防火規定

防火区画の扉の種類~防火設備や特定防火設備、常閉と随閉の構造方法、遮煙などについて解説~

にゃんぴー

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防火区画の扉の種類
悩む女性

防火区画の扉って防火設備とか特定防火設備とか常閉とか随閉とか遮煙とかいろいろあってよくわからない。

どの区画にどの性能の防火設備を設置すればよいかポイントを押さえればそれほど難しくありません。

常時閉鎖式、随時閉鎖式、遮煙性能付きなど表に分かりやすくまとめて解説します。

もぐら先生
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まずは令112条第19項をチェック

法文を見てみよう

【建築基準法施行令第112条第19項】

第112条(防火区画)

19 第1項、第4項、第5項、第10 項又は前項の規定による区画に用いる特定防火設備、第7項、第10 項、第11 項又は第12 項本文の規定による区画に用いる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備、同項ただし書の規定による区画に用いる10 分間防火設備及び第13 項の規定による区画に用いる戸は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める構造のものとしなければならない。

 第1項本文第4項若しくは第5項の規定による区画に用いる特定防火設備又は第7項の規定による区画に用いる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備

  次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの

  常時閉鎖若しくは作動をした状態にあるか、又は随時閉鎖若しくは作動をできるものであること。

  閉鎖又は作動をするに際して、当該特定防火設備又は防火設備の周囲の人の安全を確保することができるものであること。

  居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の通行の用に供する部分に設けるものにあっては、閉鎖又は作動をした状態において避難上支障がないものであること。

  常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあっては、火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合のいずれかの場合に、自動的に閉鎖又は作動をするものであること。


 第1項第二号第10 項若しくは前項の規定による区画に用いる特定防火設備第10 項第11 項若しくは第12 項本文の規定による区画に用いる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備、同項ただし書の規定による区画に用いる10 分間防火設備又は第13 項の規定による区画に用いる戸

  次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの

  前号イからハまでに掲げる要件を満たしているものであること。

  避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有し、かつ、常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあっては、火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖又は作動をするものであること。

建築基準法法令集 2025年版(令和7年版)より抜粋

分かりやすくマーキングしました。

もぐら先生

防火区画の扉の種類は6種類

  • 一号扉の特定防火設備
  • 一号扉の防火設備
  • 二号扉の特定防火設備
  • 二号扉の防火設備
  • 二号扉の10分間防火設備
  • 二号扉の戸

※❺、❻は令和元年の法改正により追加されました。

 

一号扉、二号扉って何?

  • 一号扉 令112条19項一号のイ~二の要件を満たすもの(告示2563号)
  • 二号扉 令112条19項二号のイ、ロの要件を満たすもの(告示2564号)

二号扉は一号扉の要件に遮煙性能がプラスされたものです。

 

防火設備の分類

防火設備の種類性能告示認定
特定防火設備1時間の遮炎性能第1369号EA-〇〇〇〇
防火設備20分間の遮炎性能第1360号EB-〇〇〇〇
10分間防火設備10分間の遮炎性能第198号
障子、ふすまなどでないもの

分かりにくい表現をかみ砕くと

法文中分かりにくい表現が多いのでかみ砕くと以下の通りです。

  • 常時閉鎖・・・人が通行するときだけ開き、手を離すとドアクローザーなどにより自動的に閉まる防火戸のこと
  • 随時閉鎖・・・普段は開いていて火災時に感知器の信号を受信し、自動的に閉まる防火戸のこと
  • 作動をした状態、作動をできるもの・・・ドレンチャーのこと
  • 火災により煙が発生した場合・・・煙感知器による随時閉鎖
  • 温度が急激に上昇した場合・・・熱感知器による随時閉鎖

 

面積区画、高層区画、竪穴区画、異種用途区画の防火戸等の性能

防火区画の種類によって防火戸等に求められる性能は下記の通りです。

扉の種類防火区画の種類
一号扉の特定防火設備1項 面積区画(1500㎡)
4項 面積区画(500㎡)
5項 面積区画(1000㎡)
8、9、10項 高層区画(100㎡を超える区画とする場合)
一号扉の防火設備7、10項 高層区画(100㎡以内の区画とする場合)
二号扉の特定防火設備1項二号 面積区画(階段で免除される部分との区画)
18項 異種用途区画
二号扉の防火設備11項 竪穴区画
12項 竪穴区画(小規模な病院、診療所、児童福祉施設等でスプリンクラーなし)
二号扉の10分間防火設備12項 竪穴区画(小規模な病院、診療所、児童福祉施設等でスプリンクラーあり)
二号扉の戸13項 竪穴区画(小規模なホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎)

※12項、13項は令和元年の法改正により追加されました。

告示2563号の解説

告示2563号に適合する要件は以下の通りです。

常時閉鎖式の構造

  • 扉の面積は3㎡以内である事
  • 直接手で開く事ができ、自動的に閉鎖するもの
  • EV扉の場合、人の出入り後20秒以内に閉鎖するもの
  • 扉の閉鎖速度は一定以下である事
  • 扉の重量は15㎏以下である事

随時閉鎖式の構造

  • 扉の閉鎖速度は一定以下である事
  • 扉の重量は15㎏以下である事
  • 避難経路上にある場合は子扉を設ける事
  • 子扉は直接手で開く事ができ、自動的に閉鎖するもので幅75cm以上、高さ1.8m以上、床面からの高さ15cm以下
  • 一定の性能の感知器を設ける事

感知器の性能については告示2563号に細かく規定されていますのでご確認ください。

ざっくりと箇条書きにしたものなので詳細の内容については告示をご覧ください。

おすすめ法令集はこちらの記事をご覧ください。

告示2564号の解説

告示2564号に適合する要件は以下の通りです。

  • 告示2563号に適合している事
  • 防火戸の枠が相じゃくり、定規縁、戸当りなどにより隙間を生じない構造である事
  • 幅が5m以内(防火戸併設は8m以内)のシャッターにあっては遮煙性能試験に合格したもの(CAS認定)

相じゃくり、定規縁、戸当りとは?

告示2564号は告示2563号の基準+遮煙性能です。

防火区画以外で令112条第19項の防火戸等が準用されるもの

一号扉、二号扉などの防火戸の性能を準用される条文が他にもあります。

扉の種類準用される条文
一号扉の特定防火設備第115条の2 1項六号(卸売市場の上家などの防火壁免除に関する火気使用室との区画)
令129条の13の2 1項三号(非常用昇降機設置免除の100㎡区画) 
一号扉の防火設備
二号扉の特定防火設備令128条の3 3項(地下街の各構えの区画)
令145条 (道路内の建築制限)
二号扉の防火設備令121条 4項 (2直免除の特定階との区画)
令123条 1項六号 (屋内避難階段の出入口)
令123条 2項二号 (屋外避難階段の出入口)
令126条の2 2項一号 (既存建物の排煙の規定を不遡及とするための区画)
令128条の5 4項 (内装制限緩和の区画)
令128条の6 1項 (区画避難検証法の区画)

防火区画の扉の種類についてのケーススタディ

面積区画に必要な扉の性能は?

面積区画の扉は一号扉の特定防火設備でしたね。

つまり、常時閉鎖式又は随時閉鎖式(告示2563号)の特定防火設備(告示1369号)の防火戸で区画が必要です。

もぐら先生

竪穴区画に必要な扉の性能は?

竪穴区画の扉は二号扉の防火設備でしたね。

つまり、常時閉鎖式又は随時閉鎖式で遮煙性能付き(告示2564号)の防火設備(告示1360号)の防火戸で区画が必要です。

もぐら先生

面積区画と竪穴区画を兼ねる扉の性能は?

面積区画の扉は一号扉の特定防火設備、竪穴区画の扉は二号扉の防火設備なので性能の高い方を優先します。

常時閉鎖式又は随時閉鎖式で遮煙性能付き(告示2564号)の特定防火設備(告示1369号)の防火戸で区画が必要です。

もぐら先生

防火区画の扉の種類についての法改正遍歴、既存不適格について

防火区画の扉の種類の規定(令112条19項)が施行されたのは昭和44年5月1日です。

その後、昭和46年、昭和49年、平成12年、平成13年、平成17年、令和元年に改正があり、現行の法文になっています。

重要な部分だけピックアップして紹介します。

昭和49年1月1日施行

竪穴区画、異種用途区画等の防火戸に遮煙性能が必要となりました。

また、この改正に合わせ告示2563号、2564号が施行されました。

平成12年6月1日施行

甲種防火戸→特定防火設備、乙種防火戸→防火設備に変わりました。

令和元年6月25日施行

12項、13項の新設により10分間防火設備、戸が追加されました。

既存不適格について

昭和44年5月1日以前の建築物は防火区画の扉の性能を満たしていない可能性があります。

また、昭和49年1月1日以前の建築物は竪穴区画、異種用途区画の部分に遮煙性能を有していない可能性があります。

いずれも既存不適格となりますが、増築などを行う際には遡及する可能性がありますのでご注意下さい。

法改正遍歴、既存不適格を調べるには令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシートが非常に役立ちます。

まとめ

  • 防火区画の防火戸等の種類は6種類
    • 一号扉の特定防火設備
    • 一号扉の防火設備
    • 二号扉の特定防火設備
    • 二号扉の防火設備
    • 二号扉の10分間防火設備
    • 二号扉の戸
  • 一号扉、二号扉とは
    • 一号扉は告示2563号
    • 二号扉は告示2564号(一号扉+遮煙性能)
  • 防火区画の種類によって防火戸の性能が定められている
  • 他の条文で準用されるものもある
  • 昭和44年5月1日以前の建築物は既存不適格の可能性が高い

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