
今まで排煙告示の記事をいくつかあげてきましたが、改正前と改正後が分かれた記事だったので少々分かりにくい状態でした。
今回の記事では告示1436号を令和6年(2024年)の改正対応版で再編しました。
現行の法文に則った構成なので見やすいと思います。
過去の記事
今回の記事は排煙告示(2024年改正対応版)です。
告示1436号第四号は自然排煙が取れない場合に適用される告示で、設計をする上では必須の告示となっています。
一方、排煙告示は改正により複雑化が進み、また技術的助言などを参照とする必要もあり、理解するのが難しい告示でもあります。
今回の記事では元々ある告示の規定や技術的助言などをなるべく図解で分かりやすく解説します。
- 3mを超える居室の緩和
- 階数が2以下、200㎡以下の一戸建ての住宅、長屋の緩和
- 特定配慮特殊建築物の解説
- 倉庫、駐車場、工場などの不活性ガスによる緩和
- 四号への内装や防火区画による緩和
など
盛りだくさんの内容となりますので目次を活用してご覧ください。

まずは告示1436号をチェック(2024年4月1日改正版)
平成12年5月31日建設省告示第1436号(2024年4月1日改正版)
排煙設備の設置を要しない火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分を定める件
建築基準法施行令(以下「令」という。)第126条の2第1項第五号に規定する火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分は、次に掲げるものとする。一 次に掲げる基準に適合する排煙設備を設けた建築物の部分
イ 令第126条の3第1項第一号から第三号まで、第七号から第十号まで及び第十二号に定める基準
ロ 当該排煙設備は、一の防煙区画部分(令第126条の3第1項第三号に規定する防煙区画部分をいう。以下同じ。)にのみ設置されるものであること。
ハ 排煙口は、常時開放状態を保持する構造のものであること。
ニ 排煙機を用いた排煙設備にあっては、手動始動装置を設け、当該装置のうち手で操作する部分は、壁に設ける場合においては床面から80センチメートル以上1.5メートル以下の高さの位置に、天井からつり下げて設ける場合においては床面からおおむね1.8メートルの高さの位置に設け、かつ、見やすい方法でその使用する方法を表示すること。
二 令第112条第1項第一号に掲げる建築物の部分(令第126条の2第1項第二号及び第四号に該当するものを除く。)で、次に掲げる基準に適合するもの
イ 令第126条の3第1項第二号から第八号まで及び第十号から第十二号までに掲げる基準
ロ 防煙壁(令第126条の2第1項に規定する防煙壁をいう。以下同じ。)によって区画されていること。
ハ 天井(天井のない場合においては、屋根。以下同じ。)の高さが3メートル以上であること。
ニ 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしてあること。
ホ 排煙機を設けた排煙設備にあっては、当該排煙機は、1分間に500立方メートル以上で、かつ、防煙区画部分の床面積(2以上の防煙区画部分に係る場合にあっては、それらの床面積の合計)1平方メートルにつき1立方メートル以上の空気を排出する能力を有するものであること。
三 次に掲げる基準に適合する排煙設備を設けた建築物の部分(天井の高さが3メートル以上のものに限る。)
イ 令第126条の3第1項各号(第三号中排煙口の壁における位置に関する規定を除く。)に掲げる基準
ロ 排煙口が、床面からの高さが2.1メートル以上で、かつ、天井(天井のない場合においては、屋根)の高さの2分の1以上の壁の部分に設けられていること。
ハ 排煙口が、当該排煙口に係る防煙区画部分に設けられた防煙壁の下端より上方に設けられていること。
ニ 排煙口が、排煙上、有効な構造のものであること。
四 次のイからトまでのいずれかに該当する建築物の部分
イ 階数が2以下で、延べ面積が200平方メートル以下の住宅又は床面積の合計が200平方メートル以下の長屋の住戸の居室で、当該居室の床面積の20分の1以上の換気上有効な窓その他の開口部を有するもの
ロ 階数が二以下で、かつ、延べ面積が五百平方メートル以下の建築物(令第百十条の五に規定する技術的基準に従って警報設備を設けたものに限り、次の(1)又は(2)のいずれかに該当するもの(以下「特定配慮特殊建築物」という。)を除く。)の部分であって、各居室に屋外への出口等(屋外への出口、バルコニー又は屋外への出口に近接した出口をいう。以下同じ。)(当該各居室の各部分から当該屋外への出口等まで及び当該屋外への出口等から道までの避難上支障がないものに限る。)その他当該各居室に存する者が容易に道に避難することができる出口が設けられているもの
(1) 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号。以下「法」という。)別表第一(い)欄?項に掲げる用途又は病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)若しくは児童福祉施設等(令第百十五条の三第一号に規定する児童福祉施設等をいう。以下同じ。)(入所する者の使用するものに限る。)の用途に供するもの
(2) 令第百二十八条の四第一項第二号又は第三号に掲げる用途に供するもの
ハ 階数が二以下で、かつ、延べ面積が五百平方メートル以下の建築物(令第百十条の五に規定する技術的基準に従って警報設備を設けたものに限り、特定配慮特殊建築物を除く。)の部分(当該部分以外の部分と間仕切壁又は令第百十二条第十二項に規定する十分間防火設備(当該部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設け、若しくは消火上有効な措置が講じられている場合又は当該部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料でした場合にあっては、戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。))で同条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画されているものに限る。)で、次に掲げる基準に適合する部分
(1) 床面積が五十平方メートル(天井の高さが三メートル以上である場合にあつては、百平方メートル)以内であること。
(2) 各居室の各部分から避難階における屋外への出口又は令第百二十三条第二項に規定する屋外に設ける避難階段に通ずる出入口の一に至る歩行距離が二十五メートル以下であること。
ニ 避難階又は避難階の直上階で、次に掲げる基準に適合する部分(当該基準に適合する当該階の部分(以下「適合部分」という。)以外の建築物の部分の全てが令第百二十六条の二第一項第一号から第三号までのいずれか、前各号に掲げるもののいずれか若しくはイからハまで及びホからトまでのいずれかに該当する場合又は適合部分と適合部分以外の建築物の部分とが準耐火構造の床若しくは壁若しくは同条第二項に規定する防火 設備で区画されている場合に限る。)
(1) 次の(一)又は(二)のいずれかに該当するものであること。
(一) 法別表第一(い)欄に掲げる用途以外の用途に供するもの
(二) 児童福祉施設等(入所する者の利用するものを除く。)、博物館、美術館、図書館、展示場又は飲食店の用途に供するもの
(2) (1)に規定する用途に供する部分における主たる用途に供する各居室に屋外への出口等(当該各居室の各部分から当該屋外への出口等まで及び当該屋外への出口等から道までの避難上支障がないものに限る。)その他当該各居室に存する者が容易に道に避難することができる出口が設けられていること。
ホ 法第27条第3項第二号の危険物の貯蔵場又は処理場、自動車車庫、通信機械室、繊維工場その他これらに類する建築物の部分で、法令の規定に基づき、不燃性ガス消火設備又は粉末消火設備を設けたもの
ヘ 高さ三十一メートル以下の建築物の部分(法別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物の主たる用途に供する部分で、地階に存するものを除く。)で、室(居室を除く。)にあっては(1)又は(2)のいずれか、居室にあっては(3)から(5)まで(特定配慮特殊建築物の居室にあっては、(4)又は(5))のいずれかに該当するもの
(1) 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でし、かつ、屋外に面する開口部以外の開口部のうち、居室又は避難の用に供する部分に面するものに法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で令第百十二条第十九項第一号に規定する構造であるものを、それ以外のものに戸又 は扉を、それぞれ設けたもの
(2) 床面積が百平方メートル以下で、令第百二十六条の二第一項に掲げる防煙壁により区画されたもの
(3) 床面積が五十平方メートル(天井の高さが三メートル以上である場合にあつては、百平方メートル)以内で、当該部分以外の部分と準耐火 構造の間仕切壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備(当該部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設け、若しくは消火上有効な措置が講じられている場合又は当該部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でした場合にあっては、間仕切壁又は令第百十二条第十二項に規定する十分間防火設備)で同条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画されていること。
(4) 床面積百平方メートル以内ごとに準耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で令第百十二条第十九項第一号に規定する構造であるものによって区画され、かつ、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたもの
(5) 床面積が百平方メートル以下で、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ったもの
ト 高さ31メートルを超える建築物の床面積100平方メートル以下の室で、耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第九号の二に規定する防火設備で令第112条第19項第一号に規定する構造であるもので区画され、かつ、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたもの
2024年4月1日の改正により
追加された項目を黄色線で
変更された項目を赤線で示しています。

告示1436号の全体の構成
告示1436号は一号~四号で構成されています。
- 一号は閉鎖状態保持等の緩和
- 二号は劇場、映画館等の防煙区画面積の緩和
- 三号は天井高さ3m以上の居室の排煙口の緩和
- 四号は排煙設備の設置免除の建築物の部分
について示されています。
更に大きく分類すると一号~三号は排煙設備の構造(令126条の3)の緩和、四号は排煙設備の設置免除(令126条の2)の緩和と分類できます。
一号~三号までを分かりやすく表にまとめると以下の様な形です。
令126条の3第1項 | 概要 | 告示1436号第一号 | 告示1436号第二号 | 告示1436号第三号 |
---|---|---|---|---|
令126条の3第1項 第一号 | 500㎡の防煙区画 | 告示を適用 | ||
令126条の3第1項 第二号 | 風道等の不燃 | |||
令126条の3第1項 第三号 | 排煙口までの距離等 | 告示を適用 | ||
令126条の3第1項 第四号 | 手動開放装置 | 告示を適用 | ||
令126条の3第1項 第五号 | 手動開放装置の高さ等 | 告示を適用 | ||
令126条の3第1項 第六号 | 排煙口の常時閉鎖等 | 告示を適用 | ||
令126条の3第1項 第七号 | 排煙風道の構造等 | |||
令126条の3第1項 第八号 | 排煙機の設置 | |||
令126条の3第1項 第九号 | 排煙機の能力 | 告示を適用 | ||
令126条の3第1項 第十号 | 予備電源 | |||
令126条の3第1項 第十一号 | 中央管理室 | |||
令126条の3第1項 第十二号 | 昭和45告示第1829号 |
基本的に排煙設備の構造は令126条の3各号に示される構造としますが、上記の表の該当部分は告示を適用する事で緩和措置となります。

次からは適用されることが多い三号(天井高さ3m以上の居室の排煙口の緩和)、四号(設置免除の建築物の部分)について一つずつポイントや注意点を解説していきますね。

告示1436号第三号
三号は天井高が3m以上ある場合の排煙有効部分の緩和です。
天井高が3m以上ある場合、2100以上かつ天井高の1/2以上のラインが排煙有効ラインとなります。

告示1436号第四号イ
一戸建ての住宅、長屋の排煙免除の緩和です。
要件、用途は以下の通りです。
要件
- 階数が2以下で延べ面積が200㎡以下
- 居室は1/20以上の換気上有効な窓を有する
用途
- 一戸建ての住宅
- 長屋の住戸
また、長屋は住戸毎に考えますので適用できる住戸、適用できない住戸が混在することもあります。

ちなみに告示の法文上『床面積の合計が200㎡以下の長屋の住戸』とありますが
これは建物全体が200㎡以下という意味ではなく住戸が200㎡以下という意味です。
建築物の防火避難規定の解説 2025に載っていますので参照してください。

告示1436号第四号ロ
下記の建築物の部分で、各居室に屋外への出口等から在館者が容易に避難できる場合に排煙設備の設置が免除されます。

対象となる建築物(下記のすべてに該当)
- 階数が2以下かつ500㎡以下の建築物
- 警報設備を設けたもの
- 特定配慮特殊建築物以外のもの
特定配慮特殊建築物って何?
2024年4月1日の改正で新たに『特定配慮特殊建築物』という用語が追加されました。
特定配慮特殊建築物は排煙上、特に配慮された特殊建築物という事で、2024年に新設された第四号ロ、第四号ハによる排煙の緩和から除外されています。
特定配慮特殊建築物は以下のものを指します。

- 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
- 病院、診療所(患者の収容施設があるもの)
- 児童福祉施設等
- 幼保連携型認定こども園
- 自動車車庫、自動車修理工場
- 地階に設ける居室で法別表第1(い)欄(1)項(2)項(4)項の特殊建築物
法別表第1(い) | 特殊建築物の種類 |
---|---|
(1)項 | 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場 |
(2)項 | 病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等、幼保連携型認定こども園 |
(4)項 | 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗 |
警報設備とは?
- 自動火災報知設備
- 特定小規模施設用自動火災報知設備
(警報設備の構造方法、設置方法の詳細については令和元年6月21日 国土交通省告示第198号による)
屋外への出口等の構造
下記に示す避難上支障がないことの条件は「建築基準法施行令の一部を改正する政令等の施工時ついて(技術的助言)」(令和2年4月1日付け国住指第4658号)第一(7)(告示第2号関係)による
屋外への出口
- 居室の各部分から屋外への出口までの歩行距離が20m以下
- 戸や掃き出し窓で在館者が支障なく外部に出られる事
- 屋外への出口からは道路に直接通じるか幅員50cm以上の通路を設ける事
- 他の火災の恐れのある建築物の部分の前を通らずに避難できる事
屋外への出口へ近接した出口
- 居室の各部分から屋外への出口に近接した出口までの歩行距離が20m以下
- 戸や掃き出し窓で在館者が支障なく外部に出られる事
- 縁側を通じた屋外への避難のように、出口が容易に把握でき、安全かつ容易に到達できる距離である事
- 屋外への出口からは道路に直接通じるか幅員50cm以上の通路を設ける事
- 他の火災の恐れのある建築物の部分の前を通らずに避難できる事
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バルコニーへの出口
- 居室の各部分からバルコニーへの出口までの歩行距離が10m以下
- 戸や掃き出し窓で在館者が支障なくバルコニーに出られる事
- バルコニーは外気に十分開放されている事
- バルコニーから地上へ屋外階段、すべり台、タラップ等、在館者の特性を踏まえた避難経路を確保する事
- バルコニーから地上まで他の火災の恐れのある建築物の部分の前を通らずに避難できる事
- 車いす使用者が利用する施設にあっては、バルコニーと同一階にある屋上等の安全な一時退避場所を確保する事
- 地上に通ずる部分からは道路に直接通じるか幅員50cm以上の通路を設ける事
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告示1436号第四号ハ
下記の建築物の部分で、当該部分とその他の部分とを下記の要件で区画した場合、排煙設備の設置が免除されます。

対象となる建築物(下記のすべてに該当)
- 階数が2以下かつ500㎡以下の建築物
- 警報設備を設けたもの
- 特定配慮特殊建築物以外のもの
区画の要件
- 壁の構造
- 間仕切壁で区画
- 開口部の構造
- 10分間防火設備
- スプリンクラー設備を設置 又は 当該部分の内装を難燃材料以上とした場合には戸(ふすま、障子以外)
- 令112条19項二号の構造(常時閉鎖式又は随時閉鎖式で遮煙性能を有するもの)
- 床面積
- 50㎡以内
- 天井高が3m以上ある場合は100㎡以内
- 歩行距離
- 屋外への出口又は屋外避難階段までの歩行距離が25m以下
告示1436号第四号二
本規定は平成27年に追加された規定で当該要件を満たした『建築物の部分』について排煙設備が免除されます。
対象となる建築物の用途
- 特殊建築物以外のもの(法別表第一(い)欄以外)
- 児童福祉施設等で就寝の用途に供さないもの(保育所など)
- 博物館、美術館、図書館
- 飲食店、展示場(2024年4月1日の法改正で追加されました)
要件
- 避難階、避難階の直上階であること
- 当該階の主たる用途に供するすべての居室が条件をみたすこと
- 各居室から容易に安全な外部に避難できること
- 居室面積は100㎡程度、出口までは歩行距離10m程度
- 在館者が戸や掃き出し窓などから支障なく出られる
- 屋外の出口から道路に通ずる幅員50cm以上の通路が設けられている
- バルコニーが十分開放されており、地上へ階段・すべり台・タラップ等で避難できる
- 他の火災のおそれのある居室の前を通らずに避難できる
具体例イメージ
避難階

避難階の直上階

注意点、補足
他の居室を通るのはNG
主たる用途に供するすべての居室から速やかに避難できる事を想定した規定ですので、当該居室で出火すると避難できなくなる恐れがあるため、居室-居室の避難は不可です。
居室の内部に小さな居室がある場合などは適用不可となりますのでご注意ください。

内装制限はかからない
避難開始後、早期に屋外の出口等に至ることを想定している規定のため、当該居室等に内装制限はかかりません。
告示1436号四号ホ
倉庫、駐車場、工場などで不活性ガスなどによる消火を行う場合、部屋全体を密閉する必要があり排煙窓等を設置することが困難ですので排煙設備の設置が免除されます。
用途
- 危険物の貯蔵場・処理場
- 自動車車庫
- 通信機械室
- 繊維工場
- 電算室
- 電気室
消火方法
- 不燃性ガス消火設備を設けたもの
- 粉末消火設備を設けたもの
告示1436号四号へ、ト
第四号へは最も使われる排煙告示の規定です。
第四号『ト』も『へ』と比較しながら見た方が分かりやすいので一緒に解説します。
一定の規模、内装制限をした室、居室には排煙設備の設置が免除されます。
第四号へ(1)、(2)は室(非居室)、(3)、(4)、(5)は居室に適用されます。
第四号トは法文上『室』と記載されていますが、これは居室、非居室両方を指してます。
表にすると以下の通りです。
四号-へ-(1) | 四号-へ-(2) | 四号-へ-(3) | 四号-へ-(4) | 四号-へ-(5) | 四号-ト | |
適用部位 ※1 | 31m以下の室 | 31m以下の居室 | 31m超の室、居室 | |||
適用除外 | 特殊建築物の地下で主たる用途に供する室 ※2 | - | ||||
面積 | - | 100㎡以下 | 50㎡以内 (天井高さが3m以上の場合は100㎡以内) | 100㎡以内ごと | 100㎡以下 | 100㎡以下 |
内装制限 | 準不燃の仕上 | - | スプリンクラー設備等が設置され壁、天井の仕上が準不燃の場合は★となる。 | 準不燃の仕上 | 不燃の下地、仕上 | 準不燃の仕上 |
区画の壁、天井 | - | 防煙区画 | 準耐火構造(耐火建築物は耐火構造) ★間仕切壁 | 準耐火構造(耐火建築物は耐火構造) | 防煙区画 | 耐火構造 |
区画の扉 | 居室、避難経路に面する扉は一号防火設備 それ以外は戸又は扉を設ける | - | 法2条9号二ロの防火設備 ★10分間防火設備 | 一号防火設備 | 常閉の不燃戸が望ましい | 一号防火設備 |
高さ31mを超える室の判断 ※1
高さ31mを超える超えないは当該階の階高の1/2を超えるかどうかで判断します。

地下に適用できない『主たる用途に供する室』とは? ※2
法別表に掲げる特殊建築物の内、主たる用途に供する室は1436号四-二が適用できません。
『主たる用途に供する室』とは?
例えば物品販売業を営む店舗でいうと売場は主たる用途となり、バックヤードは主たる用途にあたりません。
その他には付属の駐車場・駐輪場、付属の事務室などが主たる用途から外れます。
取扱いを出している行政庁もありますので申請地の行政庁、申請先の指定確認検査機関にご確認下さい。
参考リンク
新設された告示1436号四-へ-(3)の解説
建築物の部分で、下記の要件で区画した場合、排煙設備の設置が免除されます。

- 壁の構造
- 準耐火構造の間仕切壁で区画
- スプリンクラー設備を設置 又は 当該部分の内装を準不燃材料以上とした場合には間仕切壁で区画
- 開口部の構造
- 防火設備
- スプリンクラー設備を設置 又は 当該部分の内装を準不燃材料以上とした場合には10分間防火設備
- 令112条19項一号の構造(常時閉鎖式又は随時閉鎖式のもの)
- 床面積
- 50㎡以内
- 天井高が3m以上ある場合は100㎡以内
- 特定配慮特殊建築物でない事
『室』に廊下は含まれるのか?
告示1436号四-二(1)、(2)の『室』とは廊下が含まれるのかという議論があります。
答えは・・・実は意見が分かれます。

『室』に廊下は含まれない派の意見
『室』に廊下は含まれない、つまり廊下は告示1436号四-へ(1)、(2)を適用できないという意見です。
平成12年告示1436号は旧告示(昭和47年建設省告示第30号、31号、32号、33号)をまとめられて作られました。
旧告示の第33号の中に廊下は居室からの避難経路であるため、室、居室には含まれないものとして扱われていました。
平成12年告示1436号は旧告示を踏襲して作られているので旧告示の考え方も変わらず踏襲される事となります。
よって、平成12年告示1436号における『室』に廊下は含まれないと考える意見です。
こちらの考え方は取扱いをHP等で公開している行政庁も多くあります。
『室』に廊下は含まれる派の意見
『室』に廊下は含まれる、つまり廊下は告示1436号四-へ(1)、(2)を適用できるという意見です。
避難安全検証法の適用対象建築物において廊下は室として扱うことができるとした平成12年告示1440号(火災の発生のおそれの少ない室を定める件)が施行されました。(平成12年告示1436号と同日施行)
避難安全検証法における『火災室』の定義は告示1440号に定める火災発生の恐れの少ない室以外の室はすべて火災が発生するものとして扱います。すなわち、居室はすべて火災室となります。
火災室=居室、告示1440号以外の室
告示1440号の中に廊下は火災発生の恐れの少ない『室』と定義されていますので廊下は室であると考えることができます。

よって、平成12年告示1436号においても『室』に廊下は含まれると考える意見です。
ただ、避難安全検証法の適用対象建築物にあたらない病院など、利用者の自力避難が困難な建築物においては排煙設備を設置することが望ましいとされています。
こちらの考え方は建築物の防火避難規定の解説 2025に掲載されています。
告示を見てみよう
平成12年5月31日 建設省告示第1440号
火災の発生のおそれの少ない室を定める件
建築基準法施行令第129条第2項に規定する火災の発生のおそれの少ない室は、次の各号のいずれかに該当するもので、壁及び天井(天井がない場合にあっては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたものとする。
一 昇降機その他の建築設備の機械室、不燃性の物品を保管する室その他これらに類するもの
建築基準法関係告示より引用
二 廊下、階段その他の通路、便所その他これらに類するもの
じゃあ実際はどちらを採用すればよい?
廊下について告示1436号四-へ(1)、(2)を適用せずに設計できれば何の問題もない訳ですから、まずは自然排煙等で設計することを基本とし、どうしても告示の適用が必要な場合は行政庁の取扱いの確認、申請先の審査機関の見解などを元に採用の有無を決めるという流れになるかと思います。
平成12年告示1436号の法改正遍歴
平成12年告示1436号は旧告示(昭和47年建設省告示第30号、31号、32号、33号)をまとめられて作られました。
そして、告示1436号が施行されたのは平成12年6月1日です。
その後、平成13年、平成27年、平成30年、令和元年、令和2年、令和6年などに改正があり、現行の法文になっています。
重要な部分だけピックアップして紹介します。
平成27年3月18日施行
四号ロが新設されました。
それによりハ欄以降がスライドしました。

令和6年4月1日施行
四号ロ、ハが新設されました。
それにより二欄以降がスライドしました。
四号へ(3)が新設されました。
それにより(4)以降がスライドしました。

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まとめ
- 告示1436号は一号~四号で構成されている。
- 一号~三号は令126条の3の緩和、四号は令126条の2の緩和
- 排煙設備の構造は基本的に令126条の3各号に示される構造とするが告示適用となるものは緩和措置となる。
- 告示1436号四号イは一戸建ての住宅、長屋の住戸緩和
- 階数が2以下で延べ面積が200㎡以下
- 居室は1/20以上の換気上有効な窓を有する
- 特定配慮特殊建築物は以下のもの
- 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
- 病院、診療所(患者の収容施設があるもの)
- 児童福祉施設等
- 幼保連携型認定こども園
- 自動車車庫、自動車修理工場
- 地階に設ける居室で法別表第1(い)欄(1)項(2)項(4)項の特殊建築物
- 告示1436号四号ロは階数が2以下500㎡以下で警報設備を設けた建築物(特定配慮特殊建築物以外)で各居室に屋外への出口等から在館者が容易に避難できる場合に排煙設備の設置が免除される。
- 告示1436号四号ハは階数が2以下500㎡以下で警報設備を設けた建築物(特定配慮特殊建築物以外)で当該部分とその他の部分とを一定の要件で区画した場合、排煙設備の設置が免除される。
- 告示1436号四号二は以下の建築物の緩和
- 特殊建築物以外のもの(法別表第一(い)欄以外)
- 児童福祉施設等で就寝の用途に供さないもの(保育所など)
- 博物館、美術館、図書館
- 要件は以下の通り
- 避難階、避難階の直上階であること
- 当該階の主たる用途に供するすべての居室が条件をみたすこと
- 各居室から容易に安全な外部に避難できること
- 居室面積は100㎡程度、出口までは歩行距離10m程度
- 在館者が戸や掃き出し窓などから支障なく出られる
- 屋外の出口から道路に通ずる幅員50cm以上の通路が設けられている
- バルコニーが十分開放されており、地上へ階段・すべり台・タラップ等で避難できる
- 他の火災のおそれのある居室の前を通らずに避難できる
- 告示1436号四号ホは倉庫、駐車場、工場などで不活性ガスなどによる消火を行う場合の緩和
- 告示1436号四号へ、トは室や居室で一定の条件を満たしたものに適用できる緩和
- 31m超え、31m以下、地下などで適用できる条文が異なる
- 室、居室で適用できる条文が異なる
- 廊下については告示を適用できるか確認が必要
本記事の作成にあたり参考にした条文、書籍等
- 平成12年5月31日建設省告示第1436号(排煙設備の設置を要しない火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分を定める件)
- 建築基準法施行令第110条の5(警報設備の技術的基準)
- 令和元年6月21日 国土交通省告示第198号(警報設備の構造方法及び設置方法を定める件)
- 建築基準法施行令第128条の5(特殊建築物の内装)
- 「建築基準法施行令の一部を改正する政令等の施工時ついて(技術的助言)」(令和2年4月1日付け国住指第4658号)第一(7)(告示第2号関係)
- 建築物の防火避難規定の解説 2025
- 建築設備設計・施工上の運用指針 2025年版 【オリジナルボールペン付き】 本冊のみ