近年、ZEH住宅の普及、促進などにより太陽光発電設備を設置する計画が増えてきています。
太陽光パネルを屋上や屋根に設置する際に建築基準法上どう扱えばよいか悩まれる方も多いと思います。
今回の記事では太陽光発電設備を設置した場合、その部分は高さに含まれるのか?確認申請は必要なのか?など
いろいろなケースをイラスト付きで解説します。
太陽光発電設の建築基準法上の高さの考え方
太陽光発電設備は高さに算入する?
太陽光発電設備は建築設備なので原則として建築物の高さに算入されます。
しかし、脱炭素社会の実現のため、建築基準法の高さ制限等が足かせとなり太陽光発電設備を設置できないといった事が無いよう、緩和として平成23年に『平成23年3月25日国住指第4936号 太陽光発電設備等に係る建築基準法の取扱いについて』が発出されました。
今後、ZEH、ZEBなどの促進により省エネ、創エネなどの普及が更に進んで行くものと思われます。
『平成23年3月25日国住指第4936号 太陽光発電設備等に係る建築基準法の取扱いについて』の内容を元に建築基準法上の太陽光発電設備の考え方について詳しく解説していきます。
太陽光発電設備の設置方法によって考え方が変わってきますので
まずは設置形式を見ていきましょう。
太陽光発電設備の設置方式
屋上に設置の場合の太陽光発電設備
太陽光パネルを屋上の陸屋根部分に設置するパターンです。
本技術的助言で高さ制限の緩和が受けられるのがこの形式です。
本記事ではこちらの設置方式について解説していきます。
屋根に設置の場合の太陽光発電設備
太陽光パネルを斜めの屋根に設置するパターンです。
屋根勾配に沿って設置される太陽光パネルは屋根と扱われます。
屋根と扱われるため、高さに算入されますし、主要構造部として屋根の性能を求められます。
2023年4月1日の法改正により第一種低層住居専用地域などで特定行政庁の許可を得たものは最高高さを超えて設置する事ができるようになりました。
こちらの記事もご覧ください。
地上に設置の場合の太陽光発電設備
太陽光パネルを直に地上に設置するパターンです。
土地に自立して設置された太陽光パネルに関しては以下の条件を満たしたものは工作物と取り扱われます。
- メンテナンスを除いて架台下の空間に人が立ち入らないもの
- 架台下の空間を居住、倉庫など屋内的用途に供しないもの
上記を満たしたものは建築物とはならないため建築基準法の適用対象外となります。
屋上に設置する太陽光発電設備の緩和とは?
屋上に設置される太陽光パネルのうち、階段室等『高さに算入しない屋上部分』との関係から一定の条件のものは高さの算定から除外されます。
高さに算入しない屋上部分とは?
高さに算入しない屋上部分とは?
階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分でその水平投影面積が建築面積の1/8以下であるものは高さに算入しない。
- 昇降機の乗降ロビー(通常の乗降に必要な規模程度のもの)
- 時計塔、教会の塔状部分
- 高架水槽(周囲の目隠し部分を含む)
- キュービクル等の電気設備機器(周囲の目隠し部分を含む)
- クーリングタワー、室外機等の空調設備機器(周囲の目隠し部分を含む)
太陽光発電設備は電気設備機器ですので本来、この中に含まれ1/8以下かどうかの判定を行います。
太陽光パネルを含んだ1/8以下の検討方法
階段室等だけで検討すると1/8以下、階段室等+太陽光パネルで検討すると1/8を超えてしまう場合、本来はh1の高さとなりますが、平成23年の技術的助言により、h2で良いと明確化されました。
これにより建築物の最高高さの算定において、太陽光パネルの設置が容易になりました。
また、こちらについても地上に設置する場合と同様、以下の条件を満たしたものが対象となります。
- メンテナンスを除いて架台下の空間に人が立ち入らないもの
- 架台下の空間を居住、倉庫など屋内的用途に供しないもの
最高高さの算定において緩和されるだけで、他の建築基準法関係規定には適合している必要があります。
日影規制、天空率、斜線制限などは太陽光パネルを高さに含めて検討を行いましょう。
その他の取扱い
太陽光発電設備をあとから設置する場合、確認申請は必要?
屋上に設置する場合
- メンテナンスを除いて架台下の空間に人が立ち入らないもの
- 架台下の空間を居住、倉庫など屋内的用途に供しないもの
の太陽光発電設備を屋上にあとから設置する場合は『増築』には当たらないため、確認申請の提出は不要です。
ただし、建築基準法関係規定に適合する必要はありますので、設置の際は設計者の責任において法適合の確認を行って下さい。
屋根に設置する場合
太陽光発電設備を屋根上ににあとから設置する場合は『大規模な修繕、大規模な模様替』には当たらないため、確認申請の提出は不要です。
こちらも建築基準法関係規定に適合する必要はありますので、設置の際は設計者の責任において法適合の確認を行って下さい。
地上に設置する場合
- メンテナンスを除いて架台下の空間に人が立ち入らないもの
- 架台下の空間を居住、倉庫など屋内的用途に供しないもの
の太陽光発電設備を地上にあとから設置する場合は、確認申請の提出は不要です。
こちらは確認申請の不要な工作物ですので、建築基準法の適用対象外となります。
太陽光発電設備等による建築物の重量化に伴う壁量計算の改正
太陽光発電設備、高気密の断熱材、トリプルガラスサッシ等の建物の重量化が進んでいる事から今までの重い屋根、軽い屋根の壁量計算が見直されます。
詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。
まとめ
- 平成23年の技術的助言により太陽光発電設備の高さの緩和が可能となった。
- 太陽光発電設備の設置方式は大きく3つに分かれる。
- 屋上に設置する場合
- 屋根に設置する場合
- 地上に設置する場合
- 屋上に設置する太陽光発電設備は本来、階段室等の1/8以下の検討に含まれる。
- 階段室等+太陽光発電設備で1/8を超えている場合、太陽光発電設備の上端が最高高さとなる。
- あとから太陽光発電設備を設置する場合は原則として確認申請は不要である。
- 太陽光発電設備等の建物重量化により壁量計算の改正が行われる。