避難階段の中で一番よく使われるのが屋外避難階段です。
よく使われるのは色々なメリットがあるからです。
一方、設置に際して気を付けるべき点もたくさんあります。
本記事ではメリット、注意点などを徹底解説します。
まずは令123条をチェック
法文を見てみよう
【建築基準法施行令第123条】
(避難階段及び特別避難階段の構造)
第123 条 屋内に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一~五 略
六 階段に通ずる出入口には、法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で第112 条第19 項第二号に規定する構造であるものを設けること。この場合において、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖する戸又は戸の部分は、避難の方向に開くことができるものとすること。
七 略2 屋外に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 階段は、その階段に通ずる出入口以外の開口部(開口面積が各々1㎡以内で、法第2条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)から2m以上の距離に設けること。
二 屋内から階段に通ずる出入口には、前項第六号の防火設備を設けること。
三 階段は、耐火構造とし、地上まで直通すること。
3 特別避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一~十二 略
建築基準法施行令より引用
分かりやすくマーキングしました。
屋外避難階段の概要と特徴
建築基準法で規定される避難に使用される階段は4種類あります。
- 直通階段(令第120条)
- 屋内直通階段
- 屋外直通階段
- 屋内避難階段(令第123条第1項)
- 屋外避難階段(令第123条第2項)
- 特別避難階段(令第123条第3項)
今回の記事では屋外避難階段について詳しく解説します。
屋外避難階段+避難上有効なバルコニーのセット
街中で妙に屋外階段が設置されている建物が多いなと思ったことありませんか?
屋外避難階段が多く設置されている理由は下記の理由からです。
令121条第1項六号イにより6階以上の階に居室を有する建築物は2以上の直通階段を設置する必要があります。
その2以上の直通階段の設置免除には下記の3つの条件が必要となります。
- 屋外避難階段 or 特別避難階段 を設置
- 避難上有効なバルコニーを設置
- 6階以上の居室の床面積が200㎡以下
200㎡以下の建築物にわざわざ特別避難階段を設置することは少ないです。
200㎡以下の建築物に2つの直通階段を設置するのも面積を圧迫してしまいます。
そのため、6階以上の建築物はほとんどの場合、屋外避難階段+避難上有効なバルコニーのセットとなる訳です。
避難器具減免のため
もう一つ屋外避難階段が重宝されるケースがあります。
令121条第1項四号に該当する保育園などで、50㎡の倍読みで居室面積が100㎡を超える場合には2以上の直通階段を設置する必要があります。
2階建ての保育園など消防法により避難器具や避難すべり台を設置しなくてはなりません。
2つの階段のうち、1つを屋外避難階段にすることで避難器具や避難すべり台などを免除することができるのです。
屋外避難階段の構造(2m範囲など)
屋外避難階段の構造
屋外避難階段の構造は以下の通りです。
- 耐火構造とする事
- 地上まで直通する事
- 下記以外の開口部は2m範囲内に設けない事
- 階段に通ずる出入口
- 1㎡以内のFIX
- 階段に通ずる出入口の扉は以下の構造とする事
- 常時閉鎖式の遮煙性能付きの防火設備
- 避難方向に開く
屋外避難階段の2m範囲について
火災時に開口部や換気口などからの延焼が屋外避難階段にかからずに安全に避難できるための規定です。
本来の考え方でいうと各開口部から2m以上離れていて屋外避難階段に火が到達しないという趣旨ですが、各開口部1つ1つから2m以上あるか?という検討は大変なので、逆説的に屋外避難階段から2mの範囲内に開口部を設けないという表現になっています。
確認申請時には下のイラストの右側のように階段の周りに2mの開口部不可ラインを明示すると分かりやすく、漏れもありません。
エレベーターの扉は設置可能
原則として建築基準法上は『階段に通ずる出入口』と『1㎡以内のFIX』以外の開口部は2mの範囲に設けることができません。
建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)に取扱いが出ていますが、十分に開放された開放廊下に面するエレベーターの扉は階段の出入口と同等であると解釈し屋外避難階段の2m範囲内に設置することが可能です。
エレベーターの扉は竪穴区画を兼用することが多いと思います。
屋外廊下に接続されているので遮煙性能は不要ですが、防火設備とする必要はありますのでご注意ください。
建築物の防火避難規定の解説2016 P56 より引用
屋外避難階段についてのケーススタディ
2mの離隔距離内に1㎡以内のFIX窓なら複数設けてもよい?
1㎡以内のFIX窓が耐火構造の壁で区切られている場合は別々の窓と取扱い、それぞれ1㎡以内となっていれば複数個設置することが可能です。
単に窓枠等で区切られているだけの場合は別々の窓とは取り扱えません。
建築物の防火避難規定の解説 2023に取扱いが出ています。
建築物の防火避難規定の解説2016 P58 より引用
屋外避難階段の階段の幅、出入口の幅は750でよい?
階段の幅は令23条に規定する寸法が必要です。
出入口の幅は建築基準法上定められていませんが階段幅と同程度の幅とする事が望ましいでしょう。
いずれの場合も屋外避難階段だから規定が厳しくなるという事はありません。
階段寸法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
屋外避難階段の敷地内通路は屋内経由とできるか?
屋外避難階段から道路等に至る敷地内通路は必ず屋外の通路(屋外に開放されたピロティも可)としなければなりません。
屋内経由とはできません。
敷地内通路についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
屋外避難階段をルーバーで囲ってもよい?
基本的には手すりの上部が1100以上空いている必要があります。
建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例の取扱いに『適当なすき間を設けて囲む簡易なパイプ等』というものがあります。
こちらの解釈で防犯上やむおえない十分開放された縦ルーバーであれば認められることが多いです。
申請先に事前にご確認ください。
建築確認のための基準総則集団規定の適用事例2022年度版 P88 より引用
屋外避難階段の規定はいつから?法改正遍歴
屋外避難階段の規定(令123条)が施行されたのは昭和25年11月23日です。
その後、昭和34年、昭和39年、昭和44年、昭和46年、昭和49年、平成12年、平成13年に改正があり、現行の法文になっています。
重要な部分だけピックアップして紹介します。
昭和49年1月1日施行
令第121条の改正により6階以上の階に居室を有する場合、屋外避難階段+避難上有効なバルコニーで2以上の直通階段を免除できるようになりました。
法改正遍歴、既存不適格を調べるには令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシートが非常に役立ちます。
まとめ
- 建築基準法上、避難に使われる階段は4種類ある。
- 6階建て以上だと屋外避難階段+避難上有効なバルコニーにより2以上の直通階段を免除する事が多い。
- 屋外避難階段の構造は以下の通り
- 耐火構造とする事
- 地上まで直通する事
- 階段に通ずる出入口、1㎡以内のFIX以外の開口部は2m範囲内に設けない事
- 扉は常時閉鎖式の遮煙性能付きの防火設備とし避難方向に開く事
- 十分開放されたエレベーターの扉は設置可能