第1項に規定する一敷地内認定建築物(同条第9項の規定により一敷地内認定建築物とみなされるものを含む。以下この号において「一敷地内認定建築物」という。)又は同条第3項に規定する一敷地内許可建築物(同条第11 項又は第12項の規定により一敷地内許可建築物とみなされるものを含む。以下この号において「一敷地内許可建築物」という。)との隣地境界線を除く。以下この号において同じ。)又は同一敷地内の他の建築物(公告対象区域内の建築物にあっては、当該公告対象区域内の他の一敷地内認定建築物又は一敷地内許可建築物を含む。以下この号において同じ。)若しくは当該建築物の他の部分に面する開口部の部分で、その開口部の直上にある建築物の各部分(開口部の直上垂直面から後退し、又は突出する部分がある場合においては、その部分を含み、半透明のひさしその他採光上支障のないひさしがある場合においては、これを除くものとする。)からその部分の面する隣地境界線(開口部が、道(都市計画区域又は準都市計画区域内においては、法第42 条に規定する道路をいう。第144 条の4を除き、以下同じ。)に面する場合にあっては当該道の反対側の境界線とし、公園、広場、川その他これらに類する空地又は水面に面する場合にあっては当該公園、広場、川その他これらに類する空地又は水面の幅の1/2だけ隣地境界線の外側にある線とする。)又は同一敷地内の他の建築物若しくは当該建築物の他の部分の対向部までの水平距離(以下この項において「水平距離」という。)を、その部分から開口部の中心までの垂直距離で除した数値のうちの最も小さい数値(以下「採光関係比率」という。)に6.0 を乗じた数値から1.4 を減じて得た算定値(次のイからハまでに掲げる場合にあっては、それぞれイからハまでに定める数値)
↑ ※文章が長いのでカッコ書きは青文字にしています
イ 開口部が道に面する場合であって、当該算定値が1.0 未満となる場合 1.0
ロ 開口部が道に面しない場合であって、水平距離が7m以上であり、かつ、当該算定値が1.0 未満となる場合 1.0
ハ 開口部が道に面しない場合であって、水平距離が7m未満であり、かつ、当該算定値が負数となる場合 0
二 準工業地域、工業地域又は工業専用地域採光関係比率に8.0 を乗じた数値から1.0を減じて得た算定値(次のイからハまでに掲げる場合にあっては、それぞれイからハまでに定める数値)
イ 開口部が道に面する場合であって、当該算定値が1.0 未満となる場合 1.0
ロ 開口部が道に面しない場合であって、水平距離が5m以上であり、かつ、当該算定値が1.0 未満となる場合 1.0
ハ 開口部が道に面しない場合であって、水平距離が5m未満であり、かつ、当該算定値が負数となる場合 0三 近隣商業地域、商業地域又は用途地域の指定のない区域
採光関係比率に10 を乗じた数値から1.0 を減じて得た算定値(次のイからハまでに掲げる場合にあっては、それぞれイからハまでに定める数値)
イ 開口部が道に面する場合であって、当該算定値が1.0 未満となる場合 1.0
ロ 開口部が道に面しない場合であって、水平距離が4m以上であり、かつ、当該算定値が1.0 未満となる場合 1.0
ハ 開口部が道に面しない場合であって、水平距離が4m未満であり、かつ、当該算定値が負数となる場合 0
採光補正係数とは?
採光補正係数とは、建築物の各居室にある窓が、どれくらい外の光を取り込めるかを判断するための係数です。
建築基準法では、居室には十分な自然光を入れる必要がありますが、窓の大きさだけでなく、窓の前にどれくらい空間があるか、周りに建物などの障害物があるかによって、光の入り方は大きく変わります。
たとえば、同じ大きさの窓でも、広い庭に面している窓と、すぐ前に高い壁がある窓では、部屋の明るさがまったく違います。
そこで、この窓はどれくらい光を取り込めるか、を判断するために使うのが採光補正係数です。
この係数は、窓の前の空間の広さ(水平距離D)と、遮るものの高さ(垂直距離H)を比べて計算します。
D/Hの関係を『採光関係比率』といいます。
さらに、建築物が建っている用途地域(住宅系・工業系・商業系など)によっても計算方法が変わります。
用途地域と計算式の関係は以下の通りです。
| 用途地域 | 計算式 | 窓から隣地境界線等までの距離 |
|---|---|---|
| 住居系 | (D/H)×6-1.4 | 7m |
| 工業系 | (D/H)×8-1.0 | 5m |
| 商業系、用途地域の指定がない区域 | (D/H)×10-1.0 | 4m |
- D(水平距離):窓から隣地境界線や他建築物までの距離
- H(垂直距離):窓の中心から直上の障害物までの高さ
- 上限は 3.0(3.0を超える場合は3.0とみなす)
- 下限は 0.0(マイナス値は0.0とみなす)
- Dの値が一定以上である場合、道路に面する窓の場合には、1.0未満になった場合においても、1.0とみなす
設計をする際には居室の大きさ、窓の大きさ、用途地域があらかじめ分かっていれば逆算で採光関係比率をどれくらい確保すれば採光の規定を適合させられるか求める事もできます。

採光補正係数の計算方法とルール
例えば、商業地域にある建物で、D = 1.5m、H = 3.0m の場合
採光関係比率 D/H = 0.5
採光補正係数 = 0.5 × 10 − 1 = 4.0 → 上限3.0に補正
この係数を窓面積に掛けることで、有効採光面積が算定されます。
採光補正形数を計算する上では下記の様なルールがあります。
注意点とともに条文の順に解説していきます。

天窓の採光補正係数は3.0?(令第20条第2項カッコ書き1)
令第20条第2項のカッコ書きに天窓の採光補正係数は3.0とするとあります。
原則は3.0となりますが、下記の様な場合、必ずしも3.0になる訳ではありませんので注意が必要です。

天窓の上部に建築物の他の部分がある場合、上図の様にDとHで採光補正係数を計算します。

縁側の採光補正係数は0.7掛け(令第20条第2項カッコ書き2)
縁側を介して居室を設ける場合、採光補正係数は0.7がけとします。
例えば採光補正係数が計算により3.0となった場合、3.0×0.7=2.1で、採光補正係数は2.1となります。
屋外に開放されたぬれ縁は対象外です。
縁側の幅は90cm以上となっていますが、あまりに広い場合(一般的には2m以上など)には採光補正係数は0となります。
その場合には縁側の0.7がけではなく、2室1室の採光計算を行う必要があります。

採光補正係数の上限は3.0(令第20条第2項ただし書き)
採光補正係数は下表の通りD/Hに用途地域による係数で計算しますが、計算結果が3.0を超えた場合には上限は3.0とします。
| 用途地域 | 計算式 |
|---|---|
| 住居系 | (D/H)×6-1.4 |
| 工業系 | (D/H)×8-1.0 |
| 商業系、用途地域の指定がない区域 | (D/H)×10-1.0 |
採光補正係数の上限は3.0です。

半透明な庇等の緩和(令第20条第2項一号カッコ書き1)
採光のさまたげにならない半透明な庇等については、無いものとみなしH、Dを算定します。
半透明な庇等とはガラスの庇などを示します。
例えば下図の様に最上階のバルコニーの庇がガラスの庇の場合、通常HはH1の高さで算定しますが、ガラスの庇は無いものとみなされるのでH2の高さとする事ができます。

公園、広場、川等の緩和(令第20条第2項一号カッコ書き2)
隣地境界線の対面側に公園、広場、川などがある場合、公園、広場、川などの幅員の1/2をDの値に加える事ができます。

窓が道路に面する場合の採光補正係数は1.0(令第20条第2項一号イ)
居室の窓が道路に面して設けられている場合、採光補正係数の計算結果が1.0未満であっても1.0とする事ができます。
つまり、採光補正係数が1.0で成り立つ場合は、採光補正係数の計算を省略することができます。
1.0以上としたい場合は採光補正係数の計算を行う必要があります。
窓が道路に面しているの場合、採光補正係数は3.0でよいと勘違いする方が多くいますがそれは間違いです。
採光補正係数の計算を省略するのであれば採光補正係数は1.0として下さい。
1.0以上としたい場合は下図のHとDを使い採光補正係数の計算を行う必要があります。


Dの距離が一定以上ある場合の採光補正係数は1.0(令第20条第2項一号ロ)
窓から隣地境界線や建築物の他の部分までの距離が一定以上確保されている場合には、採光補正係数の計算結果が1.0未満であっても、道路に面している場合と同様に、採光補正係数を1.0として扱うことができます。
この取り扱いは、高層共同住宅の下層階などにおいて、建物高さ(H)が極端に大きくなり、採光補正係数が0.0と算出されてしまうケースに有効です。
隣地境界線から十分な距離を確保することで、採光補正係数を1.0として認められるため、採光上の不利を緩和することが可能です。
窓から隣地境界線等までの距離は用途地域によって以下の通りです。
| 用途地域 | 窓から隣地境界線等までの距離 |
|---|---|
| 住居系 | 7m |
| 工業系 | 5m |
| 商業系、用途地域の指定がない区域 | 4m |

計算結果が負数となった場合の採光補正係数は0.0(採光の窓としては無効)(令第20条第2項一号ハ)
採光補正係数の計算結果がマイナスの値になった場合は、採光補正係数は0.0となります。
どんなに大きな窓を設けたとしても0を掛ければ0になってしまいますので、その窓は採光上無効という事になります。
住宅の居室などには必ず採光上有効な窓を設ける必要がありますので0.0にならない様、工夫が求められます。
特殊な条件での注意点
以下のような特殊な条件では、下記の通り注意が必要です。
斜めの境界線、斜めの屋根
窓が隣地境界線に対して水平距離が一律でない(平行でない)場合、垂直距離が平行でない場合は窓の中心での距離を採用します。
窓の中心をとる事で自然と平均値を求める事ができます。
また、隣地境界線がクランクしていて一つの窓で隣地境界線までの距離が異なる場合には範囲を分け計算を行います。
確認申請MEMO より引用
DとHが2種類ある場合は厳しい方を採用
建物上部に段差がある場合、採光補正係数が2種類出てきます。
その場合は下図に示されるようD1/H1とD2/H2の厳しい方(小さい方)が採用されます。

2以上の用途地域にまたがる場合は過半の用途地域の係数
2以上の用途地域にまたがる場合は過半の用途地域の係数が採用されます。
下図の様に商業地域内にある窓でも住居系(D/H×6-1.4)が採用されますので注意が必要です。
目からウロコの確認申請 より引用
採光補正係数の規定(令第20条)の法改正遍歴について
採光補正係数の規定(令20条)が施行されたのは昭和25年11月23日です。
その後昭和34年、昭和46年、昭和50年、平成5年、平成11年、平成12年、平成13年、平成15年、平成17年などに改正が行われ現行の法文になっています。
重要な部分だけピックアップして紹介します。
平成12年6月1日施行
この年に採光補正係数という考え方が生まれ、
現在のD/H×6-1.4(住居系)などといった計算方法になりました。
これ以前は採光関係比率が4/10以上(住居系)となる事という規定のみでした。
法改正遍歴、既存不適格を調べるには建築確認申請 条文改正経過スーパーチェックシート 第5版が非常に役立ちます。
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まとめ
- 採光補正係数とは、建築物の各居室にある窓が、どれくらい外の光を取り込めるかを判断するための係数
- 建築物が建っている用途地域(住宅系・工業系・商業系など)によっても計算方法が変わる
- 住居系 (G/H)×6-1.4
- 工業系 (G/H)×8-1.0
- 商業系、指定なし (G/H)×10-1.0
- 天窓は原則は3.0だが、必ずしも3.0になる訳ではない
- 縁側を介して居室を設ける場合、採光補正係数は0.7がけとする
- 計算結果が3.0を超えた場合には上限は3.0とする
- 採光に影響のないガラス庇等は無いものとみなしD、Hを算定する
- 公園、広場、川などの幅員の1/2をDの値に加える事ができる
- 窓が道路に面している場合、採光補正係数の計算結果が1.0未満であっても1.0とする事ができる
- 窓と隣地境界線までの距離が一定以上ある場合、採光補正係数の計算結果が1.0未満であっても1.0とする事ができる
- 住居系 7m
- 工業系 5m
- 商業系、指定なし 4m
- 計算結果がマイナスの値になった場合は、採光補正係数は0.0となる
- 隣地境界線や屋根形状が斜めの場合、窓の中心でD、Hを算定する
- 採光補正係数が2種類存在する場合は厳しい方を採用する
- 2以上の用途地域にまたがる場合は過半の用途地域の係数を採用する
本記事の作成にあたり参考にした条文、書籍等
- 建築基準法施行令第20条 (有効面積の算定方法)
- 建築申請memo2025
- 建築基準法 目からウロコの確認申請 2025年法改正対応版
- 建築確認申請 条文改正経過スーパーチェックシート 第5版



