防火規定

『面積区画』とは?面積区画の基本事項(1500㎡、1000㎡、500㎡の違い)から緩和規定や法改正遍歴などを法文を見ながらわかりやすく解説

にゃんぴー

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面積区画

面積区画とは?

面積区画は一定の面積ごとに区画を設け、火災を局所的なものに留めることを目的とする防火区画です。

面積区画には建築物の耐火種別により1500㎡区画、1000㎡区画、500㎡区画の3種類があります。

また、スプリンクラー設備等を設けると設置部分の1/2を区画面積から除外できます。

今回の記事では面積区画の基本事項から除外規定、法改正遍歴など法文を見ながら解説していきます。

令112条の法文をチェック

法文を見てみよう

建築基準法施行令

(防火区画)

第112 条 主要構造部を耐火構造とした建築物、法第2条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当する建築物又は第136 条の2第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物で、延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の1/2に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)が1,500㎡を超えるものは、床面積の合計(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の1/2に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)1,500㎡以内ごとに1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第109条に規定する防火設備であって、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ない場合においては、この限りでない。

 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客席、体育館、工場その他これらに類する用途に供する建築物の部分

 階段室の部分等(階段室の部分又は昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)をいう。第14 項において同じ。)で1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたもの

前項の「1時間準耐火基準」とは、主要構造部である壁、柱、床、はり及び屋根の軒裏の構造が、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであることとする。

 次の表に掲げる建築物の部分にあっては、当該部分に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後それぞれ同表に定める時間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。

間仕切壁(耐力壁に限る。)1時間
外壁(耐力壁に限る。)1時間
1時間
1時間
はり1時間

 壁(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分を除く。)、床及び屋根の軒裏(外壁によって小屋裏又は天井裏と防火上有効に遮られているものを除き、延焼のおそれのある部分に限る。)にあっては、これらに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。

 外壁(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分を除く。)にあっては、これに屋内において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものであること。

主要構造部を耐火構造とした建築物の2以上の部分が当該建築物の吹抜きとなっている部分その他の一定の規模以上の空間が確保されている部分(以下この項において「空間部分」という。)に接する場合において、当該2以上の部分の構造が通常の火災時において相互に火熱による防火上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、当該2以上の部分と当該空間部分とが特定防火設備で区画されているものとみなして、第1項の規定を適用する。

法第21 条第1項の規定により第109 条の5第一号に掲げる基準に適合する建築物(通常火災終了時間が1時間以上であるものを除く。)とした建築物、法第27 条第1項の規定により第110 条第一号に掲げる基準に適合する特殊建築物(特定避難時間が1時間以上であるものを除く。)とした建築物、法第27 条第3項の規定により準耐火建築物(第109 条の3第二号に掲げる基準又は1時間準耐火基準(第2項に規定する1時間準耐火基準をいう。以下同じ。)に適合するものを除く。)とした建築物、法第61 条の規定により第136 条の2第二号に定める基準に適合する建築物(準防火地域内にあるものに限り、第109 条の3第二号に掲げる基準又は1時間準耐火基準に適合するものを除く。)とした建築物又は法第67 条第1項の規定により準耐火建築物等(第109 条の3第二号に掲げる基準又は1時間準耐火基準に適合するものを除く。)とした建築物で、延べ面積が500㎡を超えるものについては、第1項の規定にかかわらず、床面積の合計500㎡以内ごとに1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画し、かつ、防火上主要な間仕切壁(自動スプリンクラー設備等設置部分(床面積が200㎡以下の階又は床面積200㎡以内ごとに準耐火構造の壁若しくは法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画されている部分で、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けたものをいう。第114 条第1項及び第2項において同じ。)その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の間仕切壁を除く。)を準耐火構造とし、次の各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

 天井の全部が強化天井(天井のうち、その下方からの通常の火災時の加熱に対してその上方への延焼を有効に防止することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。次号及び第114 条第3項において同じ。)である階

 準耐火構造の壁又は法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画されている部分で、当該部分の天井が強化天井であるもの

法第21 条第1項の規定により第109 条の5第一号に掲げる基準に適合する建築物(通常火災終了時間が1時間以上であるものに限る。)とした建築物、法第27 条第1項の規定により第110 条第一号に掲げる基準に適合する特殊建築物(特定避難時間が1時間以上であるものに限る。)とした建築物、法第27 条第3項の規定により準耐火建築物(第109 条の3第二号に掲げる基準又は1時間準耐火基準に適合するものに限る。)とした建築物、法第61 条の規定により第136 条の2第二号に定める基準に適合する建築物(準防火地域内にあり、かつ、第109 条の3第二号に掲げる基準又は1時間準耐火基準に適合するものに限る。)とした建築物又は法第67 条第1項の規定により準耐火建築物等(第109 条の3第二号に掲げる基準又は1時間準耐火基準に適合するものに限る。)とした建築物で、延べ面積が1,000㎡を超えるものについては、第1項の規定にかかわらず、床面積の合計1,000㎡以内ごとに1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。

前2項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分で、天井(天井のない場合においては、屋根。以下この条において同じ。)及び壁の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたものについては、適用しない。

 体育館、工場その他これらに類する用途に供する建築物の部分

 第1項第二号に掲げる建築物の部分

7~18 略

19 第1項、第4項、第5項、第10 項又は前項の規定による区画に用いる特定防火設備、第7項、第10 項、第11 項又は第12 項本文の規定による区画に用いる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備、同項ただし書の規定による区画に用いる10 分間防火設備及び第13 項の規定による区画に用いる戸は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める構造のものとしなければならない。

 第1項本文、第4項若しくは第5項の規定による区画に用いる特定防火設備又は第7項の規定による区画に用いる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備  次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの

 常時閉鎖若しくは作動をした状態にあるか、又は随時閉鎖若しくは作動をできるものであること。

 閉鎖又は作動をするに際して、当該特定防火設備又は防火設備の周囲の人の安全を確保することができるものであること。

 居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の通行の用に供する部分に設けるものにあっては、閉鎖又は作動をした状態において避難上支障がないものであること。

 常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあっては、火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合のいずれかの場合に、自動的に閉鎖又は作動をするものであること。

 第1項第二号、第10 項若しくは前項の規定による区画に用いる特定防火設備、第10 項、第11 項若しくは第12 項本文の規定による区画に用いる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備、同項ただし書の規定による区画に用いる10 分間防火設備又は第13 項の規定による区画に用いる戸  次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの

 前号イからハまでに掲げる要件を満たしているものであること。

 避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有し、かつ、常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあっては、火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖又は作動をするものであること。

20~21 略

建築基準法施行令より引用

面積区画に関する法文を抜粋し、マーキングしました。

  • 1項は1500㎡区画について
  • 2項は1時間準耐火基準について
  • 3項はアトリウム等の緩和について
  • 4項は500㎡区画について
  • 5項は1000㎡区画について
  • 6項は500㎡区画、1000㎡区画の緩和について
  • 19項は区画に用いる防火設備の構造について

です。

最新版の法令集をお求めの方はこちらの記事も参考にして下さい。

もぐら先生

面積区画の基本的な考え方

 1500㎡の面積区画が必要な建築物

  • 耐火建築物
  • 任意で以下としたもの
    • 準耐火建築物
    • 避難時対策建築物
    • 火災時対策建築物
    • 延焼防止建築物
    • 準延焼防止建築物

1000㎡の面積区画が必要な建築物

  • 準耐火建築物(イ-1)
  • 準耐火建築物(ロ-2)
  • 避難時対策建築物(1時間以上)
  • 火災時対策建築物(1時間以上)
  • 準防火地域内の準延焼防止建築物(イ-1、ロ-2)

500㎡の面積区画が必要な建築物

  • 準耐火建築物(イ-2)
  • 準耐火建築物(ロ-1)
  • 避難時対策建築物(1時間未満)
  • 火災時対策建築物(1時間未満)
  • 準防火地域内の準延焼防止建築物(イ-1、ロ-2以外)

区画の仕様

  • 壁、床は1時間耐火構造(耐火建築物の場合は耐火構造)
  • 開口部は常時閉鎖式又は随時閉鎖式の特定防火設備

面積区画には遮煙性能が不要です。

ただし、竪穴区画や異種用途区画と兼用する扉には遮煙性能が必要ですのでご注意ください。

もぐら先生

防火区画に用いる防火設備に関してはこちらの記事も参考にして下さい。

500㎡区画には防火上主要な間仕切壁が必要

500㎡区画には面積区画とは別に防火上主要な間仕切壁の設置が必要となります。

防火上主要な間仕切壁の具体的な仕様については、建築物の防火避難規定の解説 2023に掲載されています。

しかし、建築物の防火避難規定の解説 2023では学校、病院、診療所、児童福祉施設等、ホテル、旅館、下宿、寄宿舎、マーケット、などの用途によって防火上主要な間仕切壁を設ける事とされています。

また、用途に限らず火気使用室にも防火上主要な間仕切壁を設ける事とされています。

一方、500㎡の面積区画に必要とされる防火上主要な間仕切壁については記載されていません。

防火上主要な間仕切壁を元々求められる用途の場合は良いのですが、それ以外の用途の場合はどの部分に設置すればよいか悩ましい所です。

基本的には居室相互間の壁、居室と避難経路を区画する壁、火気使用室の壁に防火上主要な間仕切壁を設置すれば問題ないと思います。

もぐら先生

スパンドレルが必要

面積区画にはスパンドレルが必要となります。

面積区画の緩和、免除

スプリンクラー設備等の設置による倍読み

スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備を設置した部分については、設置部分の1/2を区画面積から除外できます。

面積区画スプリンクラーの計算

用途上やむを得ない場合(令112条1項一号)

劇場の客席部分、工場の生産ライン、スポーツの競技場など用途上、大空間となる事がやむを得ない場合には面積区画が緩和されます。

具体的な用途は以下の通り

  • 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場の客席
  • 体育館
  • ボーリング場
  • 屋内プール、屋内スポーツ練習場
  • 不燃性の物品を保管する立体的な倉庫(人やフォークリフトで出し入れ作業を行う多層式倉庫)
  • 卸売場、仲買売場等の売場、買い荷の保管、積み込み等の荷さばき場

上記の用途で大空間となる事がやむを得ない部屋に限定して緩和されるもので

その建築物のすべての部分が区画免除となるわけではないので注意して下さい。

もぐら先生

倉庫、工場の大規模なひさしの緩和(令112条1項一号のその他これらに類する用途に供する建築物の部分)

倉庫、工場、物品販売業を営む店舗の荷さばきスペースに設置される外気に開放された大規模なひさしは1m後退した部分を床面積に算入されますが、面積区画の算定において除外することができます。

対象となる用途

  • 倉庫
  • 工場
  • 物品販売業を営む店舗

※ホームセンターの外部の売場などには適用不可

面積区画の大規模な庇の緩和

階段室、昇降機の昇降路の部分の緩和(令112条1項二号)

超高層ビルで50階建て、60階建てなどになると階段室、昇降機の昇降路の合計面積だけで1500㎡を超えてしまう場合があります。

そういった場合に階段室、昇降機の昇降路に面積区画を要しないという緩和措置です。

面積区画の規定ではありますが、この規定のみ遮煙性能が必要となりますのでご注意下さい。

区画の仕様

  • 壁、床は1時間耐火構造(耐火建築物の場合は耐火構造)
  • 開口部は常時閉鎖式又は随時閉鎖式の煙性能付き特定防火設備

面積区画はいつから?法改正遍歴

面積区画の規定(令112条1項~6項)が施行されたのは昭和25年11月23日です。

その後、昭和31年、昭和34年、昭和36年、昭和39年、昭和44年、昭和46年、平成5年、平成12年、平成13年、平成15年、平成26年、平成27年、平成28年、令和元年、令和2年、令和6年などに改正があり現行の法文になっています。

重要な部分だけピックアップして紹介します。

昭和31年7月1日施行

スパンドレルの規定が新設されました。

昭和34年1月1日施行

1000㎡区画、500㎡区画の規定が新設されました。

昭和44年5月1日施行

スプリンクラー設備等を設置した場合、設置部分の全部が面積区画から免除されていましたが、設置部分の1/2相当分が免除されるように変わりました。

法改正遍歴、既存不適格を調べるには令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシートが非常に役立ちます。

まとめ

  • 面積区画は一定の面積ごとに区画を設け、火災を局所的なものに留めることを目的とする防火区画。
  • 面積区画には建築物の耐火種別により1500㎡区画、1000㎡区画、500㎡区画の3種類がある。
  • 耐火建築物、任意で準耐火建築物などにした建築物には1500㎡の面積区画が必要。
  • 準耐火建築物(イ-1)準耐火建築物(ロ-2)には1000㎡の面積区画が必要。
  • 準耐火建築物(イ-2)準耐火建築物(ロ-1)には500㎡の面積区画が必要。
  • 区画の仕様は
    • 壁、床は1時間耐火構造(耐火建築物の場合は耐火構造)
    • 開口部は常時閉鎖式又は随時閉鎖式の特定防火設備
    • 500㎡の面積区画には防火上主要な間仕切壁が必要
    • スパンドレルが必要
  • スプリンクラー設備等を設置した部分については、設置部分の1/2を区画面積から除外できる。
  • 劇場の客席部分、工場の生産ライン、スポーツの競技場など用途上、大空間となる事がやむを得ない場合には面積区画が緩和される。
  • 倉庫、工場、物品販売業を営む店舗の荷さばきスペースの大規模なひさしは面積区画の算定から除外される。
  • 面積区画の規定(令112条1項~6項)が施行されたのは昭和25年11月23日。

本記事の作成にあたり参考にした条文、書籍等

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