法改正の概要
脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律
令和4年6月17日に公布された『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)』により3回に分けて段階的に法改正が行われます。
第1段階目は令和4年6月17日から1年以内に施行(令和5年4月1日に施行されました)
第2段階目は令和4年6月17日から2年以内に施行(令和6年4月1日に施行されました)
第3段階目は令和4年6月17日から3年以内に施行(令和7年4月1日に施行予定)
というスケジュールになります。
今回の記事は第2段階目の解説です。
地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律
令和5年6月16日に公布された『地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(第13次地方分権一括法案)』により公布から1年以内に法改正が行われます。
法改正により『建築副主事』が誕生しました。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2024年4月1日法改正対応の書籍紹介
建築申請memo2024
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発売日:2024年2月7日
2024年4月1日改正予定の内容を収録
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建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアル
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2024年4月1日改正予定の内容を収録
購入者限定で、電子書籍版の閲覧や法令・告示等の条文の確認ができる!
2年施行もの 木材利用の促進など
2024年(令和6年)4月1日に施行の予定です。
3000㎡超の大規模建築物の木造で大空間を設計可能に
【建築基準法第21条第2項】
まずはザックリ解説 | ||
法改正前 | ⇒ | 法改正後 |
3000㎡以上の木造建築物は壁、柱等を耐火構造とする、3000㎡以内に耐火構造で区画などが必要。 | 大断面のもえしろ設計や防火区画の強化により木材のあらわしによる設計が可能に。 |
法第21条第2項で3000㎡を超える木造建築物等は耐火構造とするか3000㎡以内に区画する必要があったが、本改正により柱や梁などをあらわしの大空間を木造で設計する事が可能となります。
具体的な構造方法などは今後、政令や告示で定められる予定。
大規模建築物における部分的に木造とする事が可能に
【建築基準法第2条第9号の2ほか】
まずはザックリ解説 | ||
法改正前 | ⇒ | 法改正後 |
耐火建築物の主要構造部は例外なく耐火構造とする必要がある。 | 防火上、避難上支障がない範囲内で部分的な木造でつくる事が可能に。 |
耐火建築物の主要構造部は基本的にすべての部分を耐火構造とする必要があります。
また、メゾネット住戸の階段なども耐火構造とする必要があります。
本来の耐火建築物としての目的である防火上及び避難上の性能を有していれば、屋上の部分的な屋根やメゾネット住戸内の階段などについては防火上及び避難上支障がない範囲で木造とすることが可能になります。
具体的な構造方法などは今後、政令や告示で定められる予定。
国土交通省 改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する説明動画 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について より引用
メゾネット住戸を木質調でつくれると設計の幅が広がりますね。
また、本改正により確認申請書の書式が変わります。
詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。
耐火建築物の一部を準耐火建築物とできる?防火規定を別棟扱い可能に
【建築基準法第21条、第27条、第61条】
まずはザックリ解説 | ||
法改正前 | ⇒ | 法改正後 |
一の建築物に対しては建築物全体に同一の耐火性能が求められる。 | 分棟的に区画された高層部・低層部をそれぞれ防火規定上の別棟として扱うことで、低層部分の木造化が可能となる。 |
基本的に耐火建築物は建物のすべての部分を耐火構造とする必要があります。
改正により分棟的に区画された高層棟、低層棟を防火規定上別棟として扱うことが可能になります。
それにより高層棟は耐火建築物、低層棟は準耐火建築物(木造でつくる事が可能)といった建築物を設計することも可能になります。
具体的な構造方法などは今後、政令や告示で定められる予定。
国土交通省 改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する説明動画 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について より引用
防火壁の設置範囲が緩和
【建築基準法第26条】
まずはザックリ解説 | ||
法改正前 | ⇒ | 法改正後 |
木造部分と耐火構造等の部分を一体で計画する場合、耐火構造等の部分にも1000㎡以内の防火壁の設置が必要。 | 防火壁で区画された耐火構造等の部分には防火壁の設置は不要。 |
木造部分と耐火構造、準耐火構造の部分が混在する場合に全ての範囲に1000㎡以内の防火壁の設置が必要となります。
改正により防火壁で区画された部分を別々に考え、耐火構造等の部分には1000㎡以内の防火壁を設置を不要とできます。
具体的な構造方法などは今後、政令や告示で定められる予定。
国土交通省 改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する説明動画 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について より引用
建築物の長寿命化、省エネ化を行う改修工事に対して遡及適用の緩和される
【建築基準法第86条の7、第87条】
まずはザックリ解説 | ||
法改正前 | ⇒ | 法改正後 |
増改築時等において原則現行基準適合が求められる。 | 建築物の長寿命化、省エネ化に伴う一定の改修工事に対しては遡及適用外に。 |
増築時には基本的に既存部分への遡及適用となり現行法規に適合する必要があります。
既存遡及がネックとなり建築物維持のための改修や省エネの改修の実施のさまたげとなっていることを鑑み、
脱炭素社会実現に向けて既存建築物の活用、省エネ性能の向上促進のため、一定の改修工事に対しては遡及適用外となります。
接道義務、道路内の建築制限の遡及の緩和
【建築基準法第86条の7】
まずはザックリ解説 | ||
法改正前 | ⇒ | 法改正後 |
大規模の修繕、大規模の模様替などの際は現行基準に適合する必要がある。 | 「市街地環境への影響が増大しないと認められる大規模の修繕・大規模の模様替を行う場合」は現行基準への適合を要しない。 |
接道義務や道路内の建築制限で既存不適格になっている建築物は大規模の修繕、大規模の模様替など改修工事を行うことができない。
また、屋根や外壁の省エネ改修なども行うことができない。
そこで周囲の環境に影響がなく安全性が確保されることを前提に接道義務、道路内の建築制限の遡及が緩和されます。
「市街地環境への影響が増大しないと認められる大規模の修繕・大規模の模様替を行う場合」は今後政令で規定される予定。
排煙告示1436号が改正
本改正により、排煙設備の設置を要しない部分として、新たに一定の規模・用途であって、警報設備等を設けた建築物の部分を告示1436号の第4号ロ、ハ、ニ及びへ(3)に位置付けられました。
告示1436号の改正の詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。
1年施行もの
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
3年施行もの(四号建築物の範囲が縮小)
2025年(令和7年)4月1日に改正予定の内容は、主に四号建築物の範囲が縮小です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。