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設計する上で厄介な竪穴区画。竪穴区画がなければ設計の自由度が広がります。
使い勝手も良くなります。できれば無くしたい竪穴区画。
今回は竪穴区画を免除するにはどうしたらよいのか?
ロ準耐、準延焼防止建築物、ただし書きなどいろいろな方法を解説します。
一緒に勉強して設計などにお役立てください。
竪穴区画とは?
法文を見てみよう
【建築基準法施行令 第112条11項】
第112条(防火区画)
11 主要構造部を準耐火構造とした建築物(特定主要構造部を耐火構造とした建築物を含む。)又は第136 条の2第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物であって、地階又は3階以上の階に居室を有するものの竪穴部分(長屋又は共同住宅の住戸でその階数が2以上であるもの、吹抜きとなっている部分、階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分をいう。以下この条において同じ。)については、当該竪穴部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。次項及び第13 項において同じ。)と準耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する竪穴部分については、この限りでない。
一 避難階からその直上階又は直下階のみに通ずる吹抜きとなっている部分、階段の部分その他これらに類する部分でその壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ったもの
二 階数が3以下で延べ面積が200㎡以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、かつ、床面積の合計が200㎡以内であるものにおける吹抜きとなっている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分
建築基準法法令集 2025年版(令和7年版)より抜粋
分かりやすくマーキングしました。
竪穴区画の基本事項については下記の記事をご覧ください。
竪穴区画を免除する方法
設計する上ではどうやって竪穴区画を免除しようかと考える方が多いかと思いますので、 竪穴区画を不要となるための条件を挙げてみます。
- 準耐火建築物(ロ準耐)にする。
- 準延焼防止建築物にする。
- 地階又は3階以上の階に居室を設けない。
- 開放廊下に接続する。
- 避難階の直上又は直下のみに通じる階段とする。(ただし書き一号)
- 3階かつ200㎡以内の住戸とする。(ただし書き二号)
- 便所とする。(部分的な免除)
一つ一つ解説していきます。
準耐火建築物(ロ準耐)にする
法27条や法61条で準耐火建築物以上とする必要がある規模の場合、ロ準耐とする事で竪穴区画を免除する事ができます。
ロ準耐には2種類あります。
- 外壁耐火のロ準耐(ロ-1)
- 軸組み不燃のロ準耐(ロ-2)
鉄骨造の場合
ロ準耐(ロ-1)もロ準耐(ロ-2)も容易に可能です。
そもそもロ準耐は鉄骨造で準耐火建築物をつくるための規定です。
鉄筋コンクリート造の場合
基本的にすべての主要構造部が耐火構造なので自動的に耐火建築物になってしまいます。
防火、準防火地域による耐火要件が無くても自主的に耐火建築物にした場合、竪穴区画がかかります。
ロ準耐(ロ-2)にするためにはどこか耐火構造でない部分を作らなければなりません。
柱、梁、壁、床、屋根は鉄筋コンクリートで造らない訳に行かないので階段を木造で造る事例が多いです。
木造の場合
軸組が不燃ではないためロ準耐(ロ-2)にする事はできません。
木造でも外壁を耐火構造とする事は可能ですが、そもそも外壁耐火のロ準耐(ロ-1)は軸組が自立している事が前提なのでそれが木造の場合、認められるかが判断の分かれる所です。
申請先の建築主事又は確認検査機関に事前に相談する様にして下さい。
準延焼防止建築物にする
準延焼防止建築物は一部竪穴区画が免除されます。
一部というかほとんどです。
準延焼防止建築物については下記の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
地階又は3階以上の階に居室を設けない
竪穴区画が必要な建物であっても地階及び3階以上の階に居室が無い場合は竪穴区画は必要ありません。
例えば4階建ての耐火建築物の建物があった場合、3階・4階が倉庫などで居室が無いと階段などに竪穴区画がかかりません。
また、地上3階地下1階の一戸建ての住宅(イ準耐)の建築物の場合、階数が4なのでただし書き二号が適用できず竪穴区画が必要になりますが、地下1階が駐車場、3階は納戸などで、地下1階・3階に居室が無ければ階段などに竪穴区画がかかりません。
開放廊下に接続する
令112条第11項本文中に「当該竪穴部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。次項及び第13 項において同じ。)」とあります。
階段が外気に開放された屋外廊下、屋外バルコニーなどに接続されている場合は竪穴区画がかかりません。
その場合、屋内階段、屋外階段を問いません。
よくある事例としては共同住宅の階段が屋外廊下に接続されているケースなどです。
せっかく屋外廊下に接続しているのに区画する事によって余計、煙がこもってしまう事もありますからね。
避難階の直上又は直下のみに通じる階段とする(ただし書き一号)
避難階の直上階又は直下階にのみ通じる吹抜け、階段は当該部分の天井、壁の下地、仕上げを不燃材料とする事で竪穴区画を免除する事ができます。
本ただし書きを適用するにあたっていくつか注意事項があります。
昇降機の昇降路には適用不可
ただし書き一号をよく見ると吹抜けの部分、階段の部分とありますが昇降機の昇降路の部分は記載されていません。
一方、ただし書き二号では昇降機の昇降路も記載されています。
つまり、ただし書き一号では昇降機の昇降路は適用不可という事になります。
下地、仕上げを不燃材料とする範囲は区画範囲まで及ぶ
例えば、避難階(1階)と2階に通じる吹抜けを設けた場合、その吹抜けに繋がっている部分はすべて下地、仕上げを不燃材料とする必要があります。
その部分は防火区画されていない限りどこまでも広がっていきます。
建築物の防火避難規定の解説2023 P126 より引用
避難階の直上階と直下階の3層にわたるのは不可
- 避難階の直上階にのみ通じる吹抜け、階段
- 避難階の直下階にのみ通じる吹抜け、階段
が対象であり、両方に通じる3層となる場合は適用不可という事になります。
建築物の防火避難規定の解説2023 P126 より引用
3階かつ200㎡以内の住戸とする(ただし書き二号)
一戸建ての住宅、長屋の住戸、共同住宅の住戸で階数が3以下かつ床面積200㎡以内であるものは、その内部において竪穴区画が不要となります。
木造3階建ての一戸建て住宅に竪穴区画がかからないのはこちらを適用しているからです。
200㎡を超えたり、階数が4になったりすると竪穴区画がかかってしまうので多くの一戸建て住宅は3階建て200㎡以下で設計されています。
一部に店舗などを設ける場合においても住宅部分が3層以下200㎡以下となっていれば本ただし書きが適用可能です。
建築物の防火避難規定の解説2023 P127 より引用
便所とする(部分的な免除)
令112条第11項の本文中に「階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)」とあります。
階段からのみ出入りする便所、公衆電話所などは階段室に含めてよいという事です。
これは昔のデパートで、階段の半階上がった部分に便所が設けられている様な計画がよくあったと思いますが、その名残です。
現在ではバリアフリーの観点で便所への移動円滑化経路上に段差を作れない為、そういった計画は少なくなってきました。
法文としてまだ残っていますので階段から便所のみに出入りする出入口には竪穴区画は不要となります。
まとめ
竪穴区画を免除する方法は
- 準耐火建築物(ロ準耐)にする。
- 準延焼防止建築物にする。
- 地階又は3階以上の階に居室を設けない。
- 開放廊下に接続する。
- 避難階の直上又は直下のみに通じる階段とする。(ただし書き一号)
- 3階かつ200㎡以内の住戸とする。(ただし書き二号)
- 便所とする。(部分的な免除)