今回の記事では、第一種・第二種低層住居専用地域などにおける「外壁の後退距離」について解説します。
この規定自体は複雑なものではありませんが、条文を丁寧に読まないと誤解しやすいポイントがいくつかあります。
建築基準法では「道路境界線」や「隣地境界線」という用語が一般的に用いられますが、法第54条では「敷地境界線」という表現が使われている点に注意が必要です。
また、後退距離の測定位置についても、外壁・柱の外面を基準とする場合や、中心線を基準とする場合があり、算定方法を誤りやすい部分です。
本記事では、これらの間違えやすいポイントを整理し、実務で迷わないための考え方をわかりやすく解説します。
さらに、実務でよく寄せられる質問にもお答えしていきます。
是非最後までご覧ください。

まずは法文(法54条、令135条の22)をチェック
建築基準法法令集 2026年版(令和8年版)より抜粋法文を見てみよう
建築基準法
(第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離)
第54 条 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内においては、建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(以下この条及び第86 条の6第1項において「外壁の後退距離」という。)は、当該地域に関する都市計画において外壁の後退距離の限度が定められた場合においては、政令で定める場合を除き、当該限度以上でなければならない。
2 前項の都市計画において外壁の後退距離の限度を定める場合においては、その限度は、1.5 m又は1mとする。建築基準法施行令
(第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離に対する制限の緩和)
第135 条の22 法第54 条第1項の規定により政令で定める場合は、当該地域に関する都市計画において定められた外壁の後退距離の限度に満たない距離にある建築物又は建築物の部分が次の各号のいずれかに該当する場合とする。
一 外壁又はこれに代わる柱の中心線の長さの合計が3m以下であること。
二 物置その他これに類する用途に供し、軒の高さが2.3 m以下で、かつ、床面積の合計が5㎡以内であること。
この令135条の22ですが、たびたび条ズレがあります。
改正遍歴は以下の通りです。

| 施行日 | 現 法54条 | 現 令135条の22 |
|---|---|---|
| 昭和34年12月23日 | 法56条第4項 | 令136条 |
| 昭和36年12月4日 | 法56条第4項 | 令135条の3 |
| 昭和44年6月14日 | 法56条第2項 | 令135条の3 |
| 昭和46年1月1日 | 法54条第1項 | 令135条の5 |
| 平成15年1月1日 | 法54条第1項 | 令135条の21 |
| 平成17年6月1日 | 法54条第1項 | 令135条の20 |
| 平成26年7月1日 | 法54条第1項 | 令135条の21 |
| 令和元年6月25日 | 法54条第1項 | 令135条の22 |
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第一種、第二種低層住居専用地域内における外壁後退とは?
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域において、当該地域の都市計画で定められている場合、外壁の後退距離の規定がかかります。
本規定は都市計画で定められている場合にのみかかる規定ですので、適用されるか否かについては特定行政庁のHP、窓口等で確認する必要があります。
後退距離は1.0m、1.5mのどちらかで、これも都市計画で定められています。
法54条における外壁の後退距離は敷地境界線から外壁又は柱の面までの距離を示します。
敷地境界線とは道路境界線と隣地境界線の両方を示します。よって、道路からも1.0m、1.5mの外壁後退が必要になります。
なお、この規定は斜線制限などの規定と異なり、水路や公園に面する敷地であっても後退が必要になります。
法54条では外壁又は柱の面までを規定していますが、それを緩和する令135条の22では外壁又は柱の中心線で判定します。
法54条と令135条の22で『外壁又は柱』の判定する部分が『面と中心線』で異なる事に注意が必要です。

ポイント
対象となる用途地域:第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域
対象となる場合:特定行政庁が都市計画で定めている場合
後退する距離:1.0m、1.5m
後退する部分(法54条):敷地境界線(道路境界線と隣地境界線)から外壁又は柱の面まで
後退する部分(令135条の22):敷地境界線(道路境界線と隣地境界線)から外壁又は柱の中心線まで
外壁の後退距離(法54条)のとり方はどこから?
法54条における外壁の後退距離は『敷地境界線』から1m、1.5mの範囲です。
敷地境界線とは道路境界線と隣地境界線の両方を示します。
そのため、道路境界線である道路や隣地境界線である水路や公園などからも外壁後退の対象となります。
水路や公園など斜線制限や採光では緩和されるものも外壁の後退距離の緩和はありません。
また、建物側のとり方は外壁や柱の外面までです。
原則として1m、1.5mの範囲に建築物の外壁、柱の外面がかからないように計画します。
この後解説する令135条の22に適合する条件を満たした部分は1m、1.5mの範囲内に建築することが可能です。
確認申請[面積・高さ]算定ガイド より引用
外壁の後退距離の緩和(令135条の22)
敷地境界線から1m、1.5mの範囲内には原則として建築物の外壁、柱を後退させる必要がありますが、一定の規模のものは建築することができます。
一定の規模の条件は以下の通りです。
外壁、柱の中心線の長さの合計が3m以下(第1項一号)
外壁、柱の中心線の長さの合計が3m以下までは外壁後退の部分に建築することができます。

また、法54条では外壁、柱の面まで、令135条の22では外壁、柱の中心線の長さ、という基準になっている事から、長さの測定は下記の図の様に算定します。

基準総則集団規定の適用事例 より引用
物置などで軒の高さが2.3 m以下、床面積の合計が5㎡以内(第1項二号)
物置などで軒の高さが2.3m以下、床面積5㎡以下(複数建物がある場合は合計で5㎡以下)のものは第1項一号の規定に関係なく後退距離の範囲内に建築することが可能です。

物置などには自動車車庫、駐輪場、家畜の小屋などを含みます。

外壁の無いカーポートなどの場合
カーポート、駐輪場などの外壁の無い、柱のみで構成されている建築物について、庇等のはね出し部分は外壁部分とはみなしません。
また、外壁が無く、柱のみの場合は下図の様に外壁の仮想線に沿って壁長を算定します。
その場合は、令135条の22の第1項一号、第1項二号のどちらかに当てはまれば、OKとなります。
用途地域がまたがる場合
法54条の適用を受ける第一種低層住居専用地域などとその他の用途地域にまたがる敷地の場合、『外壁、柱の面』と『敷地境界線』がともに第一種低層住居専用地域内に存在する時に後退距離が発生し、それ以外はこの条文は適用されません。

給湯器、室外機などの建築設備、出窓などは対象となる?
建築物の外壁、柱などにあたらない、露出されて設置される給湯器や室外機などの建築設備は法54条の対象外です。
また、床面積に算入されない出窓の突出部なども外壁、柱ではないので法54条の対象外です。
これらを対象外と考える事が出来るのは法54条の外壁の後退距離についてです。
似たような規定で『道路斜線における後退距離』がありますが、その場合は給湯器、室外機、出窓など、対象となる場合がありますので混同しないようにご注意ください。

『道路斜線における後退距離』についてはこちらの記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。
まとめ
- 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域における外壁の後退距離とは都市計画で定められている場合にのみ適用される。
- 後退する距離は1m又は1.5mでこれも都市計画で定められる。
- 後退する部分は敷地境界線から外壁、柱の面まで。
- 敷地境界線とは道路境界線と隣地境界線の両方を示す。
- 後退する部分(法54条):敷地境界線(道路境界線と隣地境界線)から外壁又は柱の面まで
- 後退する部分(令135条の22):敷地境界線(道路境界線と隣地境界線)から外壁又は柱の中心線まで
- 外壁、柱の中心線の長さの合計が3m以下までは外壁後退の部分に建築することができる。
- 物置などで軒の高さが2.3m以下、床面積5㎡以下(複数建物がある場合は合計で5㎡以下)のものは第1項一号の規定に関係なく後退距離の範囲内に建築することができる。
- カーポート、駐輪場などの外壁の無い、柱のみで構成されている建築物について、庇等のはね出し部分は外壁部分は無いものとみなす。
- 用途地域にまたがる敷地の場合、『外壁、柱の面』と『敷地境界線』がともに第一種低層住居専用地域内に存在する時に後退距離が発生する。
- 建築物の外壁、柱などにあたらない、露出されて設置される給湯器や室外機などの建築設備や床面積に算入されない出窓は法54条の対象外となる。
本記事の作成にあたり参考にした条文、書籍等
- 建築基準法 第54条(第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離)
- 建築基準法施行令 第135条の22(第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離に対する制限の緩和)
- 建築確認申請 条文改正経過スーパーチェックシート 第5版
- 確認申請[面積・高さ]算定ガイド 第2版
- 基準総則集団規定の適用事例




