建築基準法の解説

道路斜線における『後退距離』(令130条の12)を解説

にゃんぴー

※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

今回の記事では゛道路斜線における『後退距離』(令130条の12)゛を解説します。

セットバックとも呼ばれます。

前面道路が狭い場合、建築物を道路から後退させ、その後退した距離の分が道路の外側にあるとみなし、道路斜線を検討します。

この後退距離の部分には何もない事が原則ですが、令130条の12に示す、物置やポーチ、門・塀、1.2m以下の建築物などは一定の条件のもとで設ける事ができます。

本記事では後退距離(令130条の12)の基本的な考え方から、これを適用するにあたり注意すべきポイントを図解を交えて解説していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

もぐら先生

まずは法文(令130条の12)をチェック

法文を見てみよう

建築基準法施行令

(前面道路との関係についての建築物の各部分の高さの制限に係る建築物の後退距離の算定の特例)

第130 条の12 法第56 条第2項及び第4項の政令で定める建築物の部分は、次に掲げるものとする。

 物置その他これに類する用途に供する建築物の部分で次に掲げる要件に該当するもの

  軒の高さが2.3 m以下で、かつ、床面積の合計が5㎡以内であること。

  当該部分の水平投影の前面道路に面する長さを敷地の前面道路に接する部分の水平投影の長さで除した数値が1/5以下であること。

  当該部分から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものが1m以上であること。

 ポーチその他これに類する建築物の部分で、前号ロ及びハに掲げる要件に該当し、かつ、高さが5m以下であるもの

 道路に沿って設けられる高さが2m以下の門又は塀(高さが1.2 mを超えるものにあっては、当該1.2 mを超える部分が網状その他これに類する形状であるものに限る。)

 隣地境界線に沿って設けられる門又は塀

 歩廊、渡り廊下その他これらに類する建築物の部分で、特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況を考慮して規則で定めたもの

 前各号に掲げるもののほか、建築物の部分で高さが1.2 m以下のもの

建築基準法法令集 2026年版(令和8年版)より抜粋

道路斜線における後退距離とは?

道路斜線は一般的に道路幅員に1.25又は1.5を乗じた勾配と建築物の高さと比較して検討を行います。

道路と建築物の間に一定の空地を設けた場合、その空地の分が道路の外側にあるものとみなして道路斜線を計算することができます。

その空地の部分を『後退距離』と言います。

後退距離の部分には建築物等がない事が原則ですが、特例として設けられるものが令130条の12に示されています。

後退距離の基本的な考え方

例えば、上図の様に1mの後退距離を確保した場合は、道路の外側に1m加えた部分を道路境界線とみなし、道路斜線を検討することが出来ます。

道路斜線の天空率についても同様に後退距離の緩和が適用可能です。

もぐら先生

後退距離内にあっても緩和できるもの(令130条の12)

後退距離の部分には何もない事が原則ですが、特例として令130条の12に示されているものは設置する事ができます。

令130条の12の具体的な内容は以下の通りです。

物置その他これに類するもの(1項一号)

物置その他これに類するものは以下の通りです。

対象となるもの

  • 物置
  • 自転車置場
  • 受水槽などの建築設備

条件(全てを満たす)

  • 軒高2.3m以下(道路中心からの高さ)
  • 床面積5㎡以下
  • 道路の間口の1/5以下
  • 道路境界線から1m以上後退
物置の後退距離
確認申請 面積・高さ算定ガイド より引用

ポーチその他これに類するもの(1項二号)

ポーチその他これに類するものは以下の通りです。

対象となるもの

  • ポーチ

条件(全てを満たす)

  • 高さ5m以下(道路中心からの高さ)
  • 道路の間口の1/5以下
  • 道路境界線から1m以上後退
ポーチの後退距離
確認申請 面積・高さ算定ガイド より引用

道路に沿って設けられる門、塀(1項三号)

道路に沿って設けられる2m以下の門、塀(1.2mより上部は網状のもの)については後退距離の範囲内に設置が可能です。

後退距離の緩和適用可能な塀

隣地境界線に沿って設けられる門、塀(1項四号)

隣地境界線沿いに設置される門、塀などについては高さ等に関係なく設置可能です。

道路に沿って設けた塀がある場合は1項三号の規定に準じます。

隣地境界線に沿って設けられる塀

歩廊、渡り廊下その他これらに類するもの(1項五号)

歩廊、渡り廊下などの部分で、特定行政庁が規則で定めたものについては後退距離の範囲内に設置が可能です。

設置にあたっては、規則に定める要件を満たしているかを事前に特定行政庁に確認する必要があります。

建築物の部分で高さが1.2 m以下のもの(1項六号)

1項一号~五号以外のもので、建築物の高さが1.2m以下の部分は後退距離の範囲内に設置が可能です。

ここからは実務における注意点を解説していきます。

もぐら先生

高さの起点は道路中心レベル

令130条の12における高さの起点は道路中心レベルからです。

地盤面(平均地盤面)からの高さではないので注意が必要です。

前面道路の勾配がある場合など特に注意が必要です。

道路に高低差がある場合の後退距離

後退距離は道路ごとに最小のものを採用

後退距離は、1の道路に対して、道路に面する部分ごとに算定し、そのうち最も小さい値を採用します。

2 面道路の場合は、それぞれの道路について独立して後退距離を算定し、各道路ごとに最小の後退距離を適用します。

なお、隅切り部分に関しては考慮する必要はありません。

道路ごとの後退距離の設定

行止まり道路での後退距離

1の道路に対して最小の後退距離を適用する事が原則ですので、行止まり道路の場合はその道路の接道部分で最小の後退距離を適用します。

1つ道路に複数の接道があっても、その中の最小の後退距離を適用します。

行止まり道路の後退距離

後退距離の長さは任意で設定可能

後退距離の適用の有無は任意で自由に設定することができます。

例えば、後退距離が1m確保されている場合も、後退距離を500㎜で設定しても良いですし、0㎜(後退距離を適用しない)で設定しても構いません。

道路斜線が後退距離を適用しなくてもクリアできる場合は、後退距離はなしにした方が合理的です。

工事途中で後退距離の範囲に令130条の12に適合しない塀など計画したいとなった時に計画変更が必要になる可能性が高まります。(天空率の再検討など)

道路と敷地に高低差がある場合

道路と敷地に高低差がある場合は、擁壁の部分を含めて令130条の12の検討を行います。

敷地が道路より1m以上高い場合、高低差から1m引いたものの1/2だけ高い位置にあるものとみなす事ができます。(令135条の2)

この令135条の2の緩和と令130条の12を併用して考えます。

下図の様に(H-1)÷2を加えた部分を道路中心レベルとみなし、残りの部分の擁壁を含み令130条の12の検討を行います。

高低差がある場合の後退距離
基準総則 集団規定の適用事例 より引用

まとめ

  • 道路と建築物の間に一定の空地を設けた場合、その空地の分が道路の外側にあるものとみなして道路斜線を計算することができる。
  • その空地の部分を『後退距離』と言う。
  • 後退距離の部分に特例として設けられるものが令130条の12に示されている。
  • 令130条の12の具体的内容は以下の通り
    • 物置その他これに類するもの
    • ポーチその他これに類するもの
    • 道路に沿って設けられる門、塀
    • 隣地境界線に沿って設けられる門、塀
    • 歩廊、渡り廊下その他これらに類するもの
    • 建築物の部分で高さが1.2 m以下のもの
  • 令130条の12における高さの起点は道路中心レベルからとなる。(地盤面からでは無いので注意)
  • 2 面道路の場合は、それぞれの道路に対して後退距離を算定し、各道路ごとに最小の後退距離を適用する。
  • 行止まり道路の場合は、1の道路なので複数の接道があっても、その中の最小の後退距離を適用する。
  • 後退距離の適用は任意で設定できる。(のちのち計画変更が生じにくい計画が望ましい)
  • 道路と敷地に高低差がある場合は令135条の2と令130条の12を複合して検討する。

本記事の作成にあたり参考にした条文、書籍等

-建築基準法の解説