延焼防止建築物、準延焼防止建築物って何?
聞いた事はあるけどなんだかよくわからない
難しそうだから使わなくていーか
確かに難しいですね
完全に理解している方は少ないでしょう
でもポイントを抑えれば理解できます
適用する事によるメリット(竪穴区画が不要に)などもお知らせしますので是非最後までご覧ください。
延焼防止建築物、準延焼防止建築物って何?違いは?
延焼防止建築物、準延焼防止建築物とは何か?
まずはこちらの表をご覧ください。
防火地域と準防火地域に建築する場合の耐火要求の表です。
防火地域 | 準防火地域 | ||||
階数 | 100㎡以下 | 100㎡超 | 500㎡以下 | 500㎡~1500㎡ | 1500㎡超 |
3 | 耐火建築物 又は 延焼防止建築物 | ||||
2 | 準耐火建築物 又は 準延焼防止建築物 | 耐火建築物 又は 延焼防止建築物 | 防火構造等 | 準耐火建築物 又は 準延焼防止建築物 | |
1 |
こちらの表から
ポイント
- 延焼防止建築物 は 耐火建築物 と同等
- 準延焼防止建築物 は 準耐火建築物 と同等
という事が分かります。
それでは
耐火建築物と延焼防止建築物の違いとは?
ポイント
- 耐火建築物は主要構造部が耐火構造
- 延焼防止建築物は主要構造部が準耐火構造で性能を高めたもの
準耐火建築物と準延焼防止建築物の違いとは?
ポイント
- 準耐火建築物は主要構造部が準耐火構造(イ準耐の場合)
- 準延焼防止建築物は主要構造部が防火構造で性能を高めたもの
ここが非常に重要なポイントで、ここにメリットが隠れています
重要ポイント
- 延焼防止建築物は主要構造部が準耐火構造なので燃えしろ設計とする事ができ、木造のあらわしとする事ができます。
- 準延焼防止建築物は主要構造部が防火構造なので竪穴区画がかかりません。(全てではない)
これが最大のメリットです
木材のあらわしや竪穴区画の免除により設計の自由度が広がりますね
延焼防止建築物、準延焼防止建築物の法文
耐火種別 | 技術的基準 | 構造方法 |
---|---|---|
耐火建築物 | 令136条の2第1項第一号イ | 告示第194号第1 |
延焼防止建築物 | 令136条の2第1項第一号ロ | 告示第194号第2 |
準耐火建築物 | 令136条の2第1項第二号イ | 告示第194号第3 |
準延焼防止建築物 | 令136条の2第1項第二号ロ | 告示第194号第4 |
延焼防止建築物、準延焼防止建築物の概要をご理解いただけましたか?
ここからは準延焼防止建築物に絞って解説していきます。
まずは準延焼防止建築物の法文をチェック
【建築基準法施行令第136条の2】
法文を見てみよう
【建築基準法施行令第136条の2】
(防火地域又は準防火地域内の建築物の壁、柱、床その他の部分及び防火設備の性能に関する技術的基準)
第136 条の2 法第61 条第1項の政令で定める技術的基準は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 防火地域内にある建築物で階数が3以上のもの若しくは延べ面積が100㎡を超えるもの又は準防火地域内にある建築物で地階を除く階数が4以上のもの若しくは延べ面積が1500㎡を超えるもの
次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 特定主要構造部が第107条各号又は第108条の4第1項第一号イ及びロに掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備(外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設ける防火設備をいう。以下この条において同じ。)が第109条の2に規定する基準に適合するものであること。ただし、準防火地域内にある建築物で法第86条の4各号のいずれかに該当するものの外壁開口部設備については、この限りでない。 →耐火建築物
ロ 当該建築物の特定主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間(建築物が通常の火災による周囲への延焼を防止することができる時間をいう。以下この条において同じ。)が、当該建築物の特定主要構造部及び外壁開口部設備がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該特定主要構造部及び外壁開口部設備の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。 →延焼防止建築物
二 防火地域内にある建築物のうち階数が2以下で延べ面積が100㎡以下のもの又は準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が3で延べ面積が1,500㎡以下のもの若しくは地階を除く階数が2以下で延べ面積が500㎡を超え1,500㎡以下のもの
次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部が第107条の2各号又は第109条の3第一号若しくは第二号に掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備が前号イに掲げる基準(外壁開口部設備に係る部分に限る。)に適合するものであること。 →準耐火建築物
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の主要構造部等がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該主要構造部及び外壁開口部設備の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。 →準延焼防止建築物
三~ 略
建築基準法法令集 2025年版(令和7年版)より抜粋
準延焼防止建築物の技術的基準は令136条の2第1項第二号ロに、構造方法は告示第194号第4に記載されています。
告示194号は非常に長いのでお手持ちの法令集をご確認下さい。
令和元年6月21日に本告示が施行されていますので令和2年版以降の法令集でご確認下さい。
法令集を購入の際は是非こちらの記事を参考にして下さい。
告示第194号第4の解説
告示第194号第4について表にまとめると以下の通りです。
告示194号第4 | 一 | 二 | 三 | 四 | ||
地域 | 準防火地域 | 防火地域 | 防火・準防火地域 | 防火地域 | 準防火地域 | |
規模 | 3階建て、床面積が500㎡以下 | 平屋建ての附属建築物で50㎡以下 | 卸売市場の上家、機械製作工場 | 階数2以下100㎡以下 | 階数3以下500㎡~1500㎡ | |
主 要 構 造 部 | 外壁 | 準耐火構造又は屋内側に一定の防火被覆をした防火構造 | 防火構造 | 不燃材料 | 耐火性能検証法 | |
軒裏 | 防火構造 | 防火構造 | 不燃材料 | |||
柱、梁 | 準耐火構造又は一定の防火被覆をした壁、床、天井内のものを除き、小計12cm以上 | - | 不燃材料 | |||
床 | 準不燃材料(3階床は準耐火構造)または床裏に一定の防火被覆 | - | 不燃材料 | |||
屋根直下の天井 | 一定の防火被覆 | - | 不燃材料 | |||
外 壁 の 開 口 部 | 面積 | 隣地境界線等から水平距離5m以下にあるものは、当該水平距離に応じて定められた開口部面積 | 片面20分の防火設備 | 延焼ライン内は両面20分の防火設備 | ||
構造 | 片面20分の防火設備。隣地境界線等から水平距離1m以内にあるものはFIX、常時閉鎖、随時閉鎖の防火設備 | |||||
その他 | 3階の室部分とそれ以外の部分とを間仕切壁、ドアなどで区画 |
告示194号第4には上表の通り一~四号の4種類あります。
- 3階建て、床面積が500㎡以下
- 平屋建ての附属建築物で50㎡以下
- 卸売市場の上家、機械製作工場など
- 上記以外
一~四号の4種類でそれぞれ主要構造部、外壁の開口部について規定が定められています。
一戸建ての住宅などによく適用される第一号の規定について着目して下さい。
準延焼防止建築物は竪穴区画が免除される理由
準延焼防止建築物は実は一部竪穴区画を免除する事ができます。
でも令112条第11項本文に「第136 条の2第二号ロに掲げる基準に適合する建築物」は竪穴区画がかかるって書いてあるし・・・
そうですね。
だから「一部」免除できると言ったのです。
一部と言っても実はほとんどが免除できます。
逆に一部かかる部分もあると言った方が良いかもしれません。
竪穴区画が免除される理由を知るにはまず法文をさかのぼる必要があります。
旧法文を見てみよう
令和元年6月25日以前の建築基準法第62条
(準防火地域の建築物)
第62条 準防火地域内においては、地階を除く階数が4以上である建築物又は延べ面積が1500㎡を超える建築物は耐火建築物とし、延べ面積が500㎡を超え1500㎡以下の建築物は耐火建築物又は準耐火建築物とし、地階を除く階数が3である建築物は耐火建築物又は準耐火建築物又は外壁の開口部の構造及び面積、主要構造部の防火の措置その他の事項について防火上必要な政令で定める技術的基準に適合する建築物としなければならない。ただし、前条第二号に該当するものは、この限りでない。
令和元年6月25日以前の建築基準法施行令第136条の2
(地階を除く階数が3である建築物の技術的基準)
第136条の2 法第62条第1項の政令で定める技術的基準は、以下のとおりとする。
一~八 略
建築基準法施行令より引用
改正前は準防火地域内では地階を除く階数が3で500㎡以下のものは耐火建築物、準耐火建築物のほか、
『外壁の開口部の構造及び面積、主要構造部の防火の措置その他の事項について防火上必要な政令で定める技術に適合する建築物』
とする事が可能でした。
これは「開口部制限」や「開口部準耐」などと呼ばれており、技術的基準は旧令136条の2に示されていました。
開口部制限、開口部準耐とは?竪穴区画が不要?
開口部制限、開口部準耐は基本的に主要構造部が防火構造なので竪穴区画の規定はかかりません。
3階建て500㎡以下で竪穴区画を免除したい場合に適用されていました。
それと引き換えに、隣地境界線からの離れ距離などに応じて設けられる開口部の量が制限されるので比較的窓の少ない建物になる特徴があります。
この開口部制限、開口部準耐ですが、法改正後は告示194号第4「第一号」に移動しました。
ポイント
旧令136条の2(開口部制限、開口部準耐)= 告示194号第4第一号
上記が同じものならば当然、告示194号第4第一号も竪穴区画がかからないはずと思いますが、
令112条第11項の本文で令136条の2第二号ロ(準延焼防止建築物)は竪穴区画がかかると記載されています。
え?それって法改正により規制が強化されたって事?
いいえ、規制が強化されたわけではありません。
その事については法改正のQ&Aにより国土交通省からの回答が出ています。
建築基準法の一部を改正する法律(平成30 年法律第67 号)に係る質疑応答集(令和2年7月15 日時点)
建築基準法の一部を改正する法律(平成30 年法律第67 号)に係る質疑応答集(令和2年7月15 日時点)より引用
ちなみにこのQ&Aが出された時は竪穴区画の規定は令112条10項でした。
(現在は11項)
告示194号第4には一~四号の4種類あると言いましたが、
- 3階建て、床面積が500㎡以下
- 平屋建ての附属建築物で50㎡以下
- 卸売市場の上家、機械製作工場など
- 上記以外
の内、❶は上記の通りで竪穴区画が不要、❷、❸は平屋なのでそもそも竪穴区画がかからない、つまり❹だけが対象となる訳です。
でも最大のメリットである竪穴区画免除が出来ないのに❹の耐火性能検証法を利用しわざわざ準延焼防止建築物にするのでしょうか?
そう考えるとほとんどの準延焼防止建築物が竪穴区画不要となる訳です。
告示194号第4第一号は竪穴区画が不要な根拠となる書籍
告示194号第4第一号は竪穴区画が不要である事が建築物の防火避難規定の解説 2023に示されました。
P123には法規制によらず、任意で耐火建築物や延焼防止建築物、イ準耐や準延焼防止建築物にした場合においても原則、竪穴区画はかかりますよといった取り扱いを示しています。
そのQ&Aで本取り扱いは平成30年の改正(延焼防止建築物、準延焼防止建築物の新設)に伴う用語の整理として記載されたものであり、質疑応答集と同様に旧令136条の2(開口部制限、開口部準耐)を対象としたものではない。と明確化されました。
建築物の防火避難規定の解説 2023 P123、P194より引用
この取扱いは2023年版より掲載されましたので旧版には載っていません。最新版をご覧ください。
まとめ
- 耐火建築物=延焼防止建築物
- 準耐火建築物=準延焼防止建築物
- 延焼防止建築物は主要構造部が準耐火構造
- 準延焼防止建築物は主要構造部が防火構造
- 延焼防止建築物は燃えしろ設計が可能
- 準延焼防止建築物は竪穴区画が不要
- 告示194号第4は4種類ある
- 3階建て、床面積が500㎡以下
- 平屋建ての附属建築物で50㎡以下
- 卸売市場の上家、機械製作工場など
- 上記以外
- 準延焼防止建築物は結局ほとんど竪穴区画がかからない