
今回の記事はにゃんぴーのおすすめ書籍
『建築物の防火避難規定の解説』を紹介します。
この書籍はわたしにとって確認審査をする際に絶対に必要な参考書です。
建築基準法には具体的に示されていない判断に迷う事例が多くあります。
『建築物の防火避難規定の解説』は全国の特定行政庁、指定確認検査機関などが共通の取扱いをまとめて分かりやすく解説されている書籍です。
当ブログも本書を根拠として法的な解説を行っています。
この記事では、なぜこの書籍が必要なのか?詳しくご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
令和7年5月31日に新刊『建築物の防火避難規定の解説 2025』が発売!
なぜ『建築物の防火避難規定の解説』が必要なのか?
これ聞いたことありますか?
- 防火上主要な間仕切壁は3室以下かつ100㎡以下
- 避難上有効なバルコニーは2㎡以上
- 敷地内通路はピロティ状通路を通る事ができる

どれも建築の仕事をされている方なら聞いた事がありますよね。
でもこれ、実は建築基準法の条文には一切記載されていません。
これらの取扱いが記載されているのが『建築物の防火避難規定の解説』です。
みなさんが日常的に使われている取扱いの根拠がこの書籍なのです。
編集元の日本建築行政会議とは?
まずは『建築物の防火避難規定の解説』の編集を行っている日本建築行政会議とはどういった団体なのかを紹介します。
日本建築行政会議(JCBA)は、特定行政庁や指定確認検査機関など、建築行政や確認検査業務を担当する団体が集まり、情報交換や共同作業を通じて建築物の安全性向上を目指す団体です。
元々は日本建築主事会議という、全国の建築主事が集まり、建築基準法の解釈や運用について議論を行う団体でした。
平成10年の法改正により確認検査業務が民間開放され、平成13年には指定確認検査機関も加わり現在の日本建築行政会議へと発展しました。

わたしたち、指定確認検査機関の職員も日本建築行政会議主催の会議や総会に出て建築行政の最新動向や制度の運用について意見交換を行っています。
また、定期的に建築基準法の解釈にかかわるアンケート等が実施され、全国の特定行政庁・指定確認検査機関の統一見解が整理されています。
それらの内容を編集し書籍化されたのが『建築物の防火避難規定の解説』です。
その他にも日本建築行政会議が編集している書籍が数多くあります。
- 建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 2022年度版
- 建築構造審査検査要領 確認審査等に関する指針 運用解説編 2011年版
- 2019年版 建築設備設計 施工上の運用指針
- バリアフリー法逐条解説(建築物)(外部リンク 日本建築行政会議HP)

どれも審査を行う際、お世話になっている書籍ばかりです。
掲載されている内容(目次抜粋)
『建築物の防火避難規定の解説』に掲載されているのは大まかに以下の内容です。
[法第2条] 用語の定義
居室/延焼のおそれのある部分/耐火構造/準耐火構造/防火構造/耐火建築物/防火設備/準耐火建築物[法第27条] 耐火建築物等
耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない特殊建築物[法第34条] 昇降機
非常用の昇降機[法第35条] 避難施設
窓その他の開口部を有しない居室/適用の範囲/廊下の幅/直通階段の設置/2以上の直通階段を設ける場合/避難階段の設置/避難階段及び特別避難階段の構造/共同住宅の住戸の床面積の算定等/物品販売業を営む店舗における避難階段等の幅/屋外への出口/屋外への出口等の施錠装置の構造等/屋上広場等[法第35条] 排煙設備
排煙設備の設置/排煙設備の適用除外部分/防煙区画/防煙壁/自然排煙口及び手動開放装置/排煙告示[法第35条] 非常用の照明装置
非常用の照明装置の設置を要する部分/非常用の照明設備の設置不要部分/非常用の照明装置告示[法第35条] 非常用の進入口
非常用の進入口の設置/非常用の進入口の配置及び構造[法第35条] 敷地内の通路
敷地内の通路[法第35条の2] 避難上の安全検証法
避難上の安全の検証[法第35条の2] 内装制限
特殊建築物等の内装[法第36条] 階段
階段[法第36条] 防火区画
面積区画/竪穴区画/異種用途区画/常時閉鎖式防火戸/防火区画[法第36条] 界壁等
長屋又は共同住宅の各戸の界壁/学校、病院等における防火上主要な間仕切壁[法第61条] 準防火地域内の建築物
地階を除く階数が3である建築物の技術的基準[法第84条の2] 簡易な構造の建築物に対する制限の緩和
簡易な構造の建築物[参考] 準防火地域内の建築物
建築物の防火避難規定の解説 目次より抜粋
[関連告示・参考(旧通達・技術的助言)等]
ひとつ事例を紹介
ひとつ具体的な事例を紹介します。
防火上主要な間仕切りについてです。
建築基準法では以下の通り記載されています。
建築基準法法令集 2025年版(令和7年版)より抜粋法文を見てみよう
建築基準法施行令
(建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁)
第114 条 第1項 略
2 学校、病院、診療所(患者の収容施設を有しないものを除く。)、児童福祉施設等、ホテル、旅館、下宿、寄宿舎又はマーケットの用途に供する建築物の当該用途に供する部分については、その防火上主要な間仕切壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の間仕切壁を除く。)を準耐火構造とし、第112 条第4項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。
令114条の中では一定の用途の建築物には、準耐火構造の防火上主要な間仕切壁を小屋裏、天井裏に達せしめるよう設置する事が記載されています。
しかし、この条文だけではその防火上主要な間仕切壁はどの部分に設けるべきなのかは記載されておらず判断に迷ってしまいます。
『建築物の防火避難規定の解説』ではこのように示されています。
建築物の防火避難規定の解説より引用
- 学校にあっては教室相互間を区画する壁、教室と避難経路を区画する壁(パーテーションは除く)
- 病院・診療所等は病室・就寝室間を3室以下かつ100㎡以内で区画、病室・就寝室と避難経路を区画する壁
- マーケットは店舗相互間の重要な壁
- 用途に限らず火気使用室は他の部分と区画する壁
この様に建築基準法の条文だけでは判断できない具体的な取扱いが示されています。
確認申請の際には審査する側もこれらの基準を求めてきますので、申請者側もそれに対応する必要があります。
『建築物の防火避難規定の解説』の重要性
このように『建築物の防火避難規定の解説』の重要性がお分かりいただけたかと思います。
まとめ
- 設計者、施工者、審査機関、建築士試験の受験者にも必須の一冊
- 建築基準法に示されていない取り扱いが数多く掲載されている
- 全国の特定行政庁、指定確認検査機関の統一見解となっており、実践的な知識が得られる
- 行政や審査機関とのやり取りが円滑になる
- 令和7年5月31日に新刊の2025年版が発売

令和7年5月31日に新刊の2025年版が発売されました。
この機会にぜひ購入を検討してみて下さい。
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