用途変更の確認申請はどういう場合に必要?
新築の確認申請はやった事があるけど、用途変更は初めてという方が多くいます。
あまり馴染みのない用途変更。
どういう場合に確認申請が必要になるか分かりやすく解説します。
まずは法87条をチェック
法文を見てみよう
【建築基準法第87条】
(用途の変更に対するこの法律の準用)
第87 条 建築物の用途を変更して第6条第1項第一号の特殊建築物のいずれかとする場合(当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除く。)においては、同条(第3項、第5項及び第6項を除く。)、第6条の2(第3項を除く。)、第6条の4(第1項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第7条第1項並びに第18 条第1項から第4項まで及び第15 項から第20 項までの規定を準用する。この場合において、第7条第1項中「建築主事の検査(建築副主事の検査にあっては、大規模建築物以外の建築物に限る。第7条の3第1項において同じ。)を申請しなければならない」とあるのは、「建築主事等(当該用途の変更が大規模建築物に係るものである場合にあっては、建築主事)に届け出なければならない」と読み替えるものとする。
2~4 略
建築基準法法令集 2025年版(令和7年版)より抜粋
分かりやすくマーキングしました。
用途変更の確認申請が必要な条件とは?
用途変更の原則
法6条第1項第一号の特殊建築物(法別表第一)の用途に200㎡以上変更する場合に確認申請が必要です。
この場合、元々の用途が何であるかは関係ありません。
変更後の用途が別表第一の用途に変わる場合に確認申請が必要です。
類似の用途
ただし、類似の用途に変更する場合は確認申請が不要です。
この場合は元々の用途も関係します。
類似の用途とは(令137条の18)
- 劇場、映画館、演芸場
- 公会堂、集会場
- 診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設等 ★1
- ホテル、旅館
- 下宿、寄宿舎
- 博物館、美術館、図書館 ★1
- 体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場 ★2
- 百貨店、マーケット、その他の物品販売業を営む店舗
- キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー ★3
- 待合、料理店
- 映画スタジオ、テレビスタジオ
★1 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域にある場合は申請が必要。
★2 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、工業専用地域にある場合は申請が必要。
★3 準住居地域、近隣商業地域にある場合は申請が必要。
上のリストの同項内の変更(劇場から映画館へ変更するなど)は用途変更の確認申請が不要です。
用途地域によって確認申請が必要となる場合がありますので★印のある部分はご注意下さい。
確認申請が不要だからと言って建築基準法に適合しなくても良いという訳ではありません。
用途変更が必要な場合は特定行政庁又は確認検査機関が法適合を確認する
用途変更が不要な場合は設計者(建築士)が法適合を確認する
という違いだけです。
用途変更は完了検査がない?検査済証は?
用途変更には完了検査がありません。
そのため検査済証も交付されません。
工事が完了した時点で使用開始して良いのですが、工事が完了したら『工事完了届』を特定行政庁に提出する必要があります。
確認申請を確認検査機関に提出した場合も工事完了届の提出先は特定行政庁ですのでご注意下さい。
こんな失敗がありました
確認申請時に工事施工者を「未定」で申請して着工前に工事施工者届を提出するケースがよくあります。
工事施工者届の提出をうっかり忘れていてそのまま用途変更の工事が終わってしまい、工事完了届を提出しに行ったら工事施工者が未定のままなので受理してもらえなかったという方がいました。
工事完了届は必ず着工前に提出しましょう。
用途変更の場合は特に注意が必要です。
用途変更に関するケーススタディ
複数回の用途変更をする場合、合算で200㎡を超えた時点で確認申請が必要?
こちらは計画によって確認申請の要、不要の判断が分かれます。
300㎡の用途変更を実現しようと意図的に150㎡に分けて2回用途変更をするようなケースでは確認申請が必要です。
ショッピングモールの様なテナント毎の区分所有である建築物についてはそれぞれが200㎡以下であれば確認申請は不要と判断されるケースが多いです。
申請が必要かどうかは特定行政庁、確認検査機関に事前に確認しておきましょう。
法別表第一の同じ分類の用途は確認申請が不要?
法別表第一の同じ分類でも例えば寄宿舎から共同住宅へ変更する場合は確認申請が必要です。
法別表第一の分類と類似の用途の分類(令137条の18)とを勘違いしやすいのでご注意下さい。
幼稚園から幼保連携型認定こども園への変更は確認申請が必要?
幼稚園(学校等)から幼保連携型認定こども園(児童福祉施設等)への変更は確認申請が必要です。
似ていますが、保育所(児童福祉施設等)から幼保連携型認定こども園(児童福祉施設等)への変更は類似の用途ですので確認申請が不要です。
幼保連携型認定こども園について
平成27年の国土交通省発出の事務連絡により、幼保連携型認定こども園の建築基準法上の取扱いとして幼稚園(学校等)と保育所(児童福祉施設等)の両方の規定を満足する必要があります。
用途変更の法改正遍歴
用途変更の規定(法87条)が施行されたのは昭和25年11月23日です。
その後、昭和34年、昭和44年、昭和46年、昭和52年、昭和55年、平成5年、平成10年、平成11年、平成12年、平成13年、平成14年、平成15年、平成17年、平成19年、平成26年、平成27年、平成28年、平成30年、令和1年、令和2年、令和5年に改正があり、現行の法文になっています。
重要な部分だけピックアップして紹介します。
昭和52年11月1日施行
類似の用途の場合、確認申請が不要となりました。
令和元年6月25日施行
法6条第1項一号が100㎡から200㎡に変わった事で用途変更が必要となる変更部分の面積も200㎡に変わりました。
法改正遍歴、既存不適格を調べるには令和改訂版 建築確認申請条文改正経過スーパーチェックシートが非常に役立ちます。
まとめ
- 法別表第一に掲げる特殊建築物に200㎡以上変更する場合に確認申請が必要
- 類似の用途間の変更の場合は確認申請が不要
- 用途変更に完了検査は無いが工事完了届の提出が必要
- 令和元年より用途変更面積は100㎡から200㎡に変わった