確認申請書の書式が変わる理由
令和4年6月17日に公布された『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』により2024年(令和6年)4月1日に第二段回目の建築基準法の改正が行われました。
それに伴い確認申請書第四面5欄、6欄の書式に変更が行われました。
また、一定の規定を適用する場合、四面19欄に記載する項目が増えました。
法改正については下記の記事をご覧ください。
確認申請書がどう変わる?
確認申請書 第四面 5欄
耐火構造の項目が
- 防火上及び避難上支障がない主要構造部を有しない場合
- 防火上及び避難上支障がない主要構造部を有する場合
とで分類されました。
また、令108条の3が新設されたため条ズレにより、令第108条の3が令第108条の4に変わりました。
内容は変わらず耐火性能検証法の規定です。
確認申請書 第四面 6欄
令第109条の7第1項第1号二掲げる基準に適合する構造 の項目が追加されました。
防火上及び避難上支障がない主要構造部を有しない場合、有する場合って何?
防火上及び避難上支障がない主要構造部を有しない場合、有する場合・・・
初めて聞く言葉ですよね。
これは令和6年4月1日の法改正により追加された新たな部分を指します。
改正法の法文を見てみましょう。
令和6年4月1日施行の令108条の3を見てみよう
建築基準法施行令
(主要構造部のうち防火上及び避難上支障がない部分)
令108条の3 法第2条第九号の二イの政令で定める部分は、主要構造部のうち、次の各号のいずれにも該当する部分とする。
一 当該部分が、床、壁又は第109条に規定する防火設備(当該部分において通常の火災が発生した場合に建築物の他の部分又は周囲への延焼を有効に防止できるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)で区画されたものであること。
二 当該部分が避難の用に供する廊下その他の通路の一部となっている場合にあっては、通常の火災時において、建築物に存する者の全てが当該通路を経由しないで地上までの避難を終了することができるものであること。
建築基準法法令集 2025年版(令和7年版)より抜粋
新設される令108条の3のタイトルに『主要構造部のうち防火上及び避難上支障がない部分』という言葉が出てきましたね。
これを有する、有しないを申請書に記載する訳です。
ただ、法文を見ても何だかよくわからないですよね。
ここからはイラストを見ながら解説していきます。
耐火建築物の一部を木造とする事が可能に(令108条の3)
国土交通省 改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する説明動画 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について より引用
耐火建築物は主要構造部のすべてを耐火構造とする必要がありましたが、改正法により一定の条件を元に一部木造(耐火構造でない構造)とする事が可能になりました。
この様な部分を持つ耐火建築物の全体像を見ると下記の図の通りです。
『損傷を許容する主要構造部』と『特定主要構造部』
上のイラストの様に建物全体で見ると
- 損傷を許容しない主要構造部(特定主要構造部という)
- 損傷を許容する主要構造部
に分かれ、損傷を許容する主要構造部の周囲は強化防火区画を行う事になります。
建物の一部分に損傷が起きても建物全体として耐火建築物の性能が保たれれば良いという考え方ですね。
こういった部分がある場合に確認申請書第四面5欄の『耐火構造(防火上及び避難上支障がない主要構造部を有する場合)』にチェックが入ります。
当該法改正を活用する機会は中々少ないと思いますので通常は一番上の
耐火構造(防火上及び避難上支障がない主要構造部を有しない場合)にチェックしておけばOKです。
確認申請書 第四面 19欄にも記載が必要に
特に書式に変更はありませんが、確認申請書の注意事項に下記のような事項が追加されました。
燃えしろ設計や加熱遮断壁等が使用されている場合にはその旨を確認申請書第四面19欄に記載する必要があります。
燃えしろ設計とは?
木材は燃焼時に表面から燃え進み、中心部は一定時間強度を保つため、表面の火災で燃焼する燃えしろ分だけ柱、梁、壁の断面を大きくして、準耐火構造と同じ耐火性能を確保する設計方法を燃えしろ設計という。
火熱遮断壁等とは?(令109条の8)
国土交通省 改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する説明動画 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について より引用
令和6年4月1日の法改正により高層部分と低層部分を別棟と扱い、個々に耐火建築物、準耐火建築物などの種別を用途、規模等に応じ設定することが可能になりました。
これを区画する部分を火熱遮断壁等と言います。
火熱遮断壁等がある場合は確認申請書四面19欄にその旨を記載し、各棟の法21条、27条、61条などの適用の有無を記載します。
記載例
あくまで一例ですので正しい書き方は申請先にお問合せください。
いつから新書式とする必要がある?
これらの新書式は確認申請の本受付が令和6年4月1日以降になる場合に適用されます。
確認済証交付日や着工日では無いのでご注意ください。
まとめ
- 令和6年(2024年)4月1日の法改正に伴い確認申請書第四面の書式が変わる。
- 第四面5欄の耐火構造の項目に防火上及び避難上支障がない主要構造部を有しない場合、有する場合が分類される。
- 第四面6欄の令第109条の7第1項第1号二掲げる基準に適合する構造 の項目が追加される。
- 強化防火区画された損傷を許容する主要構造部を有する場合、耐火構造(防火上及び避難上支障がない主要構造部を有する場合)にチェックする。
- 四面19欄には燃えしろ設計、火熱遮断壁等がある場合に記載する。
- 確認申請の本受付が2024年4月1日以降になる場合に適用される。