スパンドレルとは?
スパンドレルとは、防火区画と外壁が接する部分について火炎の回り込みを防ぐための規定です。
スパンドレルという言葉は建築基準法の中には記載されておらず、通称です。
金属系の外壁材やカーテンウォールなどもスパンドレルと呼ばれていますが、それとは違います。
防火区画の折り返し壁を示します。
今回の記事ではスパンドレルの基本的な考え方から適用の範囲、法改正遍歴など法文を見ながら解説していきます。
令112条の法文をチェック
建築基準法施行令より引用法文を見てみよう
建築基準法施行令
(防火区画)
第112 条 1~15 略16 第1項若しくは第4項から第6項までの規定による1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁(第4項に規定する防火上主要な間仕切壁を除く。)若しくは特定防火設備、第7項の規定による耐火構造の床若しくは壁若しくは法第2条第九号の二ロに規定する防火設備又は第11 項の規定による準耐火構造の床若しくは壁若しくは同号ロに規定する防火設備に接する外壁については、当該外壁のうちこれらに接する部分を含み幅90cm 以上の部分を準耐火構造としなければならない。ただし、外壁面から50cm 以上突出した準耐火構造のひさし、床、袖壁その他これらに類するもので防火上有効に遮られている場合においては、この限りでない。
17 前項の規定によって準耐火構造としなければならない部分に開口部がある場合においては、その開口部に法第2条第九号の二ロに規定する防火設備を設けなければならない。
18~21 略
スパンドレルに関する規定を抜粋し分かりやすくマーキングしました。
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スパンドレルの基本的な考え方
スパンドレルの基本
防火区画を形成する上で、防火区画と外壁が接する部分は、火災の回り込みによって防火区画の弱点となる可能性があります。
そのため、火災が隣の防火区画に回り込むことを防止するために、スパンドレルが設置されます。
スパンドレルには3つの種類があります。
90cmの折り返し壁、50cm突出したそで壁・庇、どちらも設けられない場合には当該部分を防火設備とします。
また、平面的だけではなく断面的(上下階)にも必要となります。
90cmの折り返し壁
90cmの折り返し壁を設置する方法です。
90cmの範囲は防火区画の壁、床から中心振り分けで45cm、45cmでも良いし0cm、90cmでも構いません。
防火区画の壁、床に接続されていて合計で90cm以上確保されていればOKです。
50cmの突出壁
50cm以上突出した袖壁、庇・床などを設置する方法です。
どちらも設けられない場合は防火設備とする
90cmの折り返し壁、50cmの突出壁などが設けられない場合には90cmの範囲内にある開口部を防火設備とする事でスパンドレルとなります。
スパンドレルの構造
スパンドレルの壁や床、庇の部分は準耐火構造(耐火建築物の場合は耐火構造)とします。
ダクトがスパンドレル部を貫通する場合にはFDが必要となりますのでご注意ください。
建築設備設計・施工上の運用指針2024年度 より引用
スパンドレルの必要な区画、不要な区画
スパンドレルが必要な防火区画
- 面積区画
- 高層区画
- 竪穴区画
スパンドレルが不要な防火区画
- 異種用途区画
防火区画の内、異種用途区画のみスパンドレルが不要とされています。
スパンドレルの規定はいつから?法改正遍歴
スパンドレルの規定が(令112条16、17項)の規定が施行されたのは昭和31年7月1日です。
その後、昭和34年、昭和39年、昭和44年、昭和46年、平成5年、平成12年、平成27年、令和元年、令和2年に改正があり、現行の法文になっています。
施行された昭和31年7月1日より現在まで内容はほとんど変わっていません。
法改正遍歴、既存不適格を調べるには令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシートが非常に役立ちます。
まとめ
- スパンドレルは、防火区画の外壁が接する部分について火炎の回り込みを防ぐために設置される。
- スパンドレルは、3つの種類がある。
- 90cm以上の折り返し壁
- 50cm以上の突出した袖壁、庇、床
- どちらも設けられない場合は開口部を防火設備とする
- スパンドレルの必要な防火区画は面積区画、高層区画、竪穴区画
- スパンドレルの不要な防火区画は異種用途区画
- スパンドレルの規定(令112条16項)が施行されたのは昭和31年7月1日
本記事の作成にあたり参考にした条文、書籍等
- 建築基準法施行令第112条(防火区画)
- 建築設備設計・施工上の運用指針 2024年版
- 令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシート